このエントリーでは、キャリ魂塾メルマガに掲載した内容を、加筆修正してご紹介しています。

匿名相談サイトでよく目にするけれど、リアルでは珍しい相談TOP3とは?

さて、匿名相談サイトでよく目にする相談なのですが、リアルでは関わったことのない相談があります。

そのTOP3が下記です。

1.食い尽くし配偶者
2.メシマズ配偶者
3.勝手に処分配偶者

1.はとにかく目の前に出された食べ物や冷蔵庫にある食べ物を全部食べてしまうそうです。

2.はどうしても料理が上手に作れず、マズいとのこと。

3.は配偶者の趣味などが理解できず、勝手に捨ててしまう。

食いつくし系は、他人が「後で食べよう」と思っていることを理解しなかったり、「後でいいならまた後で買えばいいから自分が食べる」という感じでしょうか。

メシマズ系は、レシピ通り作らない。つまり「どうしても自分のやりたいようにやってしまう」。

処分系は、配偶者の趣味を理解しようとしない、できないので、自分の気持ちを優先した結果ですね。

「食い尽くし・メシマズ・勝手に処分」に共通することは?

この3つに共通することは、

「悩んでいる原因は『自分』ではなく『配偶者(他人)』である」

「その配偶者(他人)は、相談者の心情を理解しようとしない・できない」

だと思います。

なので、相談者は基本的に「被害を受けた(受けている)配偶者」です。

さらに言えば、大抵の場合、相談に至るまでに、アドバイスされるようなことはほとんど済んでいます。

小分けにする、紙に「食べてはダメ」と書いて貼る、料理教室に行く、趣味についてしっかり話し合う…

それで済むなら相談に来ないんですよね。

そして、当人(相手側配偶者)は、自分の何が悪いのか分かっていなかったり、自分が正しいと思っていたりします。

例えるなら、ジャイアンは自分を音痴と思っていないのと同じです。

ジャイアンリサイタルに行きたくない。

そんなのび太に、「ジャイアンと話し合え」なんて言えますか?

ジャイアン本人を受容・共感したら?

「心の友よ」と言われて延々あの歌を聴かされることになります。

来談者中心療法の限界

こういった相談には、来談者中心療法は弱い。

なぜなら、相手側は、基本的に「自己実現」しており、通常は「衝突」が生じるからです。

何度言っても改まらないのなら、受け入れるしかない。

でも、「受け入れられない」から相談に来ている。

もはや「相手に譲歩させる」「拒絶する」しか手がないことが多い。

だから「衝突」する。

最終的には、離婚というカードを切るか切らないかになることが多いですね。

しかし、ここで子どもという関係者の存在が出てくることも…

子どもの意向を考えると、三者三様の自己実現が出てくるわけです。

来談者中心療法の限界、それは人間は一人で生きているのではなく、集団の中で生きていることを重視しなかったことだと思います。

個々の欲求(権利)の対立の中で、「それぞれが妥協する」ことが自己実現であると「気づかなければ」先に進まない。

言い換えれば「受容」「共感」だけでは、自我が肥大しトラブルが拡大することにもなりかねません。

だからロジャーズは、グループアプローチに進んだのではないでしょうか。

彼自身が、来談者中心療法の限界を悟ったのだと思います。

論より事実として、来談者中心療法は「セラピー」としては衰退することになり、「効果のある心理療法」としては、認知・行動系療法が主流になりました。

1993年には,アメリカ心理学会の臨床心理学部門は,「実証的に支持された心理療法のリスト(empiricallysupportedtreatments;ESTs)」を発表した。このリストには,行動療法系の心理療法が数多くリストアップされることとなった。しかしながら,現在では,心理力動的な心理療法には「実証的に支持されている」とされてきた他の諸療法と比較しても同程度の効果量があることが示されている(Shedler,2010)。また,心理力動的心理療法は,ランダム化比較試験により,うつ病性障害,パニック障害,不安障害,身体化障害,摂食障害,物質関連障害,境界パーソナリティ障害,C群パーソナリティ障害に適用があることが示されている(たとえば,Leichsenring,2009;Milrodetal.,2007)。こうしたことを反映して,現在では,このリストには,精神分析や来談者中心療法をベースに発展してきた心理療法もいくつか掲載されている。それでもなお,リストにある心理療法の大半はなお行動療法系のものである(APA,2020)。1980年代以降,行動療法系の心理療法がますます優勢になり,伝統的心理療法が勢いを失っていった背景には,こうした事情が強く働いたものと考えられる。

(引用:心理療法において有効な要因は何か? –特定要因と共通要因をめぐる論争-杉原保史 2020)

キャリアコンサルタント養成講習団体によっては、なぜか傾聴・来談者中心療法を「唯一絶対」であるかのように指導します。

現実にはそうではありません。

そうではないからこそ、400以上の心理療法が生まれ、今も増え続けているんです。