キャリアコンサルティングに「経験」は不要

これは別に私の顧問先でもクライエントでもない、友人のお話で、了解済みのネタ。

私の友人の勤務先企業の社長が、コロナに感染しました。

通常なら、一刻も早いご回復を祈念するところなのですが…

この1年半、緊急事態宣言下であろうがなかろうが、深夜まで飲み歩く。

自分の誕生日会を歌舞伎町で開催する。

30人前後の職場ですから、実質強制参加です。

この社長、昭和脳全開で従業員やその家族の健康や心情も考えない、バカ社長なのです。

もちろん、テレワークもしていません。

営業は「ヒラメ筋」を見せろってなもんです。
(これは、「足で稼げ」というネタですね(ヒラメ筋」は足の筋肉)。)

なので社内の誰もが、内心では「いい薬」だと思っているとのこと。

しかし、「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」と言います。

もし、この社長が軽症で回復したらどうでしょう。

「コロナはやっぱり風邪みたいなもんだ。大げさに気にするな!気合で治る!」

と言い出しかねません。

なので、「一刻も早いご回復」は祈れないということになります。

「愚者は経験に学ぶ」とは「経験に学ぶな」という意味

大事なことなのでもう一度。

「愚者は経験に学んでしまう」。

もしこの社長が軽症で済んだら、「自分が軽症だったのだから他人もそうだろう」と「自らの経験」に学んでしまうのではないでしょうか。

「愚者は経験に学ぶ」とは、「愚者は経験に学ぶ」という「文字通り」の意味ではありません。

「経験に学んではいけない」と言っているのです。

キャリアコンサルタントになぜ、人事経験が不要なのか。

もっと言えば、なぜ社会人経験も不要なのか。

例えば、一部上場10万人企業の人事部で学んだ経験と、ワンマン社長で30人規模の人事部で学んだ経験。

同じ「人事部所属」でも、全く異なるはずです。

規模が同じでも、上場企業と非上場企業では、また違うはずです。

極論を言えば、一社一社、また時代で、そして地域で、一人一人違う。

その個人の「経験」は固有のものであり、他人にそのまま当てはめてはいけない。

「自分の経験を他人に当てはめるな」という戒めが、「愚者は経験に学ぶ」という言葉の本当の意味です。

それは「あなただけ」「そのときにだけ」役立ったことであり、汎用性はないことの方が多いから。

だから「老害」に限らず「迷惑な人」とは、「自分の経験(価値観)を押し付ける人」なんです。

自分には悲しい経験が、クライエントにとって幸せであるケース

あなたが仮に、うつ病を乗り越えた経験があったとしても、その経験が「クライエント」に役立つとは限らない。

あなたが「つらい」と感じた「経験」は、クライエントにとっては「救い」や「幸せ」かもしれません。

例えば、配偶者の死。

死んだのが、DV配偶者だったら?

その他にも「子どもを愛していない親なんていませんよ」なんて言葉が、クライエントをこれ以上ないほど傷つけてしまうこともある。

経験が、あなたの目を曇らせるフィルターに、そしてクライエントとのラポールを損なう原因になるかもしれません。

中高年男性受験生の最初のハードルは「経験を捨てる」

特に、社会人経験の豊富な中高年男性受験生。

彼らの多くがこの「経験」=「準拠枠」にこだわり、クライエントの気持ちよりも「自分の経験に基づいた『自分のやりたいこと』」を優先します。

だから「気持ちが聴けていない」として、点数が伸びない。

もしかすると、養成校で「あなたの経験を活かせる資格」と言われたかもしれません。

それは、営業トークか、この資格の本質を理解していないか、どちらかです。

あなたが「経験(という価値観)を捨てる」ことが、合格に、そして実務に必要な最初のハードルです。