「問題志向」と「解決志向」の違い

まず、「問題志向」と「解決志向」のアプローチ(≒支援スタイル)の違いについて、簡単にご説明します。

「問題志向」とは

キャリアコンサルタント養成講習で学ぶアプローチは、基本的に「問題志向」と呼ばれるアプローチです。

問題志向では、クライエントが抱えている「悩みや問題(の原因)」について、傾聴を行います。

この「問題(原因)に焦点を当てた」傾聴により、クライエント自身が内心を探求し、クライエント自らが変容していくことを目的としているんですね。

例えば、「学校(高校)に行きたくない」という悩みがあれば、カウンセラーは「行きたくない原因」についての内省が行えるように傾聴します。

これによって、クライエント自身がその「学校に行きたくない」原因と向き合い、乗り越えられるように支援するスタイルです。

問題志向のデメリット

しかし、問題志向にはデメリットもあります。

クライエントの抱えている「悩みや問題(の原因)」は、1つの原因とは限りませんし、また時間等の影響により変化していく性質があります。

なので、問題志向では、クライエント自身が複数の原因に対して、並行して自律した対応することが難しかったり、また変化への対応が遅れてしまうことも珍しくありません。

そして、原因に焦点を当てることで、自己効力感・自己肯定感が下がったり、負の感情が大きくなることも考えられます。

例えば上述の「学校に行きたくない」という悩みについて、その原因から考えてみます。

学校に行きたくなくなった原因
➡自分が好意を持っている同級生の名前を親友に打ち明けたら、その親友が気を利かせたつもりで、自分の気持ちを同級生に伝えてしまった。
しかも、同級生は自分に好意は無く、困るとの返事だった。
別に付き合いたいとかではなく、クラスメイトとして過ごせるだけで十分だったのに、それ以降距離を置かれてしまうし、クラスでも噂になって冷やかされたりして恥ずかしい思いをしたこと。

いかがでしょうか。

このような悩みを「問題(原因)志向」でアプローチすると、さまざまな「負の感情」が現れます。

・親友だと思っていたのに、裏切られた。
・親友を許せない
・クラスメイトとして話すだけで楽しかったのに、もう話してもらえない
・クラスの友達も、自分を冷やかすだけで、友達じゃなかった。

こういった、「負の感情」に触れることで、かえって「自己肯定感」「自己効力感」が下がったり、カウンセラーもその「負の感情」を受容するため、負の影響を受けたりします。

さらに「原因を話したくない」クライエントも多いため、問題志向でアプローチすると、一般的に時間がかかることが多くなってしまいます。

問題を取り巻く事象は時間と共に変化していくため、「元々の原因」は「親友の軽はずみな言動」であったにもかかわらず、登校できるようになった頃には「勉強についていけなくなっていた」という「新たな原因」によって、結局「学校に行きたくない」という問題が継続してしまうこともあります。

「解決志向」とは

解決志向は、問題ではなく、クライエントが今現在持っているリソース(資源や資質、能力、など)に注目するアプローチです。

同じ例を使って、私が解決志向でアプローチするなら、「学校に行きたくないんですね」「はい」「そんな辛いことがあったんだもんね…じゃあ、学校に行かなくて良い方法を一緒に考える?」

いかがでしょうか。

クライエントの気持ちに対して、「まず(本心は違うかもしれませんので、「まず」です)「受容」・「共感」しており、この時点で私自身は「自己一致」しています。

学校に行かなくて困るのは、本人ではありません。

自らの評価が下がる教師、世間体が悪いと考える親です。

本人は困りません。大検もあるし、今はYouTubeなど、失礼ながら学校の先生よりも分かりやすく教える講師の方がたくさんいます。

学校という狭い枠組みでの人間関係ではなく、世界中に友人を作ることも可能です。

本人の「学力」「コミュニケーション力」という「リソース」を維持・向上するための「リソース」も、たくさんあるし、進学なんて何とでもなります。

「学校に行きたくない」という気持ちを受容し、寄り添う。

その上で、「学校に行かなくてもハッピーになれるリソースに目を向ける」

そして、学校に行かない時間をゲームやネットで無駄に過ごさないように、支援する。

「35億って言うでしょ?2年後、あなたが大学に入ったとき、クラスメイトと同じような子がいて、大学生のあなたは、その子と仲良く話ができる関係です。
そして、2年後のあなたは、今のあなたに『今のうちから、これをやっておくと大学に入ったら楽しいぞ?』とアドバイスをしてくれます。
今のうちにやっておくといい『これ』って何だと思う?」

この問いかけは、解決志向短期療法で行われる、「ミラクルクエスチョン」という技法を応用したものです。

「意識を未来に飛ばし、自らに問いかける」

それは「自分のことは、自分自身が一番の『専門家』」だからです。

そんなの今は考えられないって言われる?それでもいいんです笑

それが「解決志向」のミソだから。

解決志向のメリット

解決志向のメリットとしては、

・話が前向きになる。
・ポジティブな感情が出やすい。
・カウンセラーもクライエントも、負の感情の影響が少ない
・自己効力感、自己肯定感が上がりやすい。
・次のステップに移行する時間が比較的短い。

などがあります。

解決志向のデメリット

逆に、デメリットとしては、「問題」「原因」という一見分かりやすい話題を扱わないため、カウンセラーの個性が面談の成否に影響しやすいと言えます。

平たく言えば、「頭の固い人」には向かないアプローチと言えます。

「学生は学校に行かなければならない」と思っていれば、「学校に行かなくても良い」という言葉は出てこないですよね。

「解決志向」と「問題志向」の共通点

解決志向と問題志向は、どちらも「傾聴」を行う点では同じです。

どちらも、受容、共感、自己一致が必要であり、クライエント中心のアプローチであることは変わりありません。

「解決」という言葉で誤解されがちですが、「カウンセラーが解決する」のではありません。

カウンセラーが行うのは「問題(原因)」ではなく、「リソース」に焦点を当てたアプローチを行う。

違いはこれだけです。

※「オウム返し」のみを行うようなアプローチは、キャリ魂塾では「傾聴」とは異なるものと考えています。

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