キャリ魂太郎です。

このエントリーでは、平成31年4月1日から施行される、働き方改革関連法とその支援施策助成金である人材確保等支援助成金(働き方改革助成金)について、解説を行っています。

「働き方改革」として始まる新制度を押さえる

「働き方改革」(労働基準法及び労働安全衛生法、労働時間等設定改善法、じん肺法の改正)として、平成31年4月1日より施行される新制度には、下記の5つがあります。

1.時間外労働の上限規制(中小企業などに経過措置・猶予期間があります。)
2.有給休暇の確実な付与(年5日)
3.高度プロフェッショナル制度
4.産業医・産業保健機能の強化、労働時間の把握の実効性確保
5.勤務間インターバルの努力義務

上記の5つの新制度のうち、中小企業にとって、特に厳しい対応を迫られるのは1.時間外労働の上限規制 2.有給休暇の確実な付与(年5日)です。

建設事業、自動車運転の業務、医師、新技術・新商品等の研究開発業務など、経過措置として適用猶予・除外事業(業務)が規定されてはいますが、これは「時間外労働の上限規制」についてのみ規定されたものであり、年休5日の付与は業種・規模の大小を問わず、新制度の対象となるため、注意が必要です。

「働き方改革」以前に人がいない、来ないのが現状

今回の新制度が中小企業にとって厳しいものとなる背景には、そもそも「中小企業は大手企業よりも採用力が低いことが多く、慢性的に人手不足であり、従業員の長時間労働で仕事を回していることが多い」という事情があります。

大阪梅田ハローワークにおける求人状況

下記は、大阪最大のハローワークである、梅田ハローワークにおける平成31年1月の求人状況です。

建設業の有効求人倍率が30倍を超え、特に大阪万博を控え、基礎工事のメイン業種である土木工事に携わる方の有効求人倍率が94.79倍となっており、人手不足どころか、人手不在の状況になっていることが分かります。

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出典:大阪梅田ハローワーク

平成31年4月より、改正入管法に基づく「特定技能」制度も始まりますが、この「特定技能」資格では、外国人受入れ人数の総量規制が設定されていることから、ほぼ焼け石に水と考えられ、東京オリンピックの開催、そして大阪万博の開催と、この2大イベントが落ち着くまで、人手不在の状況が改善される可能性は極めて低いと考えられます。

「罰則付き」で半強制的に効率化を促す新制度

このような状況であっても、「働き方改革」自体は取り組まなければなりません。

それは、「長時間労働」よりも「効率的労働」に変えていくことで、人手不在の状況をなんとかする、というのが「働き方改革」の狙いだからです。

AIやRPAなどの技術導入も含めて、効率的な労働に変えていくことにより、長時間労働を減らし、経済成長を確保することが必要とされているわけですね。

そして今回の「働き方改革」による「労働効率化」は違反の場合に「罰則」を伴う規定とされいることからも、国がある意味では「強制力」を使ってまで、行わせたいという強い意志を感じます。

人材確保等支援助成金(働き方改革助成金)とは

さらに、このような状況の中、「働き方改革」への対応を支援する助成金として「人材確保等支援助成金(働き方改革助成金)」(以下「本助成金」と言います)のニュースが流れました。

平成31年3月19日現在、本助成金について判明している情報は、下記のとおりです。


出典:首相官邸HP

まだ、詳細が決まっているわけではありませんが、今からチェックしておく項目としては、対象となる事業主の要件でしょう。

本助成金の支給対象となる事業主

本助成金の支給対象となる事業主は下記の3つの要件を満たす必要があります。

1.時間外労働等改善助成金の支給を受けたこと
2.新たに労働者を雇い入れたこと
3.雇用管理改善のための計画を策定し、一定の雇用管理改善に取り組むこと

つまり、本助成金の認定(≠支給)申請前に時間外労働等改善助成金の支給を受けていなければ、対象とはならないことになります。

時間外労働等改善助成金とは

時間外労働改善助成金とは、中小企業・小規模事業者が時間外労働の上限規制等に円滑に対応するため、生産性を高めながら労働時間の短縮等に取り組む事業主に対して助成するものであり、中小企業における労働時間の設定の改善の促進を目的としたものであり、下記の5つのコースが設定されています。

1.時間外労働上限設定コース
2.勤務間インターバル導入コース
3.職場意識改善コース
4.団体推進コース
5.テレワークコース

しかし、平成31年3月時点では、全てのコースの認定期間が終了しており、今日明日に申請できるものではありません。

このあたりについて、なんらかのアナウンスが行われるものと思われますが、仮に受付が再開され、時間外労働等改善助成金を平成31年4月1日から計画認定申請を行って…となると、大幅に出遅れてしまうことになるため、既に先行していた他事業所の申請状況によっては、受給できない可能性もあります。

今後、追加情報が公表されていくものと思われますが、中小企業の場合、時間外労働の上限規制は2020年4月以降の適用となるため、まずは今年はそのテスト期間として、36協定の内容検討を行うことが望ましいと思われます。