理想のライフスタイルを実現する、キャリ魂塾のキャリ魂太郎です。

このエントリーでは、キャリアコンサルタント養成講習では、鉄の掟のように教えられる「来談者中心療法」が、既に「心理療法」としてはメジャーではなくなった理由についてお伝えしています。

人に「自己実現欲求」があるというのは、「思想・哲学」であり、「科学」ではない。

ご存知のように、マズローはピラミッド型の欲求階層を提唱し、その最上位に「自己実現欲求」を据えました。

来談者中心療法の祖であるロジャーズは、この理論に影響を受け、『人格変容のための必要十分条件』と題して,1957 年に6つの公式を発表します。

ここではこの6つの公式は割愛しますが、これは、すべてのカウンセリングの基本として学ばなければならない必須の「態度」であるとされます。

ロジャーズは、陽のほとんど射さない、納戸の中でもカボチャ(ジャガイモとかとにかくそういう植物ですね)の芽が、光に向かって伸びることから、マズローの言うように「人間も光に向かって生きる傾向(自己実現傾向)を持つはずだ」と考えたとされます。

バッサリ切り捨て御免してしまえば、スタートから既に間違えていますよね。

人間は植物ではないからです。

植物が光に向かって芽や茎を伸ばし、葉を向けるからといって、同じように、人間が正しい方向へ自己実現するとは言えません。

人間と植物を同じと考えるのは、科学ではないですよね。

つまり、マズローにしろ、ロジャーズにしろ、「人間には自己実現欲求がある」と考えたことは「思想・哲学」の世界の話であり、「科学的」ではないのです。

レミングスというネズミが、集団で海や湖に向かって行進するからといって、人間には自己破壊欲求がある、と言えないのと同じです。

しかし、その逆だと人は何となく信じてしまうんですね。

「涙の数だけ強くなれるよ」って、科学的ではないでしょう。

誤解しないで頂きたいのですが、私は「人間には自己実現欲求がない」と言っているのではありません。

全ての人間に自己実現欲求があるというのは、「科学的ではない」と言っているだけです。

「科学的」かどうかは「エビデンス」があるかどうかである。

現在、もっとも「科学的」と言える心理療法は、認知行動療法です。

そして、その科学的なエビデンスのゆえに、ほかならぬクライエントから支持されているわけですね。

あなたが、「心の病」でカウンセリングルームを選ぶとき、

Aカウンセリングルームでは、科学的に根拠(つまり再現性がある)があり、多くの人が同じように実施されて回復した認知行動療法を実施する。

Bカウンセリングルームでは、哲学・思想として「人は自己一致した相手に、無条件の肯定的関心を寄せられ、共感的に理解されれば、十全に発達する」と考えており、とにかく話を聴いてくれるという来談者中心療法を実施する。

このA、Bの2つのカウンセリングルームを、30分5,000円(そりゃどちらもタダではありません)で選ぶとしたら、どちらを選ぶか、という話なんです。

そして、結果として、Aを選ぶ「クライエント」が多かった。

だから現在では、アメリカを中心として、認知行動療法が支持を得ており、来談者中心療法は、カウンセラーの基本的な姿勢・態度として、カウンセリング業界に溶け込み、基礎的な部分として機能しているのです。

生物ー心理ー社会モデルを知ろう

繰り返しますが、キャリアコンサルタント業界では、来談者中心療法(≒傾聴)が鉄の掟のように指導されています。

それは本来、「生物ー心理ー社会モデル」のうち、キャリアコンサルタントが「社会」領域を担うから許されているわけです。

つまり、クライエントからすれば「緊急度が低い」のです。

緊急度が高い、つまりクライエントに危険や深刻さがあるとき、「科学的根拠のない療法」を提供しようとすれば、どうなるでしょうか。

誰だって怒るでしょう。

それは、ガンの治療に気功を使うようなものです。

「涙の数だけ強くなれるよ」という言葉と一緒です。

科学的ではないという意味では、これと同じなのです。

少なくとも、「生物ー心理ー社会モデル」のうち、「生物」と「心理」の領域では、そのような非科学的で悠長なことは到底許されません。

科学的な根拠があり、短期間(当然ですよね)で状態が改善することが、クライエントにとって必要なことなのです。

そして、一部のキャリアコンサルタント養成講習団体(そして産業カウンセラー協会)の誤謬は、「心理」領域に「社会」領域で有効な技法、すなわち「態度」で臨もうとしている点です。

「生物」「心理」領域では、クライエントは、非科学的な思想よりも、科学的な根拠に基づく「治療」を提供してほしいのです。

その想いに寄り添わずに、自分のしたい療法を押し付ける、それのどこが「寄り添い」でしょうか。

傾聴は万能ではありませんし、傾聴が効果を発揮するとすれば、それは「クライエントがメンタル不全を生じる前である」ことが必要です。

この点をしっかりと押さえて頂きたいと思います。