このエントリーでは、キャリアコンサルタント学科試験対策として「中年期の発達課題」とその研究者を取り上げています。

中年期の発達課題と研究者が頻出論点になる理由

中年期の発達課題とその研究者は、キャリアコンサルタント学科試験においても、面接試験においても頻出かつ重要なテーマです。

その理由は、現在の日本が抱えている問題の多くが、この中年期の発達課題と密接に関係しているからです。

例えばリストラの対象になるのは、40歳以上であることが多く、この時期に仕事を失うことは、心身や経済面に大きなダメージを受けます。

また中年期において、家庭を持っていないことや仕事を持っていないことが、社会的にどう影響するか。

特に日本社会においては、「世間体」という社会的価値観が大きな影響力を持っており、この時期の職業選択行動と併せた理解が重要になるんですね。

中年期の発達課題と研究者

中年期の発達課題論点で、頻出の研究者とその重要論点を取り上げてみます。

レヴィンソン

まずは一時期は毎回出題されていた、頻出論点の筆頭と言えるレヴィンソン。

「人生半ばの過渡期」「人生最大の過渡期」「中年の危機」

レヴィンソンは、40~45歳を「人生半ばの過渡期」と捉え、この期間を「人生最大の過渡期」としています。

この時期は、自己の内部だけでなく、外界との関係における「若さと老い」「破壊と創造」「男らしさと女らしさ」「愛着と分離」という葛藤が生じる危機期であるとして、特に「中年の危機」と表現しました。

また、肉体や生活環境の大きな変化を経験し、過去が守り切れない恐怖感の中で真の自己との折り合いをつける時期でもあります。

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30代までに比べると、特に体力的な衰えを痛感する時期であり、これまではできたことができなくなっていく、また後進に追い抜かれていくようなことも増えていきます。

こういった、誰もが直面する「老い」と向き合う時期として、中年期を非常に重視した研究者です。

ハヴィガースト

ハヴィガーストの中年期の発達課題は下記のとおりです。

ハヴィガーストの中年期の発達課題

・大人としての市民的社会的責任の達成
・大人の余暇活動を充実する
・一定の経済的生活水準の確立と維持
・十代の子どもたちが、信頼できる幸福な大人になれるよう援助する
・自分と自分の配偶者をひとりの人間として結びつける
・中年期の生理的変化を理解し、これに適応する
・老年の両親への適応

発達課題の達成・未達成の影響

なお、ハヴィガーストは、発達課題について下記のように述べています。

「発達課題とは、人生のそれぞれの時期に生ずる課題で、それを達成すればその人は幸福になり、次の発達段階の課題の達成も容易になるが、失敗した場合はその人は不幸になり、 社会から承認されず、次の発達段階の課題を成し遂げるのも困難となる課題」

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特に「自分と自分の配偶者をひとりの人間として結びつける」という発達課題について、例えば、独身の人の方が昇進が遅いといった企業もまだありますし、「社会から承認されない」という不安は、現代の日本でも大きく影響しているように思います。

エリクソン

エリクソンの中年期は成年期(40歳~65歳)と少々長く設定されていますが、その発達課題は、生殖・世代性VS停滞。

つまり、子どもを産み、育てることで得られる経験です。

発達課題の達成・未達成の影響

ハヴィガーストと同じく、エリクソンも、発達課題が未達成であることを、非常にシビアに捉えており、下記のように述べています。

その年齢に対応する発達課題が達成されなかった場合、それぞれの段階の発達課題を達成できず、危機を乗り越えることに失敗すると、その経験が様々な心の障害の原因となる可能性 や、「人」として十分に発達できない可能性がある」

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個人的なことを言えば、私は子どもがいませんので、まだ人として十分に発達していないということに…余計なお世話ですね。

ユング

ユングの場合、男性という前提がありますが、「個性化の過程」「人生の正午」を提唱しました。

「個性化の過程」と「人生の正午」

男性は、40歳までは、色々なものを犠牲にしながら、社会的成功を目指し突き進んでいくが、40歳前後で「人生の正午」を迎え、今のまま、未来が永遠に続かないことに気づく。そして、40歳以降は、今まで犠牲にしてきたものを、もう一度取り戻していく(個性化の過程)ことが必要。

シャイン

最後はシャイン。

シャインは35~45歳を「キャリア中期の危機」とし、この時期に直面する一般的な問題と特定の課題を下記のように示しています。

キャリア中期の危機における「一般的な課題」と「特定の課題」

一般的な課題
1. 自分のキャリアの再評価を行い、現状維持か、キャリアを変えるかを決める
2. 自分のキャリアの抱負を、中年の転機の諸側面と対比させて評価する
3. 自分の生活全体において、仕事及び自分のキャリアがどれほど重要であるべきかを決める
4. 他者の助言者になりたいという、自分自身の欲求を満たす

特定の課題
1. 自分のキャリア・アンカーを知り、評価する
2. 現在を受け入れるか、別の未来を選ぶか明確な選択を行う
3. 行った選択をめぐって家族との新たな調整を達成する

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実は、シャインとスーパーの主張には、真逆と言っていいほどの大きな隔たりがあります。

こういった研究者ごとの違いを知っておくことで、『問題文に沿った解答』ができるようになります。

中年期の危機は面接ロールプレイ試験でも重要

2級技能検定試験の面接試験では、この時期に転職しようかどうか迷って相談に来る設定のクライエント役が多いですね。

これは「キャリア中期の危機」を、受験生がキャリアコンサルタントとして、どう捉えているかを確認する意味合いがあるのかもしれません。

試験のときだけ覚えて、後は使わないのは余りにもったいない。

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