このエントリーでは、キャリアコンサルタント面接試験対策として、ただ「オウム返し」するのではなく、「言葉を『観察』して」「伝え返し」をする方法をお伝えします。
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単純なオウム返しはラポールを壊す。
一部のキャリアコンサルタント養成講習では、「オウム返し」をまるで魔法のテクニックのように、そして金科玉条のように指導しますが、現実問題として単純な「オウム返し」はラポールを壊します。
特に、クライエントの話したことを全て復唱するようなオウム返しは、実務では使い物になりません。
オウム返しがラポールを壊す理由
一部のキャリコン養成講習で学ぶ「オウム返し」が、ラポールを壊す理由は、下記のようなものです。
2.クライエント自身が、「オウム返し」を「テクニック」だと知っている。
いまや、小学生ですら「オウム返し」を知っている。
これは、先週Twitterで話題になった画像です。
小学生でも知っている、「コミュニケーションの『テクニック』」。
それが「オウム返し」です。
あなたが、人間関係を構築したいと思ったとき、「テクニック」を使う人と仲良くなりたいと思うでしょうか。
そんなはずはありませんよね。
「テクニック」ではなく、「本当の自分」を見せて欲しいと思うはずです。
それは、クライエントも同じです。
冗長な「オウム返し」を「要約」又はピンポイントな「伝え返し」にする。
冗長なオウム返しがラポールを壊す例と、要約やピンポイントな「伝え返し」にする例を考えてみました。
私、どうしてもやりたい仕事があるのですが、付き合っている彼はそろそろ結婚したいと考えているようだし、結婚したら家庭に入って専業主婦になって自分の食生活なども含めてサポートして欲しい、と言っています。
彼のことは大好きだし、彼以上に私と話が合う人にも出会ったことがありません。年齢的にも子どものことを考えると、そろそろ答えを出さないといけなくて…収入的には結婚後、専業主婦でもなんとかなるとは思うのですが…子どもの頃からの夢を取るか、彼の希望通り専業主婦になるか…どうしたらいいのか迷っています。
なるほど…どうしてもやりたい仕事があるけれど、付き合っている彼はそろそろ結婚したいと考えているようだし、結婚したら家庭に入って専業主婦になって自分の食生活なども含めてサポートして欲しい、と言われている。
彼のことは大好きだし、彼以上に私と話が合う人にも出会ったことがないと。年齢的にも子どものことを考えると、そろそろ答えを出さないといけないと思われている…収入的には結婚後、専業主婦でもなんとかなるとは思うけれど…子どもの頃からの夢を取るか、彼の希望通り専業主婦になるか…どうしたらいいのか迷って相談に来られたんですね。
はい…(今それを言ったよね…)
😊(「はい」だけじゃなくて、何か言ってよ…💦)
これは極端な例と思われるかもしれませんが、これをしようとしている受験生が少なくありません。
インテーク面接的には「クライエントが相談したかったこと」を確認しているわけですから、一応はOKですが、こんな冗長なオウム返しをこの後も繰り返されるとしたら…
『うんざり』ですよね。
この「うんざり」という状態(感情)こそが、「ラポールが壊れている」状態です。
ラポールを壊さないために、オウム返しは「ピンポイント」で「伝え返す」
ただそのまま相手に繰り返す「オウム返し」は、今や「バレバレ」だし、何より「冗長でうんざりする」ものです。
ご存じのように、ロジャーズはアメリカで非指示療法(後に来談者中心療法)を提唱しました。
渡辺三枝子先生も述べられていますが、いわゆる(当時の)「欧米人はディベート好きで人の話を黙って聴かない人が多い」からこそ、「傾聴」がセンセーショナルな体験だったわけです。
逆に、「日本人はシャイで、自分から積極的に話す人がそれほど多くない」のですから、大切なことは「必要な問いかけ」を行い、「話してもらうこと」になります。
先ほどの例で言えば、こんな感じ。
私、どうしてもやりたい仕事があるのですが、付き合っている彼はそろそろ結婚したいと考えているようだし、結婚したら家庭に入って専業主婦になって自分の食生活なども含めてサポートして欲しい、と言っています。
彼のことは大好きだし、彼以上に私と話が合う人にも出会ったことがありません。年齢的にも子どものことを考えると、そろそろ答えを出さないといけなくて…収入的には結婚後、専業主婦でもなんとかなるとは思うのですが…子どもの頃からの夢を取るか、彼の希望通り専業主婦になるか…どうしたらいいのか迷っています。
なるほど…子どもの頃からの夢があるけれど、大好きな彼との結婚観の相違があり、今後夢を追うか、彼の希望通り専業主婦として彼を支えるか、迷われているということですね?
はい…(うんうん)
確かに、お子さんなど年齢的なことも含め、悩ましい問題ですよね…子どもの頃の夢だったお仕事について、お話して頂いてもよろしいですか?
ええ、子どもの頃から、理学療法士になりたくて、今雇用保険でお金が貰えるようになっていて、学校に通うのにお金が安くて済むんです。夜間コースなら今の仕事とも両立できるし。
理学療法士になりたい夢があるんですね。先ほど、「どうしても」って言われていましたが、何かきっかけがあったんですか?
これが「オウム返し」よりも大切な「要約」と「質問(問いかけ)」のスキルです。
適切な要約は、「伝え返し」とほぼ同義と捉えて問題ありません。
(ついでに言えば、「感情は直後に捉える必要はない」わけですね。)
マルチレベルコミュニケーションに基づく「伝え返し」
例えば、この場合はどうでしょう。
A
『私は』、そんなこと言ってないんです。
B
私は、そんなこと『言ってないんです。』
これが「強弱」によるマルチレベルコミュニケーションです。
字面だけ見れば、どちらも「私はそんなこと言ってない」ですが、「伝え返すポイント」は異なります。
Aに対しては
『私は…』(では、あなた以外の方が言った可能性がある?)
Bに対しては
『言ってはいない…』(けれど、思っている?態度に出ていないか?)
いかがでしょうか。
この後の桜木さんの応答は、この「キャリアコンサルタントが捉えた『伝え返しポイント』」で大きく変わるはずです。
これを単純に
桜木さんは、そんなこと言ってないんですね。
と「平板に」オウム返ししたのでは、何の意味もありません。
この、クライエントから「無意識に発せられた」言葉の強弱(イントネーション)が、マルチレベルコミュニケーションです。
だから、その「強弱」まで、同様に「伝え返す」。
『桜木さんは』、そんなこと言ってないんですね。
桜木さんは、そんなこと『言ってない』んですね。
これによってクライエントは、「自分自身が無意識に発した強弱に気づく」ことができます。
オウム返し(伝え返し)は、この「マルチレベルコミュニケーション」に基づいて行うし、養成講習で間違ったオウム返しを指導される前のあなたは、それができていたはずです。
マルチレベルコミュニケーションについては、下記のエントリーもどうぞ。
単なる「復唱オウム返し」は「クライエントをナメた態度」である
オウム返しを何か「魔法のテクニック」のように、また「金科玉条」のように捉えていたのは、ロジャーズの時代のアメリカのお話です。
そして、当のロジャーズ自身がそれに辟易し、「オウム返しだけで上手く行くという誤解にうんざりだ」と話しているほどです。
また、「非指示療法」が提唱されてから、80年が過ぎようとしていますが、その間、クライエントである市民も、カウンセリングとは何か、どういったことが提供されるのか、学習を続けているわけです。
なのに一部のキャリアコンサルタント養成講習では、80年前の知識を、さも「クライエントは知らないだろう」とばかりに提供する。
しかも、日本人に合ったカスタマイズも考えずに。
これでラポールが生まれるでしょうか。
単なる「復唱オウム返し」が通用するのは、「同じことを勉強したロープレ仲間」だから。
何より、あなた自身がクライエントだったとして、単なる復唱に過ぎない「オウム返し」をされて嬉しいですか?
単なる復唱オウム返し。
それは「クライエントはオウム返し技法なんて知らないだろう」と「ナメた」態度に映ることもある、危険な行為なんです。