キャリ魂太郎です。
このエントリーでは、今後の心理カウンセラー業界を、パーソンズの示した見解から検討してみたいと思います。
なお、私は、臨床心理士・公認心理師を、サイコロジスト(又はセラピスト)としてとらえており、カウンセラーはサイコロジストの一領域として捉えています。
その点をご了承ください。
Contents
パーソンズの見解
パーソンズは、個人と仕事のマッチングに際して、様々な仕事(職業)の知識を得ることが必要であると述べました。
それは下記の6項目です。
1.その仕事に求められている資質
2.成功の条件
3.有利な点と不利な点
4.報酬
5.就職の機会
6.将来性
この6つの観点から、心理カウンセラーという職業の今後を検討してみます。
心理カウンセラーに求められている資質
心理カウンセラーに求められる資質については「新版カウンセリング心理学」(渡辺三枝子 ナカニシヤ出版)に、アメリカ・カウンセリング学会(ACA)のカウンセラー教育基礎資料が紹介されています。
①頑固ではなく、オープン・マインドである。
②「曖昧さ」を我慢できる。
③情緒的安定、心理的確実感、強さと自信、勇気をもって行動する力などを行動で現せる。
④「未来志向的な精神」を行動化できる。
⑤高度の忍耐力をもつ(わずかな変化にも気づき、変化を待つことができる)。
⑥ユーモアのセンスをもつ。
⑦創造性を発揮できる。
⑧自己受容できる。
⑨自己理解でき、とくに自分の情緒的限界を自覚している。
⑩知的、論理的に問題の発見、考察、推察、解決ができる。
⑪適切な寛容さをもてる(自分と異なった意見や価値、信念などに対して客観的になれ、外部の評価を恐れないなど)。
⑫個々人の独自性を尊重し受け入れられる。
⑬客観的でいられる(他者の問題や感情に溺れない、他者の評価を恐れない、他者と適切な距離を置ける、他者の変化を認識できるなど)。
⑭自己の限界を洞察し、他者の援助を求める謙虚さを持つ。
⑮自己の長所や強さを認識できる。
引用:「新版カウンセリング心理学」渡辺三枝子 ナカニシヤ出版
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なかなかにハードルが高いと感じます。
特に、年齢を重ねたり、社会的地位が上昇したりすると、頑固になったり、忍耐力が低下したりします。
また、ユーモアのセンス、というのも客観的にチェックしてもらわないと、自分では分かりません。
こういった資質が自分に備わっているかどうか、チェックしてからカウンセラーになる、という方は例外的とは思いますが、やはりキャリアコンサルタントとしては知っておくべき内容だと思います。
心理カウンセラーの成功の条件
成功の条件という前に、そもそも「成功」というものが人によって異なります。
例えば、心理カウンセラーとして世界的に成功したい、というのであれば、多言語を駆使できることが条件になるかもしれません。
なので、「成功」として描くビジョンが人それぞれ異なる以上、この点については、割愛します。
有利な点と不利な点
有利な点と不利な点も、人それぞれの環境によって異なります。
ただ、心理カウンセラー業界は、70%が女性です。
また、女性の方がどちらかと言えば、男性・女性どちらの相談も受け入れられる方が多く、そういった点でも女性の方がメリットがあると言えるかもしれません。
更に言えば、ネットが使えるか、対面をメインで考えているのかで、有利不利というよりはマーケットが変わってきます。
心理カウンセラーの報酬
報酬という考え方は、2つあります。
1つは、「クライエントから直接頂く」お金を、報酬と考える。
もう1つが、「雇用され、給与として頂く」お金を、報酬と考える。
ですね。
収入としては、臨床心理士実態調査がある程度イメージしやすいかと思いますが、こちらによると300万円台までが約半数となっています。
上記資料の調査は2015年時点ですが、それほど変動はしていないものと思われます。
ただ、当時もっともライセンスバリューの高かった臨床心理士の半数が300万円台以下ということですから、臨床心理士以外の民間心理カウンセラーの平均年収はもっと下がるでしょうし、そもそも専業で行っていない方が大多数かもしれません。
また、稼働日数を20日/月と考えれば、1日2人としても、単価を5,000円以上に設定しない限り、20万円には到達しません。
これは、キャリアコンサルタントが面談メインで独立する場合でも同じことですね。
そして、独立開業する場合は、ここから経費が掛かりますし、雇われている場合でも給与から控除がありますので、実際の手取りはもっと少ないということになります。
心理カウンセラーの就職の機会
就職の機会は、概ね2~3月に募集が増えます。
逆に言えば、この時期を外すと、地方ではなかなか募集がないというのが実情ではないでしょうか。
また、2019年からは、公認心理師が応募条件に加わっており、公認心理師、臨床心理士、認定心理士、産業カウンセラーといったある程度社会的評価のある資格を持っていないと、就職には結びつかない(独立開業が選択肢になる)ことに注意する必要があります。
ただ、この場合でも、認定心理士又は産業カウンセラーなどの民間資格のみの場合、相当厳しい状況でしょう。
心理カウンセラーの将来性
国家資格としての公認心理師制度が始まったことにより、民間資格による心理カウンセラーは、これから急激に厳しくなっていくと考えられます。
ほとんどの臨床心理士は公認心理師受験をするかと思いますので、3万人前後の「公認心理師+臨床心理士」のダブルライセンスホルダーが誕生することになります。
企業はもちろん、特に公的機関に一般的な民間心理カウンセラー資格で就職することは、極めて困難になるでしょう。
そうなれば、今後、公認心理師・臨床心理士以外の心理カウンセラーは、開業(副業)する以外には、心理カウンセラーとして働くことが難しくなるわけですが、この開業領域でも、毎年毎年公認心理師が輩出されますので、開業した場合でも、民間心理カウンセラー資格一本で収入を得ていくことは難しくなります。
公認心理師・臨床心理士以外の民間資格心理カウンセラーは、コーチング、ファシリテーター、キャリアコンサルタントなどの付加価値がなければ、このダブルライセンスホルダーと比較された場合、訴求力が弱く、非常に厳しいくなっていきます。
伏兵として、AIカウンセリングが始まる
更には、これからの10年で、AIによるカウンセリングが増えることも想定されます。
このAIカウンセラー最大のメリットは、「絶対に秘密を漏洩しない」ことです。
ビッグデータとしては解析されるかもしれませんが、AI自体が自発的に守秘義務を破るということはまず考えられませんので、この点では非常に心強いと言えます。
もちろん、人間が漏洩させてしまうことはありえますが、それは現在と何ら変わりありません。
なお、2018年時点で、簡単な電話応対だと、人間はそれがAIかヒトなのかを判別できないレベルに到達しており、電話オペレーターの代替が始まっています。
電話オペレーターができるのであれば、カウンセリングと銘打っていても、実はカウンセリングではないようなサービス、例えば美容カウンセリング、愚痴聞きなどは、早々にAIが代替する可能性が高く、この点からもカウンセリング(とされていたサービス)で収入を得られる方は減ってくるものと思われます。
結論:民間心理カウンセラーのキャリアコンサルタント資格取得が当然になる。
私の結論は、心理カウンセラー業界における、一般的そして専業の「民間資格心理カウンセラー」はこの10年で、ほぼ食える職業としては消滅するということになります。
一部のスピリチュアル的なサービスをメインとするカウンセラーや、既にある程度のネームバリューを持っており、集客力のあるカウンセラーはともかく、ほとんどの民間資格に基づく心理カウンセラーは資格競争力がないからです。
そのため、公認心理師資格(又は臨床心理士資格)を持たずに、この先も心理カウンセリングを続けたいと考える方は、既に述べたように、心理カウンセリングの知見を活かせる親和性の高い領域に特化(コーチングやファシリテーター、夫婦関係等恋愛、相続問題など)していきます。
この特化のなかで、キャリアコンサルタント資格を検討する方も増えるのではないでしょうか。
また、公認心理師試験とキャリアコンサルタント試験の親和性も高いことから、公認心理師(と臨床心理士)がキャリアコンサルタント試験を受験することも増えるでしょう。(今回は「心理カウンセラー」の話なので、キャリアコンサルタント業界の今後は検討しません)
これが、パーソンズの言うところの、「カウンセラーによる分析」「職業の外観と展望」にしっかりと該当するかどうかは、「職業の選択」を読んでいないのでご容赦下さい。