このエントリーでは、キャリアコンサルティング協議会の実施するキャリアコンサルタント実技試験を受験される方のために、「ラポールの構築」に使用される原則や技法を解説しています。

あなたは、「ラポールの構築法」を正しく理解していますか?

キャリアコンサルタント論述模擬試験や、面接ロールプレイ試験の口頭試問において、「どのようにラポールを構築するか」を知っていることは、非常に大切なポイントであり、面談(セッション)におけるクライエントとの関係の基盤になる重要な概念です。

この機会に、ぜひ押さえておいてくださいね。

ラポールとは?

まず、ラポールとは何を指すのか、Wikipediaで確認しておきます。

ラポール (rapport) とは臨床心理学の用語で、セラピストとクライエントとの間の心的状態を表す。もとは、オーストリアの精神科医フランツ・アントン・メスメルが「動物磁気」に感応したクライエントとの間に生じた関係を表現するために用いた語である。その後、セラピストとクライエントの間に、相互を信頼し合い、安心して自由に振る舞ったり感情の交流を行える関係が成立している状態を表す語として用いられるようになった。カウンセリングや心理療法をどのような立場から行う場合であっても、ラポールは共通した基本的な前提条件として重視されている。

(引用:Wikipedia

特に、論述試験や口頭試問で重要なのは、

「セラピストとクライエントとの間に、相互を信頼し合い、安心して自由にふるまったり感情の交流を行える関係が成立している状態を表す語」

こちらの意味になります。

ラポール構築の方法とは?

このラポールはどうやって構築するのか、「キャリアコンサルティング理論と実際」から引用します。

◦話し手に安心感を持ってもらい、心を開いて相談してもらうために、聴き手にはカウンセラーの基本的態度(積極的に聴く態度)が求められる

◦来談者中心アプローチの提唱者であるロジャース(Rogers.C.R.)は、カウンセリングの基本的態度として、次の3つを示している

① 純粋性(自己一致)
聴き手自身が心理的に安定していて、ありのままの自分を受け入れていること。防衛的になったり、虚勢的にならず、率直な気持ちと態度で話し手に向き合えていること

② 受容的態度
批判や非難の目を向けることなく、受容的な態度で話し手に接すること。話し手をひとりの人間として大切に思いやること

③ 共感的理解
話し手がどのように感じているか、考えているかを、できる限り正確に知ろうとすること。カウンセラーが理解したことを相手に伝えること、表面的に同調や同感するのではなく、話し手の「ものの見方・考え方」にそって理解しようとすること

(出典:木村周『キャリア・コンサルティング 理論と実際』雇用問題研究会2010年39頁以下、209頁)

いわゆる、ロジャーズ派(ロジャリアン)では、有名な「自己一致」「受容」「共感」の3原則が「ラポールを構築するための態度」として必要とされています。

その他、例えばマイクロカウンセリングでは、この3原則に加えて、「かかわり行動」及び「基本的傾聴の連鎖」によって、ラポールが構築できるとも言われています。

かかわり行動

◦かかわり行動とは、聴き手の積極的な傾聴の姿勢を話し手に示す手法の総称で、具体的には以下の4つです。
① 相手に視線を合わせる
② 身体言語(身振り手振りや姿勢など)に配慮する
③ 声の質(大きさ、トーン、スピードなど)に配慮する
④ 言語的追跡をする(相手が話そうとする話題を安易に変えたりせずについて行く)

基本的傾聴の連鎖

基本的傾聴の連鎖とは、かかわり行動を土台にして、話を深めて行く手法の総称で、以下の4つです。
① 閉じられた質問、開かれた質問
② クライエント観察技法
③ はげまし、いいかえ、要約
④ 感情の反映
これらは、連鎖的に使うことで効果を発揮するとされます。

要約や深堀りは、「単体」ではラポール構築に結びつかない

非常に大切なポイントですが、「要約」や「(閉じられた・開かれた)質問」、「いいかえ」「はげまし」「感情の反映」は、これら単体ではラポール構築に繋がりません。

ベースとして、「かかわり行動」がしっかりと行われている。その上で、連鎖的に使うことで効果を発揮するものである。

これを必ず押さえておくようお願いします。

土台も連鎖も無いのに、「今のお話を要約すると~」と「要約」したところで、ラポールは生まれません(よっぽど素晴らしい要約なら、「こんなに私の話を簡潔に要約してくれるなんて、凄い!」となるかもしれませんが…)。

また、単なる深堀りも同じです。

例えば

CL「今の仕事にやりがいを感じないんです」

CC「あなたにとって、やりがいって何ですか?」

CL「え、そりゃあ、人の役に立っているって実感できることですかね」

CC「今の仕事では人の役に立っているって実感できない?」

CL「ええ、まあ」

CC「どうして実感できないんですか?」

閉じていようが開いていようが、こんな質問をいくらしたところで、ラポールは生まれませんよね。

ラポールを生むのは、受容・共感がメイン

ラポールは、まずしっかりとした「受容」と「共感」で生まれていくものです(自己一致は難しいので、養成講習修了段階では気にしなくて問題ありません)。

また、見つめ過ぎず、外しすぎず、適度に相手と視線を交わしながら、相手とペースを合わせ、息を合わせていく中で、「話しやすいな」という気持ちを醸成し、その上で「連鎖的に」基本的傾聴技法を行うことで、構築していくものです。

ラポールは、単発的な「要約」や「いいかえ」で生まれるものではありません。

実技試験をキャリアコンサルティング協議会で受験される方は、この点をくれぐれもご注意ください。