このエントリーでは、キャリアコンサルタント面接試験の重要なポイントとして、「嫌われる勇気」を持つことを解説しています。

「嫌われること」を恐れて、「深堀り」できない受験生

「質問するな」と指導する、一部の流派や養成団体は論外です。

適切な質問には、クライエントの内省を深め、自己理解等が明確になる効果があるからです。

また、「伝え返し(オウム返し)」も、ほとんどが「質問」と同義であり、「質問してはいけない」という指導・流派は今やマイナーです。

そんなマイナー流派の教義を強制するような指導者は、このキャリアコンサルタント業界では、今や化石と言っても過言ではありません。

しかし、根本的なところで、キャリコン受験生の多くが「質問」できていません。

それは、クライエントに嫌われること、ひいては「クライエントの機嫌を損ねること」を恐れ、「当たり障りのない応答」に終始しているからです。

クライエントの相談事例

桜木さん桜木さん

旦那の転勤と、私の正社員登用の話が同時にあって、旦那について行こうか、単身赴任してもらおうか、迷って相談にきました。

キャリコン受験生の応答例

土本さん土本さん

旦那さんに相談されましたか?


桜木さん桜木さん

ええ、旦那は「君の好きにすればいいよ」って


土本さん土本さん

旦那さんは「君の好きにすればいいよ」って言ったんですね。


桜木さん桜木さん

はい。だからどうしたらいいのかなって


土本さん土本さん

そう言われてしまうと、どうしたらいいのか迷いますよね


桜木さん桜木さん

ええ。だから相談に来たんです。


土本さん土本さん

そうですよね…💦


いかがでしょうか。

これがよくある「堂々巡り」になってしまうパターンです。

深堀りをしない、つまり「踏み込まない」から、当たり障りのない応答に終始し、貴重な時間をムダにしてしまう。

その根底には「余計なことを言って、クライエントの機嫌を損ねたくない、嫌われたくない」があります。

キャリ魂太郎の応答例

キャリ魂太郎キャリ魂太郎

旦那さんに相談されましたか?


桜木さん桜木さん

ええ、旦那は「君の好きにすればいいよ」って


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

旦那さんは「君の好きにすればいいよ」って言ったんですね。


桜木さん桜木さん

はい。だからどうしたらいいのかなって


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

旦那さんからそう言われて、あなたはどう感じたんですか?


桜木さん桜木さん

うーん、なんか肝心なところはいつも、私に丸投げしてくるんですよ。上手くいかなかったときに責任を取りたくないのかなって。


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

責任を取りたくない…その責任って「何に対する」責任なんですか?


桜木さん桜木さん

え…?何に対する責任って…


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

桜木さんと旦那さんのことは、私にはわかりません。だからその「責任」が「何に対する」責任なのか、私にはわかりません。教えていただけますか?


桜木さん桜木さん

うーん…夫婦の関係が上手くいかなくなったとき、その責任…?


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

夫婦関係がうまくいかなくなったとき、その責任を取りたくないと?


桜木さん桜木さん

うーん…はい。だから丸投げせずに、旦那にもちゃんと考えてほしい。


キャリ魂太郎キャリ魂太郎

ちゃんと考えてほしい。夫婦関係を考えるということは、旦那さんも答えや方向性を出しますよね。どんな答えや方向性だったら、桜木さんは嬉しいんですか?


桜木さん桜木さん

………一緒についてきて欲しいって、言ってほしい。

(出典:「ブラックジャック」 ©手塚治虫 秋田書店)

「嫌われる勇気」を持ったブラックジャックになる。

いかがでしょうか。

受験生の応答例では、当たり障りなく伝え返しに終始した結果、堂々巡りになってしまい、結局のところ、ラポールが壊れています(イラつかれている)。

それに対して、私の応答では、「クライエントが『自分自身の気持ち』や『責任』という言葉をきっかけに、自分でも気づかなかった『配偶者に言って欲しい言葉』への気づき」が生じています。

どうしてその違いが生じるのでしょうか。

それは、私が「クライエントのためになるのであれば、嫌われることを恐れず踏み込む」からです。

言い方を変えれば「クライエントは、好き嫌いとは別に、私の問いかけをしっかりと考えてくれる」という「私からクライエントへのラポール」です。

ラポールを強固にすることと、好かれること、嫌われないことには、特に相関はありません。

例えば、ブラックジャックは、こういいます。

「治療費は、3,000万円です」

(出典:「ブラックジャック」 ©手塚治虫 秋田書店)

こんなことを言えば、嫌われるのは当たり前。彼だってそんなことは分かっています。

だけど問いかける。

老いた母のために、3,000万円を出す覚悟があるのかを。

(出典:「ブラックジャック」 ©手塚治虫 秋田書店)

ブラックジャックは、患者に好かれようなんて考えていません。

患者のために、自らの提供しうる「最高の治療」をするのは当たり前。

その最高の治療に値するお金を払う覚悟があるか、それを問いかけているだけです。

何より「クライエントの機嫌を損ねること、嫌われることを恐れ、当たり障りのない応答に終始してしまう」、これが専門家としてふさわしい態度と言えますか?

さて、あなたは、クライエントに

1.とってもいい人だし、信頼しているけど、いざというときはちょっと無理かな…

2.腹立つことも言われるし、ぶっちゃけ嫌いだけど、いざというときはあの人しかいない。

どちらに思われたいですか?

私はもちろん、2です。