キャリ魂太郎です。

このエントリーでは、公認心理師技法ガイドや、今後のキャリアコンサルタント資格の活用の方向性について、解説しています。

公認心理師技法ガイド購入

公認心理師技法ガイドを購入しました。

6,500円(税別)と、お値段的にはなかなかハードルの高い一冊ですが、本は「迷うレベルなら買う」で間違いありません。

Amazonで買えば、一定期間内なら返品もできますので、さっと読んで思っていた内容と違えば返品をすることも可能です。

こちらは当然、キャリアコンサルタント試験対策目的で買う本ではないのですが、キャリアコンサルタント業界と心理支援業界の意識の違いがあまりにも大きく、その間を埋める努力が必要だと感じるんですよね。

心理支援を行いたいキャリアコンサルタントが多い。

キャリアコンサルタントの前身として、キャリア・「カウンセラー」という名称の民間資格が一般的だったこともあり、キャリアコンサルタント業界には、「心理支援」を行いたいと考えている方が多数いるように感じます。

しかしながら、現在の国家資格キャリアコンサルタントは、あくまで「職業能力開発支援」(キャリア形成支援)がメインの資格であり、「心理支援」を行う資格としては設計されていません。

なので、試験機関であるキャリアコンサルティング協議会の出題してくる相談者像は、常に「迷っている」「この先が不安である」といった、「キャリア形成上の課題」を抱えているわけです。

そういった課題に対して、「答は自分の中にある」というアプローチでは、そぐわない部分があります。

例えば私の場合、Googleなどの英語翻訳能力が非常に高まっているため、今後英語を勉強することについて、迷いがあります。

仮に2000時間、英語を勉強するのであれば、その時間を中小企業診断士の受験勉強にあてる方が良いかもしれませんよね。

これは、どちらがしたい、という問題で迷っているのではありません。

「時代の変化が速く、先が読めない」ことで決断ができないのです。

先が読めていないのだから、答えは自分の中にはありません。

だからもし私が、キャリアコンサルティングを受けたとして、

「英語の勉強をしようかと思うのだけれど、Googleの自動翻訳精度が非常に高まっており、同じ時間勉強するのであれば、中小企業診断士の方がよいか迷っている」

と伝え、

「なるほど、キャリ魂太郎さんは『英語の勉強がしたいけれど、Googleの自動翻訳精度も高まっており、同じ時間勉強するなら中小企業診断士の方が良いかもしれない』と考えておられるのですね」

こんなオウム返しをされたら…

本当に申し訳ないのですが、ああ…この人ダメだこりゃって感じます。

つまり、「オウム返し」だけのキャリアコンサルタントとは、ラポールが形成できません。

あくまで私の場合に限れば、自分の中に答があると分かっていることなら、相談には行かないでしょう。

「キャリア」とは「ビジネス」であり「投資」でもある。

そして、これは「キャリア」のお話ですよね。

人によって、また立場によって「キャリア」という言葉の意味していることも変わります。

私の場合、「キャリア」とは、言い換えれば「ビジネス」のことなんです。

「ビジネス」なのだから、ああ、私は本当は英語が勉強したいんだ、ああ、私は中小企業診断士が勉強したいんだ、ああ、両方勉強すればいいんだ、とはなりません。

経営者、事業主の価値観として、あなたに知っておいていただきたいことを言いますね。

事業主、経営者は自分が本当にやりたいことでも、市場ニーズがない、またはシェアが取れない、リターンがないことならしません。

事業主、経営者にとっては、「やりたいことをやればいい」というのは、全く意味のないことです。

私のキャリアの選択基準は、「ビジネスとして成立するかどうか」=「投資が回収できるかどうか」です。

そりゃそうでしょう。

社長がお金にならないこと、やりたいことをやってたら、労働者は逃げ出しますよね。

お金を稼がなければ、事務所を維持できず給料も払えなくなるんです。

従業員のためにも、「やりたいことをやる」「好きなことをやる」のではなく、「お金を稼げること」をする必要があります。

つまり「好き嫌いにかかわらず」、「やるべきことをやる」のが事業主、経営者です。

先ほどの相談は、キャリア形成の相談と同時にこれは「ビジネス」(職業=事業)の取捨選択、つまりリソースの選択と集中、言い換えれば「(リソースの)投資」の相談なんです。

今日のメールマガジンでお話しましたが、イチローはキャリア形成のプロではないから、「好きなことをしよう」でいいのです。

我々はプロですから、「好きなこと」に加えて、「将来性」(市場ニーズ)なども検討する必要があります。

例えば「野球」というスポーツの将来性、そのキャリアの過程で得られるスキルの転用性等も考えた支援を行う必要がありますよね。

現状の養成講習の面接指導では、この部分が完全に欠けており、合格後にどう補うか本人次第になっていることがキャリアコンサルタント業界の課題と言えます。

先ほどの私の例で言えば、私は、キャリア形成のプロである、キャリアコンサルタントが、今後の英語学習の必要性、英語を使った職業について、どのようなビジョンを持っているのか、それを聴きたいのです。

大事なことなので、もう一度言います。

聴きたいのは、「私」なんですよ。

だから「あなたの話を聴かせてください」と言われても困るのです。

「聴きたいのは私」なんですから。

これが今の「聴くだけ指導」では全くカバーされていない、「コンサルティング」部分ということになります。

相談者は、迷っているからこそ、判断材料となる「プロの意見」を「聴きたい」んですね。

話したくて来ているのではないんです。

これが、先述の「そぐわない部分」なんです。

新世代キャリアコンサルタントには、相談者が心理支援を必要としているのか、情報提供を求めているのか、しっかりと話を聴いて、「聴く側」になるのか「話す側」になるのか、応対を変えていく柔軟性と専門知識が必要になります。

公認心理師技法ガイドから、心理支援に必要とされるスキルを読み解く

さて、一方で「心理支援」を求める相談者が来ることも、もちろんあると思います。

なので、今回のテーマである、本日2019.3.26から店頭に並んだ、ほやほやの公認心理師技法ガイドをご紹介します。

なぜこちらをご紹介しようと思ったかというと、心理支援を行いたい方に必要な情報がコンパクト(と言っても850ページ超ですが)にまとめられているからです。

目次を読むだけで、今後の心理支援職に求められることが概観できますので、引用しますね。

第1章 公認心理師の専門性に関する知識と技法
1 臨床心理技能
2 科学者―実践者モデル
1)エビデンス・ベイスト・プラクティスとは
2)臨床研究の方法
3)ランダム化比較試験
4)メタアナリシスとシステマティックレビュー
3 倫理実践
1)スキルとしての職業倫理
2)倫理の基本的枠組み
3)倫理の実践技法
4 多職種連携
1)コーディネーション
2)チームワーク
3)リーダーシップ
4)ケースマネジメント
5 教育訓練のプロセス
1)ケースカンファレンス
2)インターンシップ
3)スーパーヴィジョン
第2章 アセスメント技法
1 アセスメントの基本
2 基本情報の収集
1)コミュニケーションの基本技能
2)予診面接
3)初回面接
4)関係者との面接
5)一般的な行動観察
6)行動の機能アセスメント
3 基盤特性の検査
A 知能・認知機能検査
1)WISC
2)WAIS
3)田中ビネー
4)KABC-II 日本版KABC-II心理・教育アセスメントバッテリー
5)DN-CAS
B 発達検査
1)新版K式発達検査
2)Bayley-III乳幼児発達検査
C 適応行動検査
1)Vineland-II適応行動尺度
2)ASEBA行動チェックリスト
D パーソナリティ検査
4 発達障害の評価
A 自閉スペクトラム症の検査
1)ADOS-2自閉症診断観察検査 日本語版 第2版
2)ADI-R自閉症診断面接改訂版 日本語版
3)PARS-TR
4)M-CHATとAQ
B ADHD(注意欠如多動症)の検査
1)ADHD-RS
2)Conners 3
3)CAARS・CAADID
C SLD(特異的学習症)の検査
1)LDI-R
2)ディスレクシアの検査
D その他の発達障害の検査
1)発達障害の特性別評価法
2)感覚プロファイル・シリーズ
3)発達性協調運動障害の検査
5 症状評価
1)症状評価尺度
2)認知症の評価
3)神経心理学的検査
4)脳画像検査
5)操作的診断マニュアルの活用法
6 ケースフォーミュレーションとフィードバック
1)ケースフォーミュレーションの基本
2)心理教育とセラピーの動機づけ
3)報告書の書き方
第3章 介入技法
1 理論・モデル・アプローチ
A カウンセリング
1)カウンセリングの理論
B 認知行動療法
1)レスポンデント学習の理論モデル
2)レスポンデント学習の理論に基づくケースフォーミュレーション
3)オペラント学習の理論モデル
4)オペラント学習の理論モデルに基づくケースフォーミュレーション
5)認知療法の理論モデル
6)認知療法の理論モデルに基づくケースフォーミュレーション
7)臨床行動分析の理論モデル
8)マインドフルネスの理論モデル
C その他の心理療法
1)精神分析のアプローチ
2)対人関係療法のアプローチ
3)ブリーフセラピーのアプローチ
4)グループ療法のアプローチ
5)家族療法のアプローチ
6)森田療法のアプローチ
7)内観療法のアプローチ
2 各種技法
A カウンセリング
1)カウンセリングの基本技法
2)フォーカシング
3)ナラティヴ・アプローチ
4)動機づけ面接
B 認知行動療法
1)エクスポージャー療法
2)応用行動分析
3)ソーシャルスキルトレーニング
4)行動活性化療法
5)セルフモニタリング
6)認知再構成法
7)問題解決療法
8)スキーマ療法
9)ACT
10)マインドフルネス
C その他の心理療法
1)リラクセーション
2)催眠法
3)イメージ療法
4)プレイセラピー
第4章 コニュニティ・アプローチ技法
1 コンサルテーション
2 リエゾン
3 リファー
4 危機介入
5 ネットワーキング
6 アウトリーチ
7 包括型地域生活支援
8 予防啓発
9 アドボカシー
10 政策立案
第5章 疾患・問題別の専門技法
1 うつ病
1)うつ病の認知行動療法
2)うつ病の行動活性化療法
3)うつ病の対人関係療法
4)うつ病のマインドフルネス認知療法
2 不安関連障害
1)パニック症の認知行動療法
2)社交不安症の認知行動療法
3)強迫症の認知行動療法
4)PTSDの持続エクスポージャー療法
5)PTSDのEMDR
3 統合失調症
1)幻聴の認知行動療法
2)妄想の認知行動療法
3)陰性症状の認知行動療法
4 摂食障害
1)摂食障害の認知行動療法
5 睡眠障害
6 アディクション
7 性に関する障害
8 パーソナリティ障害
1)パーソナリティ障害の弁証法的行動療法
2)パーソナリティ障害のスキーマ療法
9 身体疾患
1)痛みの緩和
2)生活習慣病へのアプローチ
3)心疾患へのアプローチ
4)がん患者に対する心理的適応支援
5)がん患者の家族支援
6)SHAREプロトコール
10発達障害
1)応用行動分析による早期高密度行動介入プログラム
2)TEACCHプログラム
3)発達障害の認知行動療法
4)ペアレント・トレーニング
5)ペアレント・プログラム
6)不連続試行法(DTT)と自然な発達的行動介入法(NDBI)の統合
7)ESDM:自閉スペクトラム症
8)自閉スペクトラム症の早期支援:JASPERプログラム
9)ソーシャルストーリーとコミック会話
11 認知症
1)回想法
2)認知活性化療法
3)リアリティ・オリエンテーション
4)認知症の応用行動分析
5)認知症者の家族支援
6)認知症ケアスタッフに対する支援
12 高次脳機能障害
1)記憶障害のリハビリテーション
2)注意障害のリハビリテーション
3)実行機能/遂行機能障害のリハビリテーション
4)社会的行動障害のリハビリテーション
5)言語・コミュニケーション障害のリハビリテーション
6)視覚―運動機能障害のリハビリテーション
7)高次脳機能障害患者の家族支援
第6章 公認心理師の諸領域
1 チーム医療における心理師の役割
2 学校における心理師の役割
3 児童福祉における心理師の役割
4 高齢者福祉における心理師の役割
5 産業における心理師の役割
6 司法における心理師の役割
7 行動医学
8 サイコオンコロジー
9 アドヒアランス
10 精神科デイケア
11 ひきこもり支援
索引

出典:公認心理師技法ガイド 文光堂

いかがでしょうか。

心理支援を行うために、何を学ぶべきかが明瞭かつ体系立てて解説されていると感じます。

あなたが「心理支援」に取り組みたい、仕事にしたいと思っていたならば、あなたが知りたい、学びたい分野、理論の概要が掲載されているのではないでしょうか。(傾聴、来談者中心療法の場合、項目としてではなく「カウンセリングの理論」として記載されていますが、分量的には多くはありません。)

キャリアコンサルタントは心理支援をメインとして設計されている資格ではありませんので、今後の方向性として、心理支援を行いたいという方には、ぜひおススメしたい一冊です。

(産業分野に限れば、産業カウンセラーがこういった内容を盛り込んだ講座設計だと一番良かったんですけどね…)

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