資格で理想のライフスタイルを実現する、キャリ魂塾のキャリ魂太郎です。


このエントリーでは、一部のカウンセラーがカウンセリングに際して、どのように「言葉」を捉え、使っているか、その一例をお伝えしています。

「忘れたいのに忘れられない」の変容を支援する

例えば、仕事のことでも、別れた恋人のことでも辛い思い出でも、何でもいいですが

「忘れたいのに、忘れられないんです」

このような言葉を、クライエントが口にしたら、あなたは、どう応答しますか?

当然、様々なアプローチがあります。

別に、オウム返しがダメとは言いません。

それも、「変容」を支援するコミュニケーション技法のひとつです。

しかし、「言葉」の専門家である、カウンセラーとして、クライエントの発した「言葉」を検討する。

そんなアプローチもあります。

「忘れたいのに、忘れられないんです」という言葉を分析する

「忘れたいのに、忘れられないんです」

この前段で述べられている「忘れたい」。

これは「願望」「欲求」を表す言葉です。

逆に後段で述べられている「忘れられない」。

こちらは、「れる・られる」で表現されていますので、「(不)可能」を表しています。

「~られない」となっているのは、これは人間の記憶の「作用」が自分の思い通り働かないことを表しています。

「作用」は、専門家っぽく言えば「機序」と言ってもいいかもしれません。

このように、「言葉」を分析することで、クライエントの話している意味が鮮明になってきます。

この例では

「忘れたいのに、忘れられないんです」

「私の忘れたいという願望・欲求の実現を阻んでいるのは、人間の記憶メカニズムです」

と言っているわけですね。

そしてこれは当然のことですので、このままでは変容を支援することは難しい。

幾ら強く望んでも、ヒトの脳、つまり記憶メカニズムは変わりません。

ATMの前で、札束よ出でよと念じても絶対に出てこないのと同じです。

なので、この「忘れたい」という「前段:願望」と「忘れられない」という「後段:機序」の組み合わせの「食い違い」を揃えます。

前段:願望/後段:願望

具体的にご説明しますね。

前段:願望/後段:願望

この構造にするとどんな表現になるでしょう。

こうなります。

「忘れたいのに」/「忘れたくないんですね」

例えば、このように「伝え返す」ことで何が変わるのか。

この伝え返しを行うことで、次のアプローチとして、「忘れたくない理由」を探すことができるようになります。

通常、記憶は操れませんので、「忘れられない」ことを「忘れる」のは困難です。

これが簡単にできれば、ヒトは傷つかないですよね。

こんなことはできないから、ヒトは悩み、傷つくんです。

しかし、「忘れたいのに」/「忘れたくないんですね」と伝え返すことで、「忘れたくない」のは自分の願望・欲求ですから、「なぜ忘れたくない」のかを「点検する」ことができます。

前段:義務/後段:機序

では2つ目のアプローチです。

「忘れたい」という「願望」を「忘れなきゃ」、つまり「義務」に変えて伝え返すと?

この場合は、以下のように「伝え返し」ます。

「忘れなきゃいけないのに」/「忘れられないんですね」

これが「願望」から「義務」=ルール(機序)に変えた「伝え返し」です。

これにより、

「忘れなければならないのに、忘れられない」

という意味に変わります。

そうすると、その後のアプローチを下記のように行うことができます。

なぜ「忘れなければならない」と考えているんでしょうか。

覚えているからこそ、「反省」できる。

そんなメリットもありますよね。

そうです。

このアプローチでは、自らの認知である「義務(ルール)」の問題点を検討することができます。

認知の問題点とは?

あなたもご存じ、「認知の歪み」です。

「忘れなければならない」、本当はそんな「義務」なんてないことに気づくことができれば、ラクになれるかもしれませんね。

オウム返しは、クライエントの言語感覚によって効果が変わる

実は、オウム返しでもクライエントにこういった内省を行って頂くことは可能です。

しかし、現実的には、これができる「クライエント」は多くはない。

それは、「クライエント自身の言語感覚」に負うところが大きいからです。

なので、この場合は面談の効果(=クライエントの内省が進むかどうか)が安定しません。

つまり、面談の品質が安定しないということになります。

その他、例えば、カウンセラーが話をさせたいことだけに焦点をあてると、ある問題から目を逸らさせることもできます。

例えば

「私は、本当は仕事は止めたくないのですが…どうしても結婚もしたいし…でもまだ前に付き合っていた人のことが忘れられません」

こういった「訴え」のうち、どれにフォーカスして面談を構成するかは、極論を言えば良くも悪くも「カウンセラーがコントロールすることができてしまう」わけです。

このように、カウンセラーが言葉の使い方や捉え方を知ることで、カウンセリングの品質は全く変わってきます。

「言葉の使い方」を面談に取り入れているキャリアコンサルタントはまだまだ少ない

キャリアコンサルタント業界で言えば、こういった「言葉の使い方」を考えている人は、おそらく1級キャリアコンサルティング技能士でもまだまだ少ないでしょう。

これは勉強しているとかしていないとか、そういうことを言っているのではありません。

そもそも、制度的にキャリアコンサルティング技能士は、こういった「心理職としての技能評価」を行っているものではなく、あくまで「キャリアコンサルティングのSV能力」を見ているからです。

逐語録を作って、カウンセラーの駆使する「言葉のチカラ」をパワーアップしよう

このような「言葉」のシステムを「言語的因果モデル」のことだろうか、と考える人もいるかもしれません。

リチャード・バンドラーやジョン・グリンダーのNLPの考え方に近いからです。

原因と結果をリンキングすることは、NLPでは基本的な技法のひとつとして学びますね。

逐語録を書くことで、こういった「言葉の使い方」を点検することもできます。

ぜひ、「逐語録」を作って、「言葉の使い方」を考えてみて下さいね。