資格で理想のライフスタイルを実現する、キャリ魂塾のキャリ魂太郎です。
このエントリーでは、キャリアコンサルタント業界における「主訴」という言葉の定義について、考察してみたいと思います。
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「主訴」とは「特定」したり「引き出そう」とするもの?
先日、@muraken_carrerさんによる、下記のツイートを目にしました。
講座のロープレ、「やっぱり何かぎこちないな〜」と思っていたんだけど、原因がわかった。
たぶん、主訴の特定を急ぐあまり、傾聴ではなく「主訴を引き出すためのヒアリング活動」になっているんだ。
これは前職での仕事の進め方が影響していると思う。どうやって改善するべきか…#キャリコン
— muraken(キャリコン学科試験30日合格チャレンジ実施中) (@muraken_carrer) October 9, 2019
このツイートを拝見したとき、「主訴の特定」や「引き出す」という言葉への違和感がありました。
なぜなら、私が学んできた心理支援の世界では、一般論として「主訴」は「特定」したり、そもそも「引き出そう」と働きかけるようなものではないからです。
※嫌々や渋々など、自発的意思ではなく面談に来た場合などは別です。
改めて「主訴」について考える
取り急ぎ、私の手元にある4冊の辞典を調べました。
「カウンセリング辞典」(國分康孝編 誠信書房)や「心理学辞典 新版」(誠信書房)には、「主訴」という言葉の説明は記載されていません。
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「ヒルガードの心理学 第16版」(金剛出版)の用語解説の項目にも取り上げられていません。
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「産業カウンセリング辞典」(川島書店)にもありません(こちらは渡辺三枝子先生と木村周先生も参画されています)。
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日本産業カウンセラー協会の「主訴」の説明
私は、実務経験で産業カウンセラー試験を受験(最後の実務経験受験年度です)し、合格したため、産業カウンセラー養成講習を受けていません。
そのため講師の方を存じておらず、当時のテキストに頼るほかありませんが、私が産業カウンセラー試験を受験した当時の「産業カウンセリング 産業カウンセラー養成講座テキスト 改訂第5版」では、主訴は下記のように述べられています。
問題の多くは主訴として面接初期に述べられるが、クライエントがカウンセリングを受けたいと思う理由でもある。
(引用:「産業カウンセリング 産業カウンセラー養成講座テキスト 改訂第5版」P46 日本産業カウンセラー協会発行)
「公認心理師必携テキスト」の「主訴」の説明
また、公認心理師試験を受験する際に愛用した、「公認心理師必携テキスト」では、下記の記載があります。
また、初回面接で尋ねる内容として
(中略)
以下に挙げるものは一般的な初回面接で標準的に尋ねる内容といえる。主訴:クライエントの来談理由のこと。カウンセリングを継続する中で、主訴が多様に変化する場合もあり、その変化に応じてアセスメントも柔軟に変容する。
(中略)
支援者として客観的立場からバイアスをかけずに、クライエントの有する主訴やその変化を十分に聴きとり、観察することが求められる。
(引用:「公認心理師必携テキスト」P299 学研プラス)
「標準的に尋ねる内容」ですから、「主訴を引き出すためのヒアリング活動」という@muraken_carrerさんの言葉は、「引き出す」というところに多少違和感がありますが、そこを除けば、別に問題があるようには感じません。
そもそも「キャリアコンサルティング理論と実際」(木村周 雇用問題研究会)でも述べられているように、「キャリアコンサルティング(カウンセリング)は構造化すべき」なので、多少はヒアリング的になる部分も否定されるものではありません(多少は、ですよ)。
養成講習団体での指導例
私が受講した旧キャリアコンサルタント養成講習では「主訴という言葉は医療用語であるとして、(キャリアコンサルティング用語ではないので)教えていない養成講習もあるため、(旧標準キャリアコンサルタント試験では)使わないように」というような指導がされていました。
しかし、今日この「主訴」という言葉がキャリアコンサルタント業界でも広く使われていることはご存じの通りです。
そして、その意味するところが違う。
このような現状があるにもかかわらず、国家資格試験でその定義の定まっていない単語が当然のように使われている。
これも、大きな問題であると感じます。
「主訴」の捉え方の違いがキャリアコンサルタント業界を象徴している
いかがでしょうか。
だから、キャリアコンサルティング協議会は「主訴」という言葉を使わず「相談者が相談したかったこと」としか言わないのです。
「主訴」の意味するところが養成講習団体によって違うし、何より教えていなくてもそれは仕方がないからです。
JCDAも本来はそうなるはずだったと聞いています。
が、そうはならなかった。
そこに何があったのか、窺い知る術はありませんが、少なくともJCDAが使っている「主訴」という言葉の定義は、CDA養成講習受講生以外が思っている「主訴」ではない可能性が極めて高いこと、また、キャリアコンサルタント同士で話すとき「主訴」という言葉が意味することが違っていることは勿論、その「主訴」という言葉が、キャリアコンサルタント業界以外の心理業界でも、共通するものではないこと。
こういった点には、くれぐれも気を付けて頂きたいと思います。
そして、まさにこういった「言葉一つとっても解釈・定義が違う」ことが、「キャリアコンサルタント」というものを分かりにくくしている象徴になっているように思います。
(キャリアコンサルタント業界では、CDA資格者の講師の方が比較的多いこともあり、こういった養成講習団体を横断するような問題があまり語られないのかなと思ったりもします。)
おまけ:キャリ魂塾での「主訴」の捉え方
キャリ魂塾では、主訴を「相談者が相談したかったこと」という観点から3つに分けています。
それは
1.来談当初に語られた問題(協議会面接試験では、これは当然に語られます)
2.感情を伴って強く表れた事柄
3.特定のキーワードを伴って表された事柄
そういう意味では「主訴」という言葉=「相談者が相談したかったこと」として、マルチに対応しているかもしれませんね(と自画自賛笑)。