キャリ魂太郎です。

このエントリーでは、キャリアコンサルティングにおいて、メモを取ることをおススメする根拠を述べています。

面接において「メモを取るな」という指導は明らかに間違いであるという根拠。

キャリアコンサルタント養成講座の中には、「(一切)メモを取るな」という指導をされる方がいるそうです。

これは、受験指導のためではありません。

養成講座は「受験指導をしてはいけない」からです。

なので、この「メモを取るな」という一部の養成講座の指導は、実務的な指導ということになるのですが、これは明らかに誤りと考えられます。

(メモばっかりで相手の顔を見ないという極論は当然論外ですよ)

その根拠を述べていきたいと思います。

キャリアコンサルティングの多くは、開発的モデルを想定している。

下記のエントリーにおいて、お伝えしたように、キャリアコンサルティングが想定している面接の多くは、「開発的モデル」であり、相談者の多くは「メンタル不全などがない」ことが想定されています。

wp.me

つまり、「寄り添い度」は「治療モデル」ほど求められていませんので、相談者の顔を観察し続ける必要性は高くありません。

メモによって正しく話を理解し、共有することができる。

メモを取ることによって、相談者の話が複雑な場合であっても、人間関係や事象を正確に捉えていくことができます。

また、相談者自身が自らの立ち位置などを正しく把握していない場合にも、ビジュアル化によって明確化していくことが容易になります。

メモを取ることは相手を尊重することである。

「メモの魔力」という書籍が話題です。

私も購入してみましたが、こちらでもメモの傾聴的効用が述べられています。

メモを取ることによって、こちらから特別な敬意を示せば、相手も自分に対して、特別な敬意を抱いてくれるようになる。
「あなたの話から、一つでも多くのことを吸収したい」という姿勢が可視化されて、より実りのある会話になっていきます。

出典:メモの魔力 ©前田裕二 幻冬舎

メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

新品価格
¥1,512から
(2019/3/30 08:03時点)

人は忘れる生き物である。

人は、20分後には会話の内容の70%を忘れると言われる生き物です。

なのにメモを(一切)取らないなど、根本的におかしな指導です。

メモを取ることは、言った言わないを防止する。

メモを取ることによって、「言った言わない」という相談者とのトラブルを未然に防止することが可能になります。

メモによって、相談者の自己理解が深まる

また、面談終了後にメモを渡すことによって、相談者も自分の話したことを見返すことができ、自己理解が深まります。

協議会はメモどころかワークシート型のキャリアコンサルティングを開発。

そして、キャリアコンサルティング協議会も、メモどころか「ワークシート型」のキャリアコンサルティング技法を開発しました。

(その前に、メモを取ってはいけないという指導が誤りであることを発信しなければ、混乱すると思いますが…
その点も協議会にしっかりと伝えておきましたが、どうもこのキャリアコンサルタント業界・制度は、いろいろなちぐはぐが多いと感じますね。)

その一例をご紹介しておきます。

出典:職場のあなた再現シート(職場における対応力チェック)

相談者にワークシートを書いて頂くということは、相談者が下を向くということですから、当然表情の確認はできなくなります。

そして、こういったワークシートは、独力で完成させることができる相談者だけではありませんから、キャリアコンサルタントの協力も必要となるのは当然ですよね。

つまり、キャリアコンサルタントもワークシートに目を向けることとなり、その間相談者を見ることができなくなります。

しかし、キャリアコンサルティングは、開発的モデルを重視していますので、それでも良いわけです。

非言語メッセージは、受け取り側の思い込みであることも多い。

よく、養成講座では「相手の一瞬の、微妙な表情の変化を見逃さない」ために、メモを取るなと言われることがあります。

例えば、面談中に相談者が顔をしかめたとしましょう。

あなたは、その非言語メッセージにによって、「この話はなにか相談者の心を不快にしたのではないか」と考えるかもしれません。

しかし、相談者はただ「唾を飲み込んだときに、ちょっとひっかかった」だけかもしれません。

つまり「非言語メッセージ」の解釈は受け手に委ねられている以上、その解釈が間違っていると考えることも重要なのです。

「あのとき、顔をしかめられましたので、この話で何かご不快な思いをされたのかと思ったのですが…」

「え?いやいや、確かあのとき、ほんのちょっと咽てしまっただけですよ」

となるかもしれませんよね。

これは大事なことなので繰り返しておきますね。

「非言語メッセージの解釈は、受け手に委ねられているからこそ、その解釈が間違っていることも考える必要がある」のです。

腕組みしたからって、あなたを拒否しているとは限りません。

寒いだけかもしれませんから。

メモを怖いと感じる人がいることは否定しない

もちろん、メモを書くという行為が、ときには「こんなに記録されるなんて怖い」とか、「警察が調書を作っているみたい」というようなイメージを与えることは否定しません。

なので、相手の顔を見ず、ひたすらメモを書くという極論は論外であることは、言うまでもありませんが、あえて念を押しておきます。

仮に、「メモを書くキャリアコンサルタントが怖い」と思われたのならば、それは多くの場合「その程度のラポールしか構築できていない」ことのほうが、重大な問題でしょう。

実務では、絶対にメモを取る方がメリットが大きいのです。

私はそれほど治療モデルを重視した養成講座で学んだわけではありませんので、そういう意味ではありがたかったと思います。

いままでの自分のコンサルティングスタイルをあまり否定されませんでしたから。

私は、面談ではマインドマップを作ることも多いのですが、これも相談者の方から非常に評判の良いツールです。

自らの相談内容がしっかりと把握できている相談者ばかりではありませんし、なにより、「話したことが形になる」というのは、想像以上に相談者満足につながります。

養成講座にも良いところはたくさんあります。

また、メモを取らないことが重要になる場面もあることを否定するものではありません。

しかし、エビデンスもなくそれこそ思い込みで、一律に「メモを取ってはいけない」という指導に凝り固まることこそ、私たちが忌むべき「準拠枠」であり、「メモを取ることのメリット」を受容できていないわけです。

「メモは取るな」と指導する一部の講師には、「無条件の肯定的配慮」はどこにいったの?と問いかけてみましょう。

受験メソッドと実務メソッドが融合!キャリ魂塾の面接試験対策講座はこちらからどうぞ