このエントリーでは、第21回2級キャリアコンサルティング技能検定の面接ロールプレイ試験において出題された事例(改題)(以下「2級面接事例」)を元に、「何が分かるか」を解説していきます。

2級面接事例(改題)

相談者:山田花子 21 歳 四年制大学在学中(経済学部 3年生)

家族:父親(55歳)、母親(50歳)、妹(18 歳)、家族と離れて下宿している。

相談月:1月

相談したいこと:税理士を目指し、大学と並行して税理士試験受験資格学校にも通っている。2年間で税理士試験に合格することを目標に頑張ってきたが、昨年の試験では 1 科目しか合格できなかった。
既に同級生は就職活動を着々と進めているのに、自分はこの先合格するのか、不安でたまらない。もう、税理士になることを諦めて、就職活動をした方がよいのかと思うが、どうして良いか分からず相談したい。

クライエント役を演じる前に、知っておくと役立つこと

こういった「資格試験受験系」は、基本的には「クライエント役」に知っておいて欲しいことがあります。

当然、キャリコン役が知っておくと役立つことも、言うまでもありません。(知らないふりをして尋ねたりすることもありますが)。

ここでは、私が仮にこの事例を受け取ったら、クライエント役・キャリコン役、どちらを演じるにしても、考えることを列挙してみます。

1.「1科目しか合格できなかった」
➡税理士試験は5科目で合格するが、5科目を一度に受験して合格することは、まずあり得ない。そのため「2年計画」と言っても一度に5科目×2ではなく、山田さんは3科目又は2科目を受験したと考えられる。

なお、税理士試験の合格発表は例年12月中旬のため、1月に不安になって相談に来たという設定自体は十分あり得る。

つまり、今は気が動転している(ショックが大きくて考えられない)可能性が高い。

2.「2年で合格することを目標」
税理士試験合格に掛かる平均年数は、約10年。ぶっちゃけ試験設定があり得ない。税理士受験生が知ったらキレるレベル。

(出典:Markの資格Hack (税理士試験)

こちらに書いてあるように、これでも「科目免除(後述の大学院等)」を含んだ年数であることに注意。

20年くらいかかって合格されている、会計事務所の職員の方も珍しくない。

税理士を2年で合格する目標を立てるのは、毎日10時間×2年を1日も欠かさず勉強に費やせるレベル。最短で5,000時間~。

つまり「大学と並行して2年で合格を目標」という設定が無茶苦茶であり、こういうあり得ない設定はホント勘弁して下さい。

3.「既に同級生は就職活動を着々と進めているのに、自分はこの先合格するのか、不安でたまらない。」
➡1年目で1科目合格した時点で十分凄い。

それはさておき、2年計画が破綻した時点で、クライエントに残された道は概ね5つ。

①5科目合格を目標に勉強する
②大学院を検討する
③国税庁等税務職員を受験する。
④一般企業に就職し、勉強しながら働く
⑤一般企業に就職し、税理士は忘れて働く

税理士になることを諦められないなら、①~④のどれかになる。

なお、税理士は科目合格制であり、一度合格した科目は生涯有効。

4.「税理士になる方法」
➡今さらだが税理士になる方法は、5つ(もしかしたら、まだあるかもしれません)。

①5科目の試験合格
②3科目合格+大学院で科目免除を受ける
③税務署で一定年数勤務する(科目免除or全科目免除)
④公認会計士試験に合格し、会計士補になってから監査法人に就職後、実務経験を積んで公認会計士試験に合格し、税理士登録。
⑤司法試験に合格し、修習を終え、税理士登録。

5.税理士受験を続けるかどうかを考える
➡専業受験生又は大学院に進むなら、親の協力が必要。働きながら取れなくはないが、10年スパンで考える必要がある。

6.税理士事務所(会計事務所)に就職は?
➡税理士事務所への就職を考えるならば、基本的にいつでも募集はあるので、今から焦る必要はない。科目合格しているなら、採用される可能性は極めて高い。

なので、「就職活動をする」=「一般企業に就職する」と考えられる(税理士事務所なら、引く手数多なので焦る必要がない)

科目合格している時点で、税理士事務所にならいつでも就職できる可能性が高いのに、なぜ「税理士&税理士事務所への就職を諦めて)就職活動をしようと考えているのか。これは気になりますね…

7.キャリコン役が言ってはいけない言葉
①「税理士になりたいなら、公認会計士になれば、税理士登録できますよ」
②「なぜ2年なんて甘い計画を立てたんですか?」
③「平均的な税理士試験の合格年数は10年ですよ、資格学校に騙されたんですね…お辛いですよね…」
④「経済学部なら、普通は経済学の試験がある公認会計士を受験するのでは?」
➡全て余計なお世話である。

その他、「去年は、簿財(簿記論・財務諸表論)の2科目を受けられたんですか?」「どうして酒税を受けなかったんですか?」等と訊いてはいけない。
➡クライエント役は「あくまでお芝居をしている素人であり、税理士試験には詳しくない」から。

これは、「自分が経験した職種・業界」のクライエント役に当たった受験生にありがちなので、くれぐれも注意すること。

繰り返すが、「クライエント役は、ただお芝居をしているだけの素人」である。余計な深掘りは時間のムダであることがほとんど。「クライエント『役』に寄り添う」のであれば、「クライエント役が聴いて欲しいことを訊く」という考え方も重要。

7.山田さんの問題は?
➡端的に言えば、「キャリアビジョン」を失った状態なので、再度キャリアビジョンを構築する必要がある。

ざっとこんな感じでしょうか。

数多の士業と交流し、様々な業界をクライアントに持ち、個人・法人を問わず、20年間の相談経験がある。

だから、キャリ魂塾の面接試験ロールプレイ対策講座は、「クライエント役のリアリティ」が違い、実務に役立つロープレができるんです☺

第15回面接試験対策の決定版!キャリ魂塾面接ロールプレイ試験対策講座受付中