キャリアコンサルタント学科試験には、難問というか、珍問・奇問の類がそこそこ出題されます。

こういった問題は、基本的に2度は出題されないと思いますが、私は毎度毎度没問やら疑義問、過去問そのまんま出題といった不適切な出題を欠かさない、このキャリアコンサルタント学科試験の試験委員を一切信用していないので、解説しておきたいと思います。

第9回学科試験問21選択肢3キャリ魂太郎の詳細解説

今回は第9回学科試験問21選択肢3です。

就業規則等で有期契約労働者の契約更新に上限年齢を設けている場合でも、新たに有期契約労働者を採用する際に年齢の上限を設けることは、法令により禁止されている。

出典:第9回国家資格キャリアコンサルタント学科試験

この問題、パッと見て出題の意図が把握できた方は、かなりハイレベルです。

なぜならば、有期雇用契約者に「定年」の概念は本来そぐわないものとされるので、何を言ってるの?となるんですよね。

無期雇用転換制度もあるので、今後は増える可能性もあるわけですが、結構ピンポイントな規定になるかな。

と言っても少々分かりにくいので、ケースで考えてみましょう。

ケース1

労働者A 4/1時点で64歳。誕生日は10/1。
B社 就業規則に「有期労働契約社員の定年は65歳に達した月の末日」と定めている。

この労働者Aが、4/1からB社に1年間の雇用期間を定めた労働契約で採用された場合、9/30(「年齢計算ニ関スル法律」により、年齢は誕生日の前日午前0時に加算)で定年となるならば、4/1に合意した労働契約に違反することになります。

そのため、「就業規則を上回る個別労働契約は就業規則よりも優先される」ことになり、就業規則上の定年はこの場合法的効果が発生しません。

つまり、元々の契約満了日である3/31までの雇用義務が発生することとなります。

就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

出典:労働契約法第12条

この反対解釈として「就業規則に定める基準を上回る労働条件を定めた労働契約は、その部分については有効」と考えると早いですね。

ケース2

労働者A 4/1時点で64歳。誕生日は10/1。
B社 就業規則に「有期労働契約社員の定年は65歳に達した月の末日」と定めている。

この労働者Aが4/1からB社に1年間の雇用期間を定めた契約で採用された場合、就業規則の文言の効果はケース1のように否定されるわけですから、翌年4/1以降(Aの誕生日は到来しており、65歳となっている)の更新は一律行わない旨の規定として効果が発生することは考えられなくはありません。

ただ、ケース1と同じく、Aとの労働契約自体は本来の就業規則よりも上回る待遇(半年間雇用期間が延長されている)のため、有効となります。

なので、期間の定めのない労働者と同じように、有期雇用労働者に定年の定めを行った場合には、結局は個別の労働契約が上回ることになります。

ケース3

労働者A 4/1時点で64歳。誕生日は10/1。
B社 就業規則に「有期労働契約社員の定年は65歳とし、65歳以上に達した日以後、契約更新は行わない」と定めている。

この労働者Aが4/1からB社に1年間の雇用期間を定めた契約で採用された場合、就業規則の文言の効果は有効となり、雇止め=定年と考えてよいケースです。

ケース4

労働者A 4/1時点で64歳。誕生日は10/1。入社は1年前の4/1で、今回は更新となる。
B社 就業規則に「定年は65歳に達した月の末日」と定めている。

この労働者がB社から4/1時点で「更新は就業規則上、65歳定年の定めがあるためAさんの雇用契約は9/30までになります」と告げられた場合。

これは「就業規則の周知」などの問題です。

きちんと「期間雇用契約労働者であっても、65歳定年の定めは有効である」旨が周知されていれば、「労働条件の変更は労使の合意により可能」であるため、問題が発生しません。

この場合にトラブルになるとすれば、就業規則の周知が足りないという、別問題が原因です。

採用の際の年齢の上限設定は原則禁止

これまでの解説が前提で、後段を解説していきます。

元々「採用の際の年齢の上限」を設けることは、原則禁止されています。

しかし、雇用対策法施行規則 第1条の3 第1項により、下記のように例外が定められています。

「定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」

出典:雇用対策法施行規則 第1条の3 第1項

この定めにより、「定年年齢を上限とする『期間の定めのない労働者』の募集・採用の際の年齢上限設定」はOKとなります。

繰り返しますね。

「期間の定めのない労働契約」については、「(就業規則に定める)定年年齢を上限として年齢制限をすることが認められている」わけです。

そこで本問は、これを前提として

「では、『期間の定めのある』労働者(=有期契約労働者)用の就業規則がある会社で、有期契約労働者を新規に採用する場合に、その『有期契約労働者が適用される就業規則(例:有期労働契約者就業規則)に定める定年年齢を上限とする募集・採用』は可能か否か」

と出題してきたわけですね。

そして、有期労働契約者の場合、定年年齢を上限とする募集・採用はできないので、本肢は正しい選択肢となります。

問題のややこしさも相まって、初見では???となってしまう問題ですね。

採用時の年齢制限の原則と例外、と言う意味では、今後も出題可能性は十分考えられる論点なんですけど、ちょっと出題の仕方が分かりづらいかな。

例外は少し細かいのですが、下記サイトなどでざっくりとでもいいので確認をしておいてくださいね。
仕事ナビ

本問は、高年齢者雇用安定法とは関係ありません。

本問につき、複数の方から「高年齢者雇用安定法9条との関係が分かりません」とのご質問を頂いております。

私はそのような指導をしておりませんので、あなた方は、私ではなく、まずあなた方を指導した講師に、その根拠を確認してください。

私は、本問について、「高年齢者雇用安定法9条」は一切関係ないものと考えております。

一応理由をご説明しておきますと、

1.高年齢者雇用安定法9条は、基本的に「65歳未満の定年を定めている」場合に限られ、単に「定年」としている本問とは無関係。
2.そもそも「有期雇用労働者」には、本エントリーで説明したように、「定年」の概念はそぐわず、高年齢者雇用安定法自体が適用されないケースもある(継続が一般的に予定されている場合を除く)。

3.出題の意図は本エントリーにて解説のとおり、明らかに「雇用対策法(施行細則)」の知識である。

以上です。

しっかりと「条文にあたって」解けば、高年齢者雇用安定法第9条に基づくような理解には絶対にならないはずです。

キャリアの専門家を目指すのであれば、時間の許す限り「根拠法令の条文」に当たってください。

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