このエントリーでは、面談の際に、ただ漫然と伝え返すのではなく、しっかりと「意図をもって」「伝え返す」ことについて、解説しています。

参考音声を聴いて、どのように伝え返すのかを考える

参考音声

イントネーションの違いによるマルチレベルコミュニケーション

1.と2.この二つは、字面(第一水準)としては、全く同じ「私は、彼が盗んだとは言っていない」です。

しかし、その意味する内容が違うことは、音声を聴いてみるとご理解頂けると思います。

その意味する内容がなぜ違うと分かるのか、それは我々が「イントネーション」(第二水準)で「マルチレベルコミュニケーション(ダブルテイク)」をしているからです。

今回は、分かりやすくするために、意図的にしっかりとイントネーションを変えてみました。

下記の画像でも、波形が違うことで、イントネーションが違うことが分かると思います(上が1.下が2.です)

1.と2.それぞれに対する「伝え返し」の違い

1.では「『私は』彼が盗んだとは言っていない」

2.では「私は彼が盗んだとは『言っていない』

これに対して、漫然と「あなたは、彼が盗んだとは言っていないんですね」と伝え返したのでは、全く意味がありません。

1.に対しては

『あなたは』言っていないんですね」(ほかの誰が言っているのか?)

2.に対しては

「あなたは『言ってはいない』んですね」(発言ではなくて、メールやメッセージなどの『筆記』や『ほのめかし』などの『態度』で表した?)

このように、それぞれ「伝え返す」部分を変える。

つまり「イントネーション」によるコミュニケーションに対して、同じく「イントネーション」でコミュニケーションをすることになります。

これが「相手の変容」に繋がる「伝え返し」です。

16種類の「NO」を把握したミルトン・エリクソン

ミルトン・エリクソンは、マルチレベルコミュニケーションについて、下記のように述べています。

「フランク・ベーコンは(舞台演劇「ライトニン」の中で)さまざまな場面において短く「ノー」と言うだけで、少なくとも16種類の意味を伝えました。
たとえば、明確な「ノー」、微妙な「イエス」、望みをほのめかす「まだです」、面白がっていう「ばかじゃないの!」、更には強烈に否定する「何があろうと絶対に」といったものまで伝えていました。
声の調子が変われば、それが一つの語彙となって、言葉によるコミュニケーションを実際に変えることができる

(カッコ内、太字・下線は追記)

伝え返しは、このように「マルチレベルコミュニケーション」に対応する必要があり、その対応ができていなければ「分かってくれない」となってしまうのです。

クライエントのマルチレベルコミュニケーションに応える

ただ漫然と伝え返したのでは、相手の変容は生じません。

多くの受験生・実務者がこの「漫然とした伝え返し」に終始しており、ラポールの構築どころか、「それ今言いましたよね」とクライエントの「不信感」を募らせる結果になっています。
(普段の会話ではほとんどの方がこのマルチレベルコミュニケーションができているのですが、こと「面談」になると養成校の呪いが発動し、できなくなります)

このエントリーを読まれたあなたは、ぜひ「意味のある伝え返し」にチャレンジして頂ければと思います。

蛇足ですが「SNSカウンセリング」では、このマルチレベルコミュニケーションが非常に難しくなるため、リアル面談よりも慎重な応答の検討が必要になります。