資格で理想のライフスタイルを実現する、キャリ魂塾のキャリ魂太郎です。


このエントリーでは、高齢期の知能発達と心理学的適応について、出題可能性のある論点から解説しています。

高齢者は記憶力が衰えている、は間違っている?

学科試験の勉強について言えば、50代以上の方から多いのが「年齢のこともあって、覚えられない」というお悩みですね。

実際、私もいつの頃からか、物覚えが悪くなり、講義でパーソンズの名前が出てこなかったときは、そのまま舌を噛んで死のうかと思ったこともあるほどです。

先週も、レヴィンソンの名前が1分ほど思い出せなかったわけですが、まあ、それを嘆いても仕方ありません。

崩されても崩されても塚を作る。

アリのように。

それが、生涯学習ではないでしょうか。

ちがうか。

それはさておき、問題を解きましょう。

学校での勉強はインプットから入りますが、資格試験の勉強はアウトプットから入ります。

資格試験勉強で一番優先されるのは、「効率」だからです。

問題

高齢期の心理学的適応について、正しいと考えられるものはいくつあるか。

1.ソーシャルコンボイを維持または補償できるかどうかは、適応を左右する要因の一つである。
2.適応が不安定になる要因の一つとして、高齢期になると流動性知能や結晶性知能が著しく低下することが挙げられる。
3.自身のこれからを考えさせること(未来志向)が、自身の過去を回想させることよりも有効とされる。
4.以前の高い活動性や社会的関係から、退職後はいかに速やかに離脱できるかによって適応が左右される。

1.1つ
2.2つ
3.3つ
4.全て正しい

解説:50歳以上の受験生の心理と行動パターン

協議会又はJCDAから試験委員に「第4回と同等以上の難易度レベルで試験を作ってほしい」という要望が、仮にあった場合、こういったレベルの出題が考えられます。

内容的にも、高齢期以降の発達・適応ということで、キャリアコンサルタントならば押さえておかなければならない知識の一つでもあり、受験生からのクレームに対しても強気になれます。

そして、試験委員が作問を考える場合、おそらく選択肢の順番にもこだわります。

年齢的ボリュームゾーンとして大きい50歳以上の受験生の心理と行動パターンを考えたとき、知らない「カタカナ」言葉には滅法弱いため、選択肢1でビビらせ、選択肢2で絶望させることが可能です。

ソーシャルコンボイ?は?流動性知能?知らんがな…結晶性知能…テキストに載ってないって…でも高齢期に能力低下はするだろうから、2は正解っぽい‥けど著しいとか言ったら高齢者の社会参画が…これあかんやつやん…

そんな混乱状態なので、次に読む選択肢3が正しく見えてきます。

そして、1は知らないけど多分2か3が正しいんだろうなと思いつつ、選択肢4にたどり着く。

そうすると、これはテキストには載っていなかったけれど、なんとなく違うだろう。

そう考えて、2か3で迷ったら3をマークしようとするわけですが、ここで、この問題が「いくつあるか」という「個数問題」であったことをすっかり忘れていたことに気づきます。

そうなるともう分からない。

なのでとりあえず次の問題に移動。

こんな感じの行動をとる方が少なくないのではないでしょうか。

そして、3は引っかけの選択肢です。

何でもかんでも未来志向がいいとは限りません。

これは、クラムのメンタリングでも述べられている考え方ですね。

つまり、過去を回想することで、遂行体験などの自己評価ができ、自己効力感が高まるわけですから、ここは「過去志向」でいいのです。

よって、選択肢3は正解。

なお、自身の過去に関する回想は、ライフレビューやレミニッセンスと呼ばれ、これまでの人生を整理し、未解決の過去の葛藤に決着をつけ、人生を改めて意味づける働きがあるとされており、有効性が高いアプローチです。

そして選択肢1、ソーシャルコンボイとは、地域社会のひとりひとりが高齢者を支援するという考え方です。(コンボイとは護衛艦の意味)

ここでは、高齢者が体験する孤独から守るためのソーシャルコンボイが機能することが重要ということで正解肢となります。

選択肢4は、「離脱理論」と言われます。この反対の考え方として「活動理論」もあるため、正しいと言い切ることはできません。

そして、選択肢2です。

流動性知能と結晶性知能の発達モデル

これは、どこの養成講習団体のテキストにも載っていないはずですし、出題可能性も極めて低いのですが、非常に大事です。

そして、冒頭のお悩みへの答でもあります。

まず流動性知能と結晶性知能の2つを理解しましょう。

結晶性知能:生涯を通じた経験により獲得される能力や学校で学んだことを活用する能力。具体例として、語彙力、社会的知識等がある。
流動性知能:神経学的・生理学的機能の下で決定される能力であり、情報処理の速さと正確さを表す。具体例として、記号を数字に置き換える等

そして、シャイエ(Schaie)は、知能の発達に関する研究を行った結果、あることを突き止めました。

それは

「知能のほとんどの側面において、緩やかな低下が始まるのは60代前半からであり、ハッキリとした低下が示されるのは80代を過ぎてからである」

ということです。

また、

「言語能力は60代まで上昇変化がみられ、その後の低下も80代前半までは緩やかである」

と結論付けました。

そう、あなたがどう考えていようが、実感していようが、「高齢期に入っても、80歳代までほとんどの能力はあまり低下しない」のです。

だから、「覚えられない」なんてことはないのです。

「経験」の落とし穴がここにあります。

あなたの「経験」は「エビデンス」がなく、「他の人と共通する」とは限らないんですね。

だから面接試験でも、あなたの「経験」に基づいたアプローチは多分評価されないはずです。

それはさておき、覚えられないのならば、それは多分、「やり方」が合わないんですね。

「やり方に原因を求める」ことは「学習成果を高めるための解釈」でもあります。

このように、一問一答タイプの問題集では出来ない、多肢選択式問題ならではの学習もあります。

一問一答タイプはあくまで、確認、サブ教材として、メインは多肢選択式問題集を使うようにして下さい。

そして、キャリコン学科試験は常識で解ける問題も多数出題されますが、「自分の常識」(つまりリソース)とは異なる知識はしっかりと身に付けるようにして下さいね。