クライエントに嫌われることと、ラポールは別問題

受験生同士でのロールプレイ練習は非常に重要ですが、クライエント感情のフィードバックは特に必要ありません。

なぜなら「クライエント役」は試験の評価に関係せず、またその感情もそのクライエント固有のものであることが多いからです。

これが例えば、誰の目にもキツい言い方であったなど、態度評価に影響するほどであれば多少は考慮していいと思いますが、そうでなければ、クライエント役が感じた感情のフィードバックは無意味です。

何より、専門家としてのラポール構築に必要な「態度(姿勢)」とは、「好き嫌い」とは全く関係がなく、「例えクライエントの意向に沿わないことであっても、伝えるべきは伝える」ものです。

嫌われることを恐れていては、専門家として必要なアプローチはできません。

例えば、リファーがその代表例です。

リファーとは、クライエントによっては「サジを投げられてしまった」「見捨てられた」と捉えられることだってあるからです。

しかし、それは「しなければならない」ことですよね。

なので、キャリ魂塾では、「クライエントに好かれようとするな、嫌われることを恐れるな、ラポールと好き嫌いは別問題」とお伝えしています。

同一事例で、嫌われることを恐れているアプローチと、嫌われることを恐れないアプローチを比較してみましょう。

独立したいけれど、配偶者に反対されている加藤さんの事例1

加藤さん加藤さん

今、研修講師として働いているのですが、独立するなら契約すると言ってくれている企業があり、独立したいと思っています。
しかし、妻が反対していて…どうしたらよいのか悩んでいます。せっかくのチャンスなのに…


土本さん土本さん

せっかくのチャンスなのに、反対されてお悩みなんですね。


加藤さん加藤さん

はい。妻は今妊娠中で、出産を控えているので、独立なんてやめて欲しいって。


土本さん土本さん

やめて欲しいって言われている…


加藤さん加藤さん

はい…


土本さん土本さん

どうしてやめて欲しいんでしょう?


加藤さん加藤さん

それは今、妊娠中で出産を控えているからって言いましたよね。


土本さん土本さん

あ、はい。大変失礼いたしました。では出産後に独立することにしてみるとどうでしょう?


加藤さん加藤さん

出産後だと半年以上先になってしまうし、今度は「子どもが小さいのに独立なんて」って言われそうだし。


土本さん土本さん

(…じゃあどうしたって独立なんてできないじゃない…)そんな風に言われてしまうって考えてしまうんですね。


加藤さん加藤さん

はい…


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

これが、受験生が陥りがちな「質問することがなくなってしまう」パターンです。

独立したいけれど、配偶者に反対されている加藤さんの事例2

加藤さん加藤さん

今、研修講師として働いているのですが、独立するなら契約すると言ってくれている企業があり、独立したいと思っています。
しかし、妻が反対していて…どうしたらよいのか悩んでいます。せっかくのチャンスなのに…


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

ふむふむ。せっかくのチャンスとのことですが、今回契約してくれる企業は、幾らで契約すると言っているんですか?


加藤さん加藤さん

新入社員研修で、20万円です。


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

20万円なんですね。それは1人当たり?1回?


加藤さん加藤さん

1回です。


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

1回…新入社員研修って、年に何回もあるんですか?


加藤さん加藤さん

いえ、まあ年に1回とか…ただ営業すれば他にも契約が取れると思うので…


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

他にも契約が取れそうなんですね。見込みで言うと、何社くらい契約が取れそうですか?


加藤さん加藤さん

2~3社ですかね…


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

2~3社なんですね。単価と回数はどのくらいを見積もられていますか?


加藤さん加藤さん

新入社員研修やマネージャー研修なので、やはり年に1回とかで、単価も同じく20万とかですかね…


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

そうすると、仮に見込み通り4社契約しても、年間80万円の売上ということですね。乳飲み子を抱えて家族3人、加藤さんが奥様の立場だったら、なんて言いますか?


加藤さん加藤さん

まあ…そりゃ反対しますね…


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

では逆に、どんな風に言われたら、賛成してもいいかなって思いますか?


加藤さん加藤さん

うーん…安定して収入が得られて、今よりも収入がアップして…そして私が育児に参加できるくらいの余裕があることが分かれば、賛成してもいいかな…


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

確かに、それって今よりハッピーな感じですよね。どう動いたら、そのイメージが実現できそうですか?

相談者のことを一番知っているのは、相談者

一見、土本さんのキャリアコンサルティングは、「オウム返し」を使って、「話を聴いている」ように感じますし、私のキャリアコンサルティングに比べて「寄り添っている」ように見えるかもしれません。

しかし、一度言ったことを理解していないと思われる応答や、デモデモダッテにイラっとしてしまったり、打つ手がないのでその場しのぎの応答をしたりしています。

土本さんのキャリアコンサルティングに対して、私のキャリアコンサルティングは、何を問いかけているのか。

「配偶者が何を不安に感じ、その不安はどうすれば払拭できるか」です。

私は加藤さんではありませんし、ましてや加藤さんの配偶者でもありません。

加藤さんの配偶者のことを、一番知ってるのは、加藤さんか、配偶者ご本人です。

だから「加藤さんに『何がクリアできれば夫婦が合意に至るか』を考えてもらう」。つまり「内省」が生じるようにアプローチをしています。

キャリアコンサルティングで大切な「ラポール構築」とは「好かれること」ではない。

キャリアコンサルティングで大切な「ラポール構築」とは、「好かれること・嫌われないようにすること」ではありません。

限られた時間の中で、「専門家として必要なアプローチを行う」ことが大切なんですね。