このエントリーでは、「共感」ではなく「共感『的理解』」について、解説をしています。

「共感」ではなく「共感『的理解』」ロジャーズの「カウンセリングの基本的態度」

キャリアコンサルタント面接ロールプレイ試験やキャリアコンサルタント養成講習では、カール・ロジャーズの「カウンセリングの基本的態度」として、3つの態度が重要とされます。

カール・ロジャーズの3原則

① 純粋性(自己一致)
聴き手自身が心理的に安定していて、ありのままの自分を受け入れていること。防衛的に
なったり、虚勢的にならず、率直な気持ちと態度で話し手に向き合えていること

② 受容的態度
批判や非難の目を向けることなく、受容的な態度で話し手に接すること。話し手をひとり
の人間として大切に思いやること

③ 共感的理解
話し手がどのように感じているか、考えているかを、できる限り正確に知ろうとすること。
カウンセラーが理解したことを相手に伝えること、表面的に同調や同感するのではなく、話し手の「ものの見方・考え方」にそって理解しようとすること。

(出典:木村周『キャリア・コンサルティング 理論と実際』木村周 雇用問題研究会)

この③で示されているように「共感」ではなく「共感『的理解』」であることが重要です。

体験はオンリーワンであり、「共感」はできない。

ちょっとキモいことを言いますが、初恋の子の夢を見たんですよ。

いい夢を見ると、いつもは「続きを見よう」と、時間の許す限り眠り続ける怠惰な私ですが、今回は夢の中で「この辺りでいいや」と思って、目を覚ましました。

長く見続けて変な展開になるのが嫌だったんですね。

そんなわけで、目覚めもとてもいい感じだったので、ちょっと「初恋」つながりで、宇多田ヒカルの「初恋」を聴いてみたのですが、しっくりこないんですよ。

「うるさいほど高鳴る胸が
 柄にもなくすくむ足がいま
 静かに頬を伝う涙が
 私に知らせる これが初恋と」

(「初恋」作詞・作曲 宇多田ヒカル)

うーん、そんなドラマチックなもんではない。

もう何十年も会うどころか話すこともない。
そういうさみしさもあるけれど、何かやる気が出る
ほんわかと温かい気分と同時に、切ないというか。
爽やかなのに何か心残りもあるような夢見。

さて、何が言いたいのかと言うと、当然私の恋愛観とか初恋のことではありません。

そんなものは、秒で忘れて下さい。

大切なことは

「宇多田ヒカルの体験している世界」

「私の体験している世界」

は、同じだけど違う。ということです。

当然、「あなたの体験している世界」とも。

なので

「分かる分かる〜初恋って特別だよね!」

と共感されても、1ミリも響かない。

それは確かに「特別」だから。

オンリーワンの体験なんです。

あなたの「初恋」と私の「初恋」が違うように
あなたの「ツラい」と私の「ツラい」も違う。
あなたの「不安」と私の「不安」も違う。

だから、共感はできない。

「あたかも」ですら、感じられないと思うんですよね。

安易に「共感」することは「反感」を生むこともある。

普段のコミュニケーションの場ならともかく、シビアなカウンセリングの場で「共感」なんてムリだし、求められていない。

なのに、なぜ「共感」する(フリをする)のか。

その表面的な「共感」のフリは、「反感」を生むこともあり、かえってマイナスです。

また、「共感」や「共感力」とデフォルメされた言葉が、上辺だけの「分かったフリ」の態度を生み、失笑を買ってさえいるように思います。

「共感」ではなく「共感『的理解』」に努める。

大事なことは「共感『的』に『理解しよう』とする、『在り方(態度)』」。

ですよね。

先に述べた引用を、もう少しかみ砕くなら、

「あなたの体験している現実世界は、私には分からない。
 それは、あなただけが体験している特別なモノだから。
 なので私は、それを出来るだけ正確に知ろうとし、その上で、あなたの悩み・課題に役立つようなことを、一緒に考えていきます」

これが「共感『的』理解」ではないでしょうか。

宇多田ヒカルの歌詞を共感「的に理解」する。

ちなみに、宇多田ヒカルは

「ひとりで生きるより、永遠に傷つきたい
 そう思えなけきゃ楽しくないじゃん」

と歌いました。

あなたは、宇多田ヒカルのこの言葉を共感「的に理解」すると、どう解釈できると思いますか?

その歌に、国木田独歩の

月光をして、 汝の逍遙(しょうよう)を照らさしめ、 山谷の風をして、 ほしいままに汝を吹かしめよ

(出典:国木田独歩著「小春」)

を重ねた意味は?

想像を膨らませて、宇多田ヒカルの想いを共感「的に理解」すれば、どんなキーワードが浮かびますか?

私は、「許されない恋愛」を歌い上げたものだと理解しました。

そう思った後、歌のタイトルを調べたのですが、タイトルは

「誰にも言わない」

なんですよね。

先ほどの歌詞の後に続くのも

「過去から学ぶより君に近づきたい
 今夜のことは誰にも言わない」

という言葉。

国木田独歩の詩も「風に吹かれるまま」と解釈が可能であり、「理性的ではない関係」と重なっていますね。

別に宇多田ヒカル自身が、許されない恋愛をしていると言っているのではありません。

そういう作品や友人の話などで、インスピレーションを得たのかもしれませんし、そもそも私の一方的な解釈(心理学ではなく文章理解の範疇)ですので、間に受けないでくださいね。