このエントリーでは、論述試験の重要なポイントとして、「読む人のことを考えた文章」を作成する、「文章力」について解説しています。

読む人に寄り添う文章=「分かりやすい文章」

読む人とは、論述試験で言えば「採点者」です。

採点者が読んだとき、「分かりやすい」文章を使うことが、「寄り添い」です。

論述試験では、とことん「分かりやすい」文章を書く。

では、どんな文章が「とことん分かりやすい」のか、「暴れ蟹男」そして「津軽海峡冬景色」の2つの例を使ってご説明していきます。

「暴れ蟹男」を分かりやすくする

例えば、ネットで有名なこんな「見出し」。

「暴力ニ男が殺す」

これが、「暴れ蟹男」として、有名な見出しです。

あなたが「週刊誌ライター」なら、この見出しは素晴らしい見出しです。

なぜなら、週刊誌ライターの仕事は、「読者の目を引くこと」つまり「手に取って貰う」こと、その上で「読んで貰う」ことだから。

ですが、

暴れるカニ男が殺した!?

こんな風に、週刊誌のライターが、まず「読者の目を引く」のは、何のためでしょうか?

そう、「自分(の評価)」そして「会社」のためです。

「読者」のため、ではありませんよね。

なので、最初から読者のことを考えて、「暴力ニ男が殺す」を「分かりやすく」していきます。

読点「、」を入れる。

「暴力『、』二男が殺す」

これで、「カニ男」の仕業ではないことが分かりました。

二男を『次男』にする。

「暴力、次男が殺す」

二男➡「次男」にすることで、分かりやすくなりました。

※編集・校正を目的としたものではないので、「次男」は業界的には使わないなど、そういった個別の事情や「日本語として正しいのは~」などのご指摘は、ご容赦下さい)

被害者(対象)を入れる。

「暴力、次男が『父を』殺す」

これで、次男が父親を殺害した事件だということが明らかになりました。

理由・原因を入れる①

暴力を『振るわれ続け』、次男が父を殺す。

これで、「殺人という結果に至った原因」が分かりました。

理由・原因を入れる②

しかし、まだ分からないことがあります。

「誰が誰に暴力を振るっていた」のでしょうか。

「見出し的に」2つのパターンを書いてみました。

A:『父から』暴力を振るわれ続けた『次男』、耐えかね反撃、次男が父を殺す。

B:『次男から』暴力を振るわれ続けた『父』、助けを呼べず…次男が父を殺す。

言葉の補い方で、暴力を振るっていた人物も当然変わります。

論述試験では、このように「可能な限り正確に伝わる文章」を書くことを意識して下さい。

「津軽海峡冬景色」を「分かりやすく書く」

下記の文章は、「津軽海峡冬景色」を「キャリアコンサルタント論述試験答案でよくある書き方」にしたものです。

「私が、上野発の夜行列車を降りたときから、青森駅は雪の中だったのですが、北へ帰る人々はどなたも無口で、なんだか海鳴りだけを聴いているように思っていて、私はひとり連絡船に乗ったのですが、凍えそうなカモメを見たとき、なぜか泣き出してしまい、ついつい「ああ、津軽海峡冬景色」なんて言葉が思い出されたことが心に残っているのですが、そのとき、見てごらん、あれが竜飛岬、北のはずれなんですと、見知らぬ人が指をさしたのですが、見てみると息で窓ガラスが曇るのでよく見えないので、曇りを拭いてみましたが、はるかかすんでみえるだけでしたので、さよならあなた、私は帰ります。」
(参考:「津軽海峡冬景色」)

最後を読むまで、「何が言いたいんだ?」となりますよね。

読む人のことを考えない、つまり「寄り添い」が不十分の方の文章は、とにかく「読みづらい」「何が言いたいのか分からない」ものになります。

でも、こんな「接続詞」でダラダラとつないだ意味不明な論述答案、決して少なくありません。

採点者も「意味の分からないダラダラした文章」を、何枚も何枚も読まされて、疲れています。

そこに採点者に寄り添った、「読みやすい答案」が目に入ったら…?

もちろん、嬉しいですよね。

採点者が、思わず嬉しくなってしまう。

そんな風に、先ほどの文章を書き直したのが下記の①②です。

① 私は、愛する人と別れ、(北海道の)実家に帰ります。
② 私は、とても悲しいです。

先ほどの文章を、論述試験的に捉えたとき、「間違いなく伝えたい」ことは、「原因➡結果」・「感情」この2点です。

これが、読む人(採点者)のことを考えた、「分かりやすく要約した」「箇条書き」の文章です。
※「津軽海峡冬景色」を考察したものではなく、あくまで「論述試験答案の書き方」としてご理解下さい。

キャリアコンサルティング協議会は、論述試験でも面接試験でも、「相談者の相談したいこと」や「キャリアコンサルタントとして考える相談者の問題点」を捉え、そして「今後の支援」ができるかどうかを試験しています。

これが、論述試験でも面接試験でも重要となる「要約」です。

論述試験で求められているのは、少なくとも「芸術的描写」ではありません。

ニーズ、つまり「出題者の気持ち」になって、「出題者が受験生に求めること」を書く。

その際には、採点者(読む人)に可能な限り「分かりやすく」「読みやすく」「伝わりやすく」書く。

これを考えることが、「寄り添い」です。

論述試験や論述模擬試験にチャレンジするときは、ぜひ「寄り添い」を心がけてみて下さいね。