Contents
エリクソニアンとロジャリアンの違い
キャリアコンサルタント業界の大多数を占めるのは、いわゆるロジャーズ派(ロジャリアン)ですが、キャリ魂太郎は、エリクソニアンを自認しています。
でも、どう違うのでしょうか。
エリクソニアンは、あなたが養成講習カリキュラムで学んだ「傾聴」とは全く異なり、いわゆる「受容」「共感」「自己一致」そして「非指示的」にこだわりません。
それは、創始者であるミルトン・エリクソンの理念が、「ユニークであること」だからです。
エリクソンは「理論化(マニュアル化)」はせず、こう言いました。
「人は皆、一人一人ユニークな存在です。したがって、心理療法はそのユニークさに合わせて、一人一人に仕立てられるべきであって、人間行動に関する仮説理論という「プロクルステスのベッド」に寝かせて、人を切ったり伸ばしたりしてはいけません」
エリクソニアンであるダン・ショートは、厳格で命令ばかりするタイプの父親に育てられたクライエントが、「座って話を聴くだけのセラピストに苛立った。彼には現状について何をしたらいいかいってくれるようなセラピストが必要だった」と述べています。
このように、クライエントの成育歴によっては、非指示的なアプローチが有効ではないケースもあります。
また、学生などの若年者がクライエントの場合、非指示的なかかわり方は、逆に「見捨てられた」「自分には叱られる価値もない」といったネガティブな反応を生むこともあります。
現実にロジャリアン的なアプローチが悲劇を生んだ「金属バット事件」も、専門家であれば一つの事例として知っておかなければいけません。
一つのアプローチにこだわることは、「支援者のやりたいこと」をしているだけであり、クライエントファーストではないんですね。
エリクソニアンは、「なんでもアリ」
クライエントが変容するなら「何でもアリ」。
そして、クライエントの個性(ユニークさ)に対して、支援者の個性(ユニークさ)で支援する。
時には「観察」から「リソース」を捉え、詰め将棋のようにクライエントのリソースを引き出していく。
例えば、「戦略的心理療法」にカテゴライズされる、エリクソニアンは、クライエントの応答の多くを先読みして行ったりします。
「解決志向アプローチ」による、20分のキャリアコンサルティング
エリクソニアンの「解決志向アプローチ」による、20分のキャリアコンサルティングをYouTubeにアップしました。
この20分は、ロールプレイではありますが、普段の私の面談に近い感じですね。
大抵このように、クライエントの話す時間の方が長くなっています。
特に8:00~から、クライエントの「リソース」を活用しての面談を展開し、私が話す時間がどんどん減っていっているのがご理解いただけると思います。
そして、なぜ私が「教え子」を出して、クライエントが考えることを求めたのか。
それは、面談の中でクライエントのリソースを把握し、それを戦略として活用しているからです。
では、どの時点でどんなリソースを把握したのでしょう。
4:00からの「人に教えて、分かった、良かったよなんて言ってもらうと嬉しかったし、ちょっとおせっかいな部分もあるんでしょうかね」です。
この言葉から、教えて人に役立つことが嬉しい、そしておせっかいという「クライエント自身の性格というリソース」を活用できれば「自分で考える(自律する)」と想定できます。
決して、「このクライエントが良くしゃべるタイプ」「言われたから考えている素直なクライエントだから」ではありません。
「クライエントのリソースを把握している」から、「自分自身で考えるように働きかけると、内省が進みだす」と判断できるんですね。
なぜ「うんうん」とうなずいて、少し問いかけるだけで、内省が進み、「気づき」が生じるのか。
試験対策なら鉄板ツールともいえる、「ジョブ・カード」すら口に出さないのはなぜか。
ロジャーズ派が大多数の、そして「●●『不足』」と「不足」に目を向けてしまいがちなキャリアコンサルタント業界では極めて少ない、エリクソニアンのアプローチをお楽しみ頂けましたら幸いです。
応答が「同意である」と想定して問いかけている例
もう一つ、例を挙げておきます。
先日の解決志向キャリアコンサルティング勉強会での、私の応答です。

契約期間満了による終了なので、失業保険を貰う予定です①

そうすると、通信にしろ通学にしろ、(精神保健福祉士資格に必要な)勉強に必要な時間は捻出できそうですか?

そうですね②
①で「失業保険を貰う予定」という言葉が出た段階で、「すぐに働く必要性がない、時間にある程度余裕ができる」という可能性が高いことが想定できます。
なので、私は同意が得られる可能性が高いと判断して「(精神保健福祉士資格取得に必要な)勉強に必要な時間は捻出できそうですか?」と問いかけています。
結果、想定どおり、②で「そうですね」と同意を頂くことができました。
このように、「クライエントの応答を想定した問いかけを行う」ことを、「詰め将棋」と表現したりします。
リソースを把握するために「聴く」
「聴く」ための「傾聴」ではなく、「リソース」を捉え、活用する。
「観察」のための「傾聴」と、リソースを活用する「応答」。
このセットがエリクソニアンの特徴です。