このエントリーでは、キャリアコンサルタント学科試験対策として、文部科学省が導入・推進する「キャリア・パスポート」について解説しています。

キャリア・パスポートは文部科学省の推進する施策

2020年4月から全国の小学校・中学校・高校に「キャリア・パスポート」を導入する方針を決めました。しかし、そもそもこの「キャリア・パスポート」について、よく知らないキャリコン受験生も多いのではないでしょうか。

これは、キャリアコンサルタントが厚生労働省の所管する国家資格であり、文部科学省的に必要な、教育基本法や学校教育法、学習指導要領といった文部科学省的な知識があまり盛り込まれていない養成カリキュラム(及び試験)になっていることが原因の一つです。

キャリア・パスポートは「生徒自身が変容や成長を自己評価する」もの

今回、新たに導入されたキャリア・パスポートとは、具体的には何をするものなのでしょうか。

「キャリア・パスポートは、生徒自身が変容や成長を自己評価するもの」(リクルート進学総研)であるとされています。

しかし、これだけではまだわかりにくいですね。もう少し細かくみていきましょう。

キャリア・パスポートの目的と定義

キャリア・パスポートの目的は、児童・生徒に対するものと、教師に対するものに分かれています。

児童生徒に対する目的

小学校から高等学校を通じて,児童生徒にとっては,自らの学習状況やキャリア形成を見通したり,振り返ったりして,自己評価を行うとともに,主体的に学びに向かう力を育み,自己実現につなぐもの。

教師に対する目的

その記述をもとに対話的にかかわることによって,児童生徒の成長を促し,系統的な指導に資するもの。

キャリア・パスポートの定義

目的に続いて、定義です。

児童生徒が,小学校から高等学校までのキャリア教育に関わる諸活動について,特別活動の学級活動及びホームルーム活動を中心として,各教科等と往還し,自らの学習状況やキャリア形成を見通したり振り返ったりしながら,自身の変容や成長を自己評価できるよう工夫されたポートフォリオのことである。

突然出てきたこの「ポートフォリオ」。

FP界隈でのポートフォリオもあれば、就活でのポートフォリオもありますが、ここでの「ポートフォリオ」は教育界のポートフォリオです。

教育界でのポートフォリオとは、児童・生徒の提出物や活動の動画や画像などを、ファイルに保存したものとされます。

キャリア・パスポートには決まった様式が無い

キャリア・パスポートには、決まった様式がありません。あるのはあくまで「例示」された様式であり、そのまま使用するのではないとされています。

文部科学省は「キャリア・パスポート」の様式を例示しているが、これをそのまま使用するのではなく、各地域・学校の実態に応じて柔軟にカスタマイズすることが必要

とは言え、基本となる様式が下記のように示されています。

・各シートはA4判(両面使用可)に統一
・各学年での蓄積は数ページ(5枚以内)

キャリア・パスポートへの取り組み方

このキャリア・パスポートへの取り組み方については、「中・長期的に学びを振り返り、将来を展望する」とされています。

日常のワークシートや日記、手帳や作文などをそのまま蓄積することではない。これらを基礎資料として生徒自らが「キャリア・パスポート」を作成することにより、学年もしくは入学から卒業までの中・長期的な振り返りと、将来への展望や見通しができること。

「日記や手帳、作文等の蓄積を基礎資料として、生徒自らがキャリア・パスポートを作成する」とあります。

例えば、小学校1年生の夏に書いた「わたしのゆめ」と、小学校6年生の夏に書いた「私の将来」を見比べ、自分自身の変化や成長をとらえたり、自分の軸になる何かを見出すような形で取り組むといったところでしょうか。

「キャリア・パスポート」で振り返る3つの視点

キャリア・パスポートで扱う(振り返る)のは、

①教科学習
②教科外活動
③学校外の活動

以上3つの視点とされています。これは学校内の成績にだけにとらわれることなく「学校生活全体及び家庭、地域における学びを含む内容」をしっかりと視覚化することが求められていると考えられます。

教師の対話的な関わり

児童・生徒が「キャリア・パスポート」に取り組むに当たって、教師の関わりは重要とされており、自己有用感の醸成や自己変容の自覚に結び付けられるような対話が重視されています。

管理と引き継ぎ

「キャリア・パスポート」は、原則、学校で管理し、学年間の引き継ぎは教師間で行うことになります。

これは、小学校入学から高校卒業までの記録を学年、校種を越えて引き継ぎ、学びの振り返りや見通しに生かすという特性上、当然のことながらセンシティブな個人情報を含むためです。

➡ジョブ・カードの管理は原則個人で行うこととの相違に注意!

まとめ

いかがだったでしょうか。

小中高と、12年に渡って自らの成長を記録していくことは、例えば高校生の進路選択や大学生の就職活動にも大きく役立つのではないでしょうか。

現場の教師の方の負担が増えるとの話も聞こえてきますが、前向きな取り組みとしてキャリアコンサルタントが支援できる方法も考えていけるとよいですね。

引用は全てリクルート進学総研によります。