私が受講したキャリアコンサルタント養成講座は「社会人経験3年以上」という受講要件が設定されていました。

この受講要件がない養成講習もあるようです。

私は、基本的に「キャリアコンサルティング(カウンセリング)」に、「経験は不要」と考えているので、この「社会人経験3年以上」という受講要件が設定されていない養成講習があること、また撤廃されたケースもあることは、非常に嬉しく思います。

キャリアコンサルティングに『経験が不要』な理由

キャリアコンサルティングには、「経験は不要」と考えられています。

例えば、キャリアコンサルティングは「独占業務」ではありませんよね。

なぜ、「キャリアコンサルティング」は独占業務にならなかったのでしょうか。

結論から言えば、「誰でもできる」からです。

キャリアの専門家が行うもの「だけ」が「キャリアコンサルティング」ではありません。

自虐的に言っているのではなく、現在の「傾聴ベース」のカウンセリング的支援は、「誰でもできる」のです。

キャリアコンサルタントとは「クライエント自身のリソースを、いかに役立てるか」という仕事

原則論で言えば、キャリアコンサルタントとは「あなたの経験」をクライエントに伝える仕事、ではなく、「クライエント自身のリソースを、いかに役立てるか」という仕事です。

これは、その基本姿勢であるカウンセリングも同じですね。

心理職としては、唯一の国家資格である公認心理師も、カウンセリングを独占業務とはしていません。

また、経営コンサルタントの国家資格としては、中小企業診断士が挙げられますが、中小企業診断士も経営コンサルティングを独占業務にしていません。

社会保険労務士の3号業務として、人事労務に関する相談業務がありますが、こちらも独占業務ではありません。

その他、社会福祉士や精神保健福祉士も独占業務を持っていません。

カウンセリング・コンサルティングは、その問題が複雑多岐であること、また時代とともに課題・問題も変わるため、国家が資格制度を作って統制・独占するにはそぐわない面もあります。

キャリアコンサルティングは「誰でもできる」

キャリアコンサルティングに必要なのは「クライエントのリソースを信じる」ことであり、「クライエントのリソースを引き出す」ことです。

これは「専門家に丸投げ」する姿勢とは、相反するものです。

だからこそ、丸投げ制度である「独占業務」にはならないのです。

「独占業務」の本質とは

「キャリアコンサルティングをキャリアコンサルタントの独占業務に」と考えている人がいたとすれば、それは「独占業務」という制度が、本質的に「丸投げ」という「依存関係」であることを理解されていないことになります。

「独占業務」とは、既に述べたように、本質的に「支援者の知識と経験」に依存する制度です。

簡単に言うと「自分ではできないから、出来る人がやったほうが正確だし速いし、労力がかからない」という「丸投げ」が、「独占業務」の本質です。

だから、税務における税理士、裁判における弁護士のように、多くは「依存的関係」つまり「丸投げ」になってしまいます。

「丸投げ」になるからこそ、豊富な知識と経験といった、高度な専門性が要求されるわけです。

それは「自律・自立」とは最も遠い関係性ですよね。

「オウム返し」は「経験が不要なアプローチ」の代表

誤解を招くことも多いと思うので、もう少し、掘り下げておきますね。

なぜ、誰でもできるのか。

逆説的に言えば、それこそ「経験が不要」だからです。

面談に際して、自分の経験を交えず、「オウム返しだけで良い」と指導されるケースがあることは、あなたもご存じでしょう。

これが1つの「在り方」として許されるわけですし、そしてこの「オウム返し」技法が、アプローチとして非常に大きな効果があるケースもあるのは事実なんですね。

オウム返し技法とは、そもそも「支援者個人の経験」を必要とする技法ではないのです。

「支援者の経験」は極めて限定的なモデルでしかない

また、「支援者の経験」という個別具体的な経験に基づくアドバイスが役に立つ場面は、非常に限られています。

大手電機メーカーの人事部経験が、小規模零細企業の採用担当者への支援に役立つか。

役立つとは「限りません」よね。

そもそも、個々の経験はそれぞれが特別でオンリーワンなものなのです。

キャリアコンサルタントに必要な姿勢と能力

私自身は、キャリアコンサルタントに必要なのは

1.「学び続ける姿勢」
2.「調べる能力」
3.「コミュニケーション能力」

であり、この3つは、ある意味「経験」とは逆のことすらあるものです。

経験不足を恐れずに、チャレンジしよう。

あなたが仮に高卒であっても、例えば大学キャリアセンターのキャリアコンサルタントになるのに、本来は何も問題はありません(個々の大学がどう考えているかという問題は生じますが…)。

大学キャリアセンターのキャリアコンサルタントであっても、VR面接にどう対応すればいいか、ちゃんと答えられないケースも珍しくありません。

クライエントの立場となる、学生もそうでしょう。

30年前の新卒採用の話を経験談とされるより、VR面接、オンライン面接のそれぞれの注意点を指導して貰える方が役立ちますよね。

時代とともに、新卒採用に際しての面接方法も変わります。

この場合「大学キャリアセンターという『職場』で『今』求められている知識・経験は、大卒かどうかという「学業経験(学歴)」に全く関係ない」ということです。

実際問題として、「必要とされる知識・経験」は流動的なんです。

大雑把な「社会人経験3年」の経験など、キャリアコンサルタントとしての能力と何も関係がありません。