資格で理想のライフスタイルを実現する、キャリ魂塾のキャリ魂太郎です。
このエントリーでは、キャリアコンサルタント養成講習では学ばない、「対決」技法について、逐語を基に解説しています。
「対決」技法とは
対決技法は、非常に誤解されていることの多い技法です。
それは「対決」という言葉が、「クライエントに対して反論する」というイメージがあり、それは「受容」というイメージと相反するものと思われているからではないでしょうか。
しかし、実際はそうではありません。
対決的質問:支援者側の意見や提案によって相手の考えや気持ちに介入する意図を持った質問(場合 によっては「○○をしてみませんか?」など、事実上の指示などを含む)。
(出典「新時代のキャリアコンサルティング」労働政策研究研修機構)
このように問いかける力を活用してカウンセリングを進めることは、カウンセリングの主体(主導権)は相談者にあることを明示もしくは暗示することになり、相談者自身が問題や課題に立ち向かうことを支援することにもつながる。
(出典「新時代のキャリアコンサルティング」労働政策研究研修機構)
この説明にもあるように、「対決」とは「問いかける力」であり、「カウンセリングの主体(主導権)が相談者にある」ことに基づく技法なんです。
対決技法を使った応答例
では、実際にどのように対決技法を使うのか、逐語を使ってご紹介します。
黄色のアンダーラインを引いた応答が、「対決」つまり、「問いかけ」になります。
部下が私より仕事ができるので、なんかちょっと居心地が悪いのもあるんですかね。
部下が仕事ができたら、上司は居心地が悪いんですか?
私だったら、ラクだなと思うんですけど。※1
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中略
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部下の方のほうが、経験値が長いんですよね。※2
そうですね。高校卒業で入って、私は大卒なんですけど、向こうは高校卒業で入ってるので、経験値は長いですし、会社の経験値もありますし、総務課総務部の時間も職歴も長いので、私よりよく知ってるんですよね。いろんなこと。
今は肩書は、何と仰られていましたか?
係長です。
係長に昇進するとき、上司の方はなんておっしゃってました。
何か言われました?
そうですね、今までいくつか、最初は人事そして営業っていう形で頑張ってるその成果が認められたんだよっていうふうに言って下さって。
一応総合職で入ってるので、そういったことも考えて、今回の異動だからねっていうふうには言っていただいたんですけど。
そういったことも考えて…
係長の仕事ってなんですかね。
そうですね。
管理ですかね…
実務は、部下の方のほうがよく知ってるわけですよね
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中略
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加藤さんが思う、働きやすい上司ってどんな上司です?
働きやすい上司ですか。
部下のことを支えてくれる、支援、サポートしてくれるような人ですかね…
どうですか?
この半年、支えてきましたか?
そう言われてみれば、支えていないですね…
イメージ的には、蒼天航路の「呂範、はたしてわしは玄徳ほどに公瑾の心を想うていたか」のシーンですね。
部下である周瑜(公瑾)の気持ちを、自分も考えていたはず…
なのにそうではなかった。
外部の人間である劉備(玄徳)の言葉によって、それを気づかされる孫権に、この加藤さんが重なります。
加藤さんも部下のことを考えていたんだけれど、それは「独りよがり」になってしまっていた。
それに気づいて頂くために、「対決」、つまり「問いかけ」が必要だったんです。
※1「私は思う」による抵抗弱化
※2「経験値」という言葉は、CLに合わせたペーシング
「嫌われる」ことを恐れず、「問いかける」
通常、キャリアコンサルタント養成講習で多い指導は、例えばこんな感じです。
CL:部下にバカにされているんです。
CC:部下にバカにされているんですね
CL:はい、つらいです。
CC:それはおつらいですよね…
CL:はい…
CC:…
CL:どうしたらいいでしょうか…
CC:どうしたらいいか、って思われているんですね。
CL:はい…
これが、まぎれもなく「現実の指導」であることが、あなたにはお分かりですよね。
笑い話のような、笑えない現実。
キャリ魂塾メソッドでは、当初から「嫌われることを恐れず、核心を穿て」という言葉を掲載してきました。
「嫌われること」と「ラポール」は関係が無いからです。
また、キャリアコンサルティング協議会特任講師の田中春秋先生は、旧標準レベルキャリアコンサルタントについて、
「感情ばかり言ってちっとも進まない」
(出典:国家検定2級キャリアコンサルティング技能検定 -学科問題解説と実技の視点、考え方-(第二版)特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会)
と批判しました。
そのとおりだと感じます。
口頭試問によくある「話を聴けて良かった」という言葉。
「クライエントは、貴重なお金と時間を、この面接に支払ってくれている」という考えがあれば、「話を聴けて良かった」などという「自分本位」な感想は生まれません。
クライエントの役に立って、初めて「良かった」と言えるからです。
「対決」は「提案」であり、クライエントの内省に繋がる「問いかけ」です。
ぜひマスターして、「クライエントの役に立つ」面接を行って頂きたいなと思います。