資格で理想のライフスタイルを実現する、キャリ魂塾のキャリ魂太郎です。
このエントリーは、週刊スピリッツ(小学館)連載中の『アフロ田中』シリーズから、職業適性ということ、クライエントへの支援をどのように行うかということを検討しています。
※作品画像の著作権は全て小学館及びのりつけ雅春氏が所有しており、引用の範囲内でご紹介させて頂くものです。
Contents
漫画家の適性、必要な能力とは?
私はナナコと言います。田中くんの彼女で週刊誌に連載漫画を持っている新人漫画家です。
俺は田中です。トレードマークはアフロヘアー。ナナコの彼氏です。今日はナナコの仕事場に顔を出しに来ました。
締め切りに追われてもう何日も寝不足です…
ナナコ…休んだ方が良いんじゃないのか…ちょっと手伝おうか…どれどれここを塗りつぶせばいいんだな。ペタペタ…
おい!!!!!!
(出典:「しあわせアフロ田中」©のりつけ雅春 小学館)
この「しあわせアフロ田中」第88話では、「漫画家」という職業について、どの職業紹介本よりもシビアな、そしておそらく作者自らが体験したであろう現実が述べられています。
いわゆる週刊誌や月刊誌に掲載されているマンガは、多くの場合、一人で作り上げるものではありません。
編集者と打ち合わせをし、複数のアシスタントを雇用し、そして期日までに仕上げる。
そのためには当然、編集者とのコミュニケーション能力や、アシスタントに給料を支払い、教育し、マネジメントを行うといった知識・スキルが必要になります。
ナナコは、漫画家になるという夢は叶えたものの、この「事業主(≒リーダー)」として、アシスタントを率いて週刊連載というノルマをこなしていく、といった現実を知らなかった。
そのため、アシスタントができないことは自分が抱え込み、結果、自らの首を絞めるような過重労働にハマってしまっているんですね。
職業適性検査は、本当にその職業を正しく表しているのか
ここで、1つ目の問題です。
VPIやキャリア・インサイトといった「職業興味」や「職業適性」アセスメントでは、漫画家を例えば「アーティスティック」に捉えすぎていないでしょうか。
あなたも、漫画家なら1人でもやっていける、芸術家肌で他人と折り合いが付きにくいタイプの人でもこなせる…
そんなイメージを持っていないでしょうか。
アシスタントという言葉なので、「助手」のように思われがちですが、漫画家のアシスタントは、助手であると同時に「ライバル」でもあります。
将来自分も漫画家として、連載を持ちたいと考えているアシスタントの方も少なくありません。
また、そういったビジョンがある人ほど、自分のスキルを高めてくれる師匠につきたい、良いコネを持っている師匠につきたいと思うことも当然あるでしょう。
人手不足の現在、徹夜などがある漫画家のアシスタントは敬遠されるかもしれません。
ナナコにはそういった知識やスキル、経験がなく、アシスタントへの求心力もない。
更には、アシスタントをマネジメントすることができなかったために、締め切りに追われ、慢性的な睡眠不足に陥ってしまっているんですね。
ただ単に、絵が上手で、面白い話を考える能力がある。
それだけでは、連載を持つ漫画家としては不十分なのです。
寄り添っても傾聴しても、止められない
2つ目の問題は、「傾聴」や「寄り添い」、そして「アドバイス」では、ナナコの過重労働は止められない、ということです。
自分の夢が叶いつつある。
なのに、今その夢の実現を阻んでいるのは「自らのスキルの足りなさ」であり、「努力不足」だからです。
つまり、「もっと頑張ることでこの苦境を改善できる」と「思い込んでいる」のですから、ナナコのやりたいことは「もっと頑張ること」です。
だから、漫画家をやめることや、巻頭カラーページを断ることは念頭にありません。
キャリアコンサルタント、カウンセラーとして、例えば「彼氏である田中くんから、ナナコさんのことを相談された」と考えたとき、どのようなアプローチが一番効果があるでしょうか。
ナナコを前に
「アシスタントにイライラするのは、自分の責任だと思われているんですね」
「能力が無いと思われているんですね」
「もっと面白いものを作らなきゃと思われているんですね」
あなたはこんな「オウム返し」ができますか?
できる?では、そのオウム返しはいったい何の役に立つんでしょうか。
私がナナコなら、時間のムダにしか思えません。
そして「身体をこわすくらいなら」「精神を病むくらいなら」そして「自殺するくらいなら」「辞めればいいのに」、こういった発言をされる方もいますが、これがいかに浅薄な考えか、ご理解頂けるかと思います。