このエントリーでは、第15回国家資格キャリアコンサルタント試験から適用される出題範囲(以下、「新試験範囲」)と、第14回試験以前の出題範囲(以下、「旧試験範囲」)の考え方について、解説をしています。

新試験範囲における重要なカウンセリング理論は10項目

新試験範囲では、ハッキリと下記の10項目のカウンセリング・アプローチ及びグループを活用したアプローチが明記されています。

・来談者中心アプローチ
・精神分析的カウンセリング
・論理療法
・行動療法
・ゲシュタルト療法
・交流分析
・包括的・折衷的アプローチ
・家族療法・実存療法
・アサーション 等

今後は、この10項目にグループを活用したアプローチの各項目を加えたものが「カウンセリング理論」分野としては、重要になるものと考えられます。

新試験範囲から「認知行動アプローチ」が削除された。

その逆に、下記の画像を見て頂ければお分かりのように、旧試験範囲では「認知行動アプローチ」の言葉がありました。

(出典:キャリアコンサルタントの試験範囲(旧))

(出典:キャリアコンサルタント試験の試験科目及びその範囲並びにその細目)

しかし、このように新試験範囲におけるカウンセリングに関する理論では

・来談者中心アプローチ
・精神分析的カウンセリング
・論理療法
・行動療法
・ゲシュタルト療法
・交流分析
・包括的・折衷的アプローチ
・家族療法・実存療法
・アサーション 等

といった、具体的なアプローチ、療法の名称が列記されているにもかかわらず、「認知行動的アプローチ」の文言が見当たりません。

旧試験範囲では、来談者中心アプローチと並んで記載されていた認知行動アプローチが、新試験範囲ではわざわざ削除されています。

この点をどう考えるべきでしょうか。

森田療法・内観療法は元々旧試験範囲には記載されていなかった

森田療法や内観療法も、頻出とは言いませんが、時折出題されていました。

また、一度だけとはいえ、解決志向短期療法が出題されたこともあります。

これは、旧試験範囲では、「来談者中心療法や認知行動アプローチ等の代表的なカウンセリング理論の概要」と記載されており、「等」とあることから、多くのカウンセリング理論が出題されてきたのだと考えられます。

新試験範囲でも最後に「等」は付いているのですが、その前に10項目のアプローチ・療法等の名称が記載されており、出題する側としてもこれらの「取り上げられた項目」を無視して、「取り上げられていない項目」を出題するには、多少気おくれがするのではないでしょうか。

カウンセリング理論で優先して勉強すべきは10項目+過去問

カウンセリング理論として、優先して勉強すべきは、やはり下記の10項目とグループ・アプローチです。

・来談者中心アプローチ
・精神分析的カウンセリング
・論理療法
・行動療法
・ゲシュタルト療法
・交流分析
・包括的・折衷的アプローチ
・家族療法・実存療法
・アサーション

その上で、他のアプローチ・療法に関しては、過去問に出題されているポイントを押さえる。

これが、効率のよい学習法だと考えられます。

認知行動アプローチを削除した意味は…?

試験的には、こういった学習方針・方法が最善ということになりますが、ハッキリ言えば認知行動アプローチ(療法)を削除するというのは、悪い意味で驚きを隠せません。

というのも、今現在で言えば、欧米を中心にもっとも「エビデンス」、つまり根拠がある療法は認知行動療法であり、その根拠に基づいて実績を残し続けているからです(ちなみに諸富祥彦先生によれば、「来談者中心アプローチ」は、アメリカでは「効果のある療法リスト」から削除されていることが述べられています)。

認知や行動は、精神分析とは異なり、現在利用可能な研究技術によって観察できるため、研究することができる。伴って、膨大な数の調査研究が行われてきた。

イギリスやアメリカでは、うつ病と不安障害の治療ガイドラインで第一選択肢になっている。

統合失調症に対する認知行動療法は、アメリカ精神医学会の治療ガイドラインでも推奨されており、英国国立医療技術評価機構(NICE)は、すべての患者に推奨されるとしている。

世界保健機関のトラウマ後のケアに関するガイドラインは、抗うつ薬より優先して「トラウマに焦点化した認知行動療法」やEMDRを推奨している。

(引用:Wikipedia認知行動療法

このように、大きな効果が認められており、支持されている認知行動療法を削除した意図は不明ですが、対人援助技法として、認知行動療法を取り上げない傾向になっていくのであれば、いずれ、キャリアコンサルタント業界の大きな損失になるように思います。

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