国家資格キャリアコンサルタント面接試験では、面接試験当日、キャリアコンサルティング技能検定試験では、受験票に記載される形で、クライエント役の情報が伝えられます。

このエントリーでは、その際、何を中心に考える(仮説を立てる)かを、実際に出題された相談者事例を改題して、検討しています。

なお、このエントリーはキャリアコンサルティング協議会を指定試験機関として行われるキャリアコンサルタント面接試験について、考察しており、日本キャリア開発協会を指定試験機関とするキャリアコンサルタント試験については対象外となります。ご了承ください。

第22回2級キャリコン技能検定面接試験出題事例(改題)

2級キャリコン技能検定試験の場合、受験票に記載される形で、受験生にクライエント情報(事例)が配布されます。

2級事例は、キャリアコンサルティング協議会のサイトにも過去問としてアップされていますが、毎回概ね下記のようなことが記載されています。

クライエント事例情報

氏名:山田花子さん
性別:女性
年齢:35歳  
家族構成:夫(37歳)と同居。
学歴:4年制大学経済学部卒業
職歴:大学卒業後、大手商社に就職、営業部で4年、その後本社経営管理部で9年。
相談内容:同じ会社に勤務している夫が転勤することになった。夫婦で相談したところ、単身赴任などの案もあったが、二人とも子どもが欲しいと思っていることもあり、自分が退職し、転勤先で一緒に暮らすことで話がついた。
そのことを上司に伝えたところ、「将来の幹部候補として評価してきたのに勿体ない。専業主婦を否定はしないが、本当にしっかりと考えたのか。」と再考を促された。
夫婦では話は決まったと思っていたが、上司の言葉を改めて考えると、今後どうすべきなのか相談したい。

クライエント事例情報から見る検討事項

1.性別
➡性別による固定観念・価値観が、クライエントの思考や行動に影響をしていないか検討する。

2.年齢
➡年齢ごとの発達課題が達成されているか検討する。
特に、配偶者の有無や子どもの有無はクライエントの思考や行動、価値観に大きく影響していることが多い。

配偶者の有無
➡親密性VS孤独

子どもの有無
➡世代性VS停滞

3.家族
➡年齢と同様、配偶者の有無を確認する。併せて両親や子どもなど、家族の状況や、今回の問題に対する家族の意向について検討する。
例:「配偶者の方は上司が遺留したことについて、どのようにお考えでしょうか」等の確認を行う。

4.学歴
➡若年者(ざっくりとでOK。概ね40歳前後まで)の場合、卒業した大学や学部が、キャリア形成に影響しているか(関連しているか)検討する。
例:「なぜ経済学部を志望したのか」

5.職歴
➡転職歴がある場合は、転職前も含めた確認を行い、転職歴がない場合は入社後のキャリアを検討する。
例:「なぜ経営管理部門に異動したのか、そこでどんなキャリアを積んできたのか」

6.相談内容
➡矛盾や整合性を欠く点がないかは、チェックする。(読み込むというのと、矛盾の確認は別の問題)

➡技能検定試験なら読み込む。なぜ「事前送付」なのかを考えれば、読み込んで検討するのは当然。

国家試験であれば相談内容自体はそれほど読み込む必要はない。必ず「話してくれる」ものだし、「知らないフリ」をしなければならないとされているため。
➡読み込みすぎると「話を聴いて知った」のか、「事例を読んで知った」のか混乱することがある。

7.その他
➡自分が知らない言葉、または知っているけれど異なる意味・定義である可能性がある言葉を確認する。
例:「幹部候補とはどういった評価(キャリアルート)なのか」

今回、例に挙げただけでも、4つの質問が事前に想定できます(訊くかどうかはべつとして)。

もうお分かりかと思いますが、受験生によくある「話すことが無くなってしまう」というお悩みは、「事前検討が不足している」ことになります(オウム返しだけなど、論外です)。

キャリアコンサルティング協議会の面接試験出題事例の特徴

キャリアコンサルティング協議会(以下、協議会)の面接試験出題事例では、「違和感がある」相談者が多いことが特徴です。

違和感とは、「一見すると通常の相談のように思えるが、何かがおかしい」ということです。

この違和感に「事例を読んだ時点」で気づくことができるかどうか。

例えば

「子どもが小学校に上がったので、正社員の仕事を探しているが、どう探せばいいか分からない」

どうですか?

一見よくあるこの相談を、「おかしい」と思うことができるか。

それがキャリ魂塾が何度も何度も繰り返し訴え続けている、「聴く力」=「読む力」です。

「正社員の仕事をお探しなんですね、ハローワークインターネットサービスをご覧になられたことはありますか?」

こんな言葉、実務では何の意味もありません。

だって、「子どもが小学校に上がる」ことと「正社員の仕事を探す」ことは、本来何も関係が無いことだから。

子どもが小学校に上がった➡正社員として働く

これが正しい因果関係なら、M字カーブ問題など起こりません。

なぜ、「パート」ではないのか?
なぜ、「専業主婦」ではなく、働こうと思ったのか?

例えば、「子どもが小学校に上がったことで、『想像以上に学費がかかる』ことに気が付き、将来が不安になった」から、「パートで働くよりも、『収入』を求めているので、『正社員』の仕事を探している」のかもしれません。

では、「時給3,000円で3時間のパート」と「時給換算すれば1,000円の正社員」どちらがいいですか?

時給3,000円のスキルを、この相談者が持っていない、なんて「決めつけて」いませんか?

ちなみにこの「子どもが~」という事例の相談者は、「英検準1級合格」というスキルを持っていました。

主訴と見立ては基本的に異なる

このように主訴(≒相談者が相談したいこと)と、見立て(キャリアコンサルタントとして考える相談者の問題点)は、基本的には異なります。

それは、相談者は「自己理解」「仕事理解」「周囲から得られる支援」「様々な情報」が、不足しているから。

改めて、今回の山田さんのケース。

「子どもが欲しいから一緒に暮らす」という言葉がクライエントから出ています。

よく考えてみて下さい。

「子ども」って「欲しいと思ったら授かる」のでしょうか。

今は同居つまり、一緒に暮らしている。

今、一緒に暮らしているのに、授からなかった。

じゃあ「転勤する夫について一緒に暮らせば、子どもを授かる」のか?

これが「違和感」です。

言い換えれば「因果関係がないことを結びつけている(整合性がない)」んですね。

今、現に一緒に暮らしているのに、子どもがいないのはなぜ?

それが分からない。

分からないことは「訊く」。

結婚して何年くらい?

子どもはこれまで欲しいと思っていたのか?

そう、訊きにくいですよね。だから「ラポール」が必要なんです。

私の「見立て」の1つは「子どもができない可能性について検討していないのに、配偶者と一緒に暮らし続ければ(転勤についていけば)、子どもが授かるものと思い込んでいる」です(見立てはいくつも立てられます)。

もちろん、試験機関である協議会や、問題を作った方がこの点を考えているかどうかは分かりません。

しかし、この点に関しては、明らかに「違和感」があります。

子どもとは、「夫婦が『一緒に暮らすことで』授かるものではない」からです。

なのになぜ、『夫についていく』➡『子どもができる』になるのか?

全く因果関係がない。

今だって一緒に暮らしていますよ?

もちろん、「仕事が忙しくてお互いに、子どもが欲しいという気持ちになれなかった」。

そんな答えが返って来る可能性もあります。

だけど、それはあくまで「可能性」です。

だから「思い込まずに」「訊く」(もちろん、『訊き方』には細心の注意を払う必要があります)。

「子どもができるかできないか」は、山田さんが今回の悩みについて考えるとき、非常に大きな要素のはず。

これは非常に繊細な問題ですので、ラポールが壊れそうで訊けないと考えるのもアリです。

その場合、「関係構築が不十分」だったとして、「改善点」に挙げておき、口頭試問で「今後の支援」と併せて伝えればよいわけですね。

協議会面接試験で、クライエント事例情報が配布されたら

相談者情報を読み、ざっくりとした「発達課題の未達成」や「性別・年齢」「コミュニケーション不足」などによる、イラショナルビリーフが生じている可能性がないかを考える。

相談内容を読み、相談のきっかけとなった出来事(イベント:転機)が、そのイラショナルビリーフと紐づいている可能性を検討する。

これが「理論に基づいて仮説を立てる」ということです。

15分を「話を聴くだけ」にしない

キャリ魂塾では、15分を「とにかくクライエントの話を聴く」とは指導しません。

それは、面接試験は、面談が終わった後、シームレスに口頭試問に移行するからです。

相談者役との面談が終わった後、主訴や見立てを考えていたのでは、時間的な余裕がありません。

つまり「事例情報を読んで考えた仮説を検証する」のが面接の15分であり、検証結果を伝えるのが口頭試問であると考えて下さい。

これは、キャリコン業界では軽視されがちですが、実務的には心理面接は「仮説と検証」が重視されていることにも合致します。

違和感を掴むことを重視するのが、キャリ魂太郎スタイル。

↓でそのアプローチを解説しています。

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