資格で理想のライフスタイルを実現する、キャリ魂塾のキャリ魂太郎です。


このエントリーでは、現行キャリアコンサルタント倫理綱領(平成28年4月1日改定版)の問題点を解説しています。

キャリアコンサルタント倫理綱領に感じる缺欠。

国家資格キャリアコンサルタント試験、キャリアコンサルティング技能検定試験そしてキャリアコンサルティング実務。

いずれにおいても、「キャリアコンサルタント倫理綱領」(以下、「倫理綱領」と言います)は非常に重要です。

しかし、この倫理綱領には、大きな缺欠があると危惧しています。
(「缺欠(けんけつ):欠けていること。)

キャリ魂太郎が危惧する、キャリアコンサルタント倫理綱領の缺欠とは?

では、私がこの倫理綱領について、危惧する缺欠は、下記の3点です。

1.キャリアコンサルタントとは、キャリアコンサルタント名簿に登録された者だけを指す。
2.キャリアコンサルティング協議会は、倫理綱領の決定権者として相応しいのか。
3.内容的な疑問点。

では、順次みていきましょう。

キャリアコンサルタントとは、キャリアコンサルタント名簿に登録された者だけを指す。

ご存知のように、「キャリアコンサルタント」になるには、「キャリアコンサルタント名簿」に「登録される」ことが必要になります。

キャリアコンサルタント試験に合格した者は、厚生労働省に備えるキャリアコンサルタント名簿に、氏名、事務所の所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けて、キャリアコンサルタントとなることができる。

引用:職業能力開発促進法第30条の19
※1級、2級キャリアコンサルティング技能検定合格者はキャリアコンサルタント試験免除=合格者となります。

ここからもハッキリしているように、法律上、「キャリアコンサルティング名簿に登録していないキャリアコンサルティング技能士」「キャリアコンサルタント」ではありません。

つまり、現行倫理綱領は少なくとも「キャリアコンサルタント及びキャリアコンサルティング技能士倫理綱領」とすべきです。

キャリアコンサルティング技能士に、倫理規程や法律上の守秘義務がないケース

キャリアコンサルティング技能士には、倫理規程どころか法律上の守秘義務すらない『ケース』があります。※あくまで『ケース』があります、です。ご理解下さい。

まず、「キャリアコンサルティング技能士会に入会していない」キャリアコンサルティング技能士には倫理規程がありません。

その根拠として、下記の画像をご覧ください。

引用:キャリアコンサルティング技能士会サイト

キャリアコンサルティング技能士会を運営するのは、ほかならぬ「キャリアコンサルティング協議会」です。

つまり、キャリアコンサルティング協議会が、「現行制度上、キャリアコンサルティング技能士会に入会していない場合当該キャリアコンサルティング技能士には倫理遵守規程はない」と述べているのです。

そして、「キャリアコンサルタント」とは「キャリアコンサルタント名簿に登録された者」を指すのですから、「キャリアコンサルタント名簿に登録をしていないキャリアコンサルティング技能士」は、1級だろうが2級だろうが、法律上の守秘義務はありません。

※キャリアコンサルティング技能士会は、現在ACCNに統合されています。

倫理綱領の決定権者として、キャリアコンサルティング協議会が相応しいのか。

ご存知のように、キャリアコンサルティング協議会は、一民間団体です。

非営利団体とはいえ、ただ単に

「指定試験機関」
「指定登録事務機関」

であるだけです。

法人会員として全養成講座団体が会員になっていますが、民間資格時代はともかく、養成講座実施団体とその出身キャリアコンサルタントは、養成講座を実施・受講しただけの関係です。

養成講座終了後は、個々のキャリアコンサルタントに対して何ら影響力を持つわけではありません。

それに対して例えば、社会保険労務士会、行政書士会(共に連合会を含む)は法律によって、会員が強制的に加入する団体です。

だからこそ、その構成員に倫理規定を遵守させる権限を持ってよいし、仮に、倫理規定を改廃するとしても、構成員が参画することができます。

なぜ、個々のキャリアコンサルタントと何の関係もない、一民間団体が、何の権限があって「倫理綱領」なるものを定め、従わせようとしているのでしょう。

内容的な疑問点。

そしてこの倫理綱領、内容的にも疑問があります。

例えば、

「キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、相談者との多重関係を避けるよう努めなければならない。」

(引用:キャリアコンサルタント倫理綱領第10条2項)

と述べられているように、努力義務です。

であれば、多重関係が構成されたとして、その回避について「努力した」ならそれでOKと読めなくもありません。

そして、「社内キャリアコンサルタントと従業員である相談者」多重関係の代表的なものですが、これを避けるためにどう「努力」すればよいのでしょうか。

次に、

「キャリアコンサルタントは、
キャリアコンサルティングの契約関係にある組織等と相談者との間に利益が相反するおそれがある場合には、事実関係を明らかにした上で、相談者の了解のもとに職務の遂行に努めなければならない。」

(引用:キャリアコンサルタント倫理綱領第11条2項)

これは、何を求めているのか不明瞭です。

「誰に」事実関係を「明らかに」するのでしょうか。

当然、相談者本人にだけ「明らかに」にするということになりますね。

だって、「守秘義務」があるのですから、「組織等」に「明らかにする」ことはできません。

であれば

「相談者の了解のもと」

とは?

逐語で表現してみましょう。

「あなたの〇〇に対するご相談は、私があなたのセルフキャリアドックを依頼された組織の
利益と相反します。」

はい。相談者に「事実関係を明らかにし」ましたね。

「その上で、あなたのセルフキャリアドックを継続してよいでしょうか」

はい。相談者の了解を求めました。

これ、了解してくれる相談者いますか?

仮に、了解してくれなかったとしましょう。

でも、

「お願いします。あなたの了解のもとに職務遂行することが努力義務なんです。
どうか了解してください。ああ、、ダメですか。
しかし、私もあなたの了解のもとに職務遂行するよう努力したので、このままセルフキャリアドックを遂行します。」

で良いと読めます。だって努力義務だから。

万一、ここで「了承を得られなかったら職務を遂行してはならない」とされてしまうと、セルフキャリアドックを遂行できなくなります。

場合によっては、助成金申請ができません。

これも多重関係なんですけどね。

厚労省が多重関係を理解していないことが良く分かります。

つまり、「職務の遂行に努めなければならない」とは、逆に言えば、「努力」したら職務を遂行していいのでしょうか?

そんなはずはないですよね。

倫理綱領委員会について

倫理綱領委員会の委員も、民間団体の役員ばかりで、弁護士や大学教員等が入っていません。
(社会保険労務士が入っているのがなんとも…)

そもそも、倫理綱領に違反したらどうなるのでしょうか?

その点についても、述べるべきです。

早急な国家資格者団体の創設を。

キャリアコンサルタントには、いわゆる国家資格者団体がありません。

だからこのようなことが起こっているわけです。

まず、国家資格者団体を設立すること、次に、倫理綱領の位置づけと改訂を行い、構成員に周知することこの2点が必要であると感じます。

キャリアコンサルタント自身が、自己決定権尊重を訴える必要がある。

与えられた倫理綱領に、唯々諾々と従うのではなく、自立したキャリアコンサルタントとして、思考する。

これが大切なはずです。

にもかかわらず、キャリアコンサルタントが自らの職業倫理規定について自己決定権を尊重されていない。

こんなお粗末な話があるでしょうか。

あなたはどうお考えになりますか?

本エントリーをアップしたきっかけ。

実はTwitterで、「倫理綱領を遵守するキャリアコンサルタントになる」という新人キャリコンさんのツイートを見かけたので、あらためて考えて頂きたく、問題提起を致しました。

本エントリーに記載した内容は、平成28年度にキャリアコンサルティング協議会に連絡済みです。