資格で理想のライフスタイルを実現する、キャリ魂塾のキャリ魂太郎です。
このエントリーでは、「言葉」の捉え方とキャリアコンサルタントの適性を考察しています。
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ヤン・ウェンリーの名言
銀河英雄伝説と言えば、1500万部を誇る、大ベストセラー小説。
書籍だけでなく、映画、舞台、アニメ、宝塚、ゲームとメディアを超えて支持されています。
ちなみに、「となりのトトロ」のDVD、ブルーレイ、VHSまで全て合わせた売上本数ってどのくらいだと思いますか?
なんと
約330万本です。
単純計算で言えば、「となりのトトロ」の5倍売れているのが、銀河英雄伝説です。
また、一般的なビジネス書籍は、10万字前後と言われています。
この銀河英雄伝説は、なんと約212万字。
一般的なビジネス書籍で言えば、20冊以上になります。
しかし、そこらのビジネス書籍を20冊読んでも得られない知見が、この小説にはあるわけですね。
例えば、登場人物である、ヤン・ウェンリーの下記のようなセリフです。
ことばでは伝わらないものが、たしかにある。
だけど、それはことばを使いつくした人だけが言えることだ。
だから、ことばというやつは、心という海に浮かんだ氷山みたいなものじゃないかな。
海面から出ている部分はわずかだけど、それによって、海面下に存在する大きなものを知覚したり感じとったりすることができる。
ことばをだいじに使いなさい、ユリアン。
そうすれば、ただ沈黙しているより、多くのことをより正確に伝えられるのだからね。
出典:銀河英雄伝説 ©田中芳樹 らいとすたっふ
私は、このセリフが大好きなんですよね。
私たちは、まだまだ「ことば」を知らないし、もっと使えるはずだから。
「言葉」は複数の意味を持つ
Googleの翻訳がどこまで進化するのかはわかりませんが、例えば、
「僕は『よだか』にもなれやしない」
という言葉を聞いて、あなたはどう思いますか?
将来は分かりませんが、今のAIなら、こう言うでしょう。
「「よだか」は、30センチくらいの大きさの鳥です。
あなたは「ヒト」ですから、「トリ」である「よだか」になれないのは当然です。」
逆に言えば、「人間が鳥になれるわけないでしょ。」という反応なら、AIレベルの反応でしかありません。
相談者が心を開くことはないし、ラポールもできないでしょう。
だって、それならAIと変わらないから。
私たちは、AIではないし、AIにはできないことができるはず。
だから「よだか」という言葉に込められた意図を考えたり、聞いたりするわけです。
言葉という氷山の水面下にある感情を想像する
「よだか(よたか)」は、鳥の名前ですが、漢字で「夜鷹」という場合、路上で声をかける娼婦という意味もあります。
また、宮沢賢治は「よだかの星」という童話を遺しています。
少し引用してみますね。
よだかは、実にみにくい鳥です。
顔は、ところどころ、味噌みそをつけたようにまだらで、くちばしは、ひらたくて、耳までさけています。
足は、まるでよぼよぼで、一間いっけんとも歩けません。
ほかの鳥は、もう、よだかの顔を見ただけでも、いやになってしまうという工合ぐあいでした。
たとえば、ひばりも、あまり美しい鳥ではありませんが、よだかよりは、ずっと上だと思っていましたので、夕方など、よだかにあうと、さもさもいやそうに、しんねりと目をつぶりながら、首をそっ方ぽへ向けるのでした。もっとちいさなおしゃべりの鳥などは、いつでもよだかのまっこうから悪口をしました。
「ヘン。又また出て来たね。まあ、あのざまをごらん。ほんとうに、鳥の仲間のつらよごしだよ。」
「ね、まあ、あのくちのおおきいことさ。きっと、かえるの親類か何かなんだよ。」
いかがでしょうか。
もしかしたら、「夜鷹(性を売る)もできない」という意味なのかもしれません。
はたまた(童話の)『よだか』のように、外見的な悩みを持ったうえでの言葉かもしれません。
だけどそこで、「よだかってどういうことでしょうか」と尋ねても、本当の気持ちを答えてはくれないでしょう。
だって、本当の気持ちを言えるなら、最初から「僕は『よだか』にすらなれやしない」なんて言わないから。
「こころ」という海に浮かんだ氷山のような思いがあって、その思いのホンの一部が『よだか』というキーワードになって現れたわけです。
ヨルシカ「靴の花火」の歌詞を考える。
さて、私はDragon Ashを最後に、20年ほどCDを買っていないわけですが、私が約20年ぶりにCDを買おうかなと思っているのが、「ヨルシカ」です。
歌詞が、凄く私好みなんですね。
例えば、先ほどの「僕は~」という下りは、ヨルシカの「靴の花火」という曲からです。
僕の食べた物 全てがきっと生への対価だ
今更な僕はヨダカにさえもなれやしない朝焼けた色 空を舞って
何を願うかなんて愚問だ
大人になって忘れていた
君を映す目が邪魔だずっと下で花が鳴った
大きな火の花が鳴った
音だけでも泣いてしまう、だなんて憶うそんな夏を聞いた
ヨルシカ – 靴の花火
作詞作曲編曲:n-buna Vocal:suis
余談ですが、この「夏を聞いた」というフレーズなんかは、痺れますね。
夏に限らず、季節を感じることにはいろんな表現がありますが、「花火の音」で「夏を聞いた」という表現が凄く好きです。
また、「思う」、「想う」、はよく使いますが、「憶う」という言葉。
これは「追憶」という言葉にあるように、昔の記憶を懐かしむような、そして同時にもう取り戻せないという「一抹のさみしさ」を感じたりもします。
例えば、チャットカウンセリング(SNSカウンセリング)で、相談者が、「そんな風に昔を憶うんです」と返信してきたら…
「思う」、でも「想う」でもなく、「憶う」…もしかしたら、何か少し思い残したことがあるのかもしれません。
そんな風に相談者を理解することができれば、関係性はどう変わるでしょうか。
さて、先ほどの「ヨダカにさえもなれやしない」という言葉に戻ります。
これは、「よだかの星」を読むと少し理解できます。
よだかは、自分が鷹に殺されることを怯えている。なのにそんな自分は虫を食べている。
虫だって死ぬのは怖いだろう。なのに自分も虫を殺して生きている、虫を殺して食べなければ生きていけない。
そんな自分を嫌悪したんですね。
そして、そんな「よだか」にさえ今更なれない。
相談者のそういった気持ちを感じられれば、支援者の在り方もまた変わるのではないでしょうか。
文脈で理解する。
最近よく見聞きする言葉に、「文脈(コンテクスト)で理解する」という言葉があります。
しかし、確かにそうなんですよね。
「単語」や「切り取られた文章」では、相手の言わんとすることを理解することはできない。
相談者という存在、その背景、発した言葉を一つのゲシュタルトとして、相談者を理解しようと努めるのが、文脈(コンテクスト)による理解です。
(「ゲシュタルト」を勉強したら、こんな風に使えますね)
だから「結婚」「昇進」という言葉が出たら、一律に「おめでとうございます」と言ってはいけない、なんて指導は「コミュニケーション」を無視した、本当に本当に本当にナンセンスな指導です。
「文脈」、「全体」で理解するのだから、「結婚」や「昇進」という単語そのものに反応することは、そもそもあり得ません。
キャリアコンサルタントの「適性」
キャリアコンサルタントにもいろんなタイプの方がいます。
講師系、ファシリテーター、コーチ、カウンセラー…
対人援助をするなら、相手を理解することが必要です。
例えば、引きこもり、不登校の相談者が、ボソッと「僕は『よだか』にもなれやしない」とつぶやいた。
そのとき、あなたはどう考えるのか。
この「相談者に関心を寄せ」、「知ろう」とする姿勢がある。
それが、キャリアコンサルタント(カウンセラー)などの支援者として必要な「適性」ではないでしょうか。
もしかすると、「国語」の時間って、より深く相手を理解する、そんなコミュニケーションのためにあったのかもしれません。
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