資格で理想のライフスタイルを実現する、キャリ魂塾のキャリ魂太郎です。

このエントリーでは、「SmartHR」の無償化範囲の見直しの影響を考察しています。

SmartHRが従業員30名まで無償化されます。

このツイートの破壊力は甚大です。

これまで、従業員10名以下までは無料だったSmartHRが、従業員30名以下にまで無料範囲を変更したことにより、国内企業の90%前後(調査により異なります)が(一部限定機能版ではあるものの)無料でSmartHRを利用できることになりました。

1号業務社労士事務所への影響

こういった人事労務管理(給与計算含む)サービス(アプリ)の低価格化、無償化が広がることにより、特に1号業務(書類作成)をメインにしていた社労士事務所は、業態転換を迫られることになります。

元々、比較的専門性の低い定型的な書類の作成を一手に担い、時に(といっても割と頻繁ですが)発生する専門的知識が必要なサービスを比較的安価で提供する、という「顧問契約型スタイル」を取っている社労士事務所は少なくありません。

しかし、従業員10名~30名の企業で、事務スタッフがいないという企業はかなり限定されます。

SmartHRが無料なら、事務スタッフにさせてコストダウンを図ろう、という企業は決して少なくはないでしょう。

そうなれば、1号業務をメインにしていた社労士事務所の死活問題となってきます。

とはいえ、いきなり全ての企業がそのようになるはずはありません。

SmartHR以外にも同様のサービスはありますし、従業員が増えれば結局有料になりますから、その際のコストも検討する必要があります。

しかし、いずれこの波は広がっていきます。

先のことを考えれば、社労士事務所の業態転換を後押しすることは言うまでもありません。

社労士事務所の今後

いきなり廃業、となる社労士事務所は流石に少なく、ほとんどの社労士事務所は、

・年金などの個人相談業務への参入
・特定社労士など、労働問題への対応強化
・メンタルヘルス問題への対応強化
・経営コンサルティング業務への参入

などの対応を検討するものと思われます。

なかでも、もっとも多数を占めると想定されるのが「事務所代表である社労士が新たな資格を取り、事務所の対応強化を図る」ことです。

意外と少ない「取れて」「役立つ」国家資格

日本には国家資格と民間資格を合わせれば数千~万という種類の資格がありますが、実は、文系の一般的な社会人が取得可能な『国家資格』に限れば、それほど多くありません。

ざっと、

弁理士
弁護士
税理士
社労士
司法書士
行政書士
公認会計士
FP(技能士)
不動産鑑定士
土地家屋調査士
中小企業診断士
宅地建物取引士
マンション管理士(管理業務主任者)
キャリアコンサルタント

と言ったところです。(海事代理士などもありますが、活用がかなり限定されます)

働きながら取得可能となれば更に限られ、特に社労士が現在の業務に活用する形で取得を検討する場合、極論を言えば、「中小企業診断士」か「キャリアコンサルタント」しかありません。

社労士資格と親和性の高い行政書士資格は、既に取得者が多いこともありますが、何より「書類作成型」の資格である点が将来性の低さに映ってしまいます。

なので、中小企業診断士とキャリアコンサルタントが候補に残るわけですが、中小企業診断士には2つのネックがあります。

1つめが「平均的な合格までの必要時間1200~1500時間」という費やす時間の多さ、そして2つめが「年1回」という試験回数の少なさです。

社労士試験合格&実務経験というアドバンテージがあっても、やはり600時間程度の勉強時間は必要でしょうし、また中小企業診断士は一次試験が8月上旬です。

今から勉強をしても、既に残り10か月、働きながらの勉強では600時間を捻出できるか微妙なところではないでしょうか。

それに対して、キャリアコンサルタント試験は養成講習に通う時間も含めて、200時間程度の勉強時間、そして何よりも年3回の試験回数が魅力的に映ります。

また、試験回数が多いと言うことは、同時に「すぐ名刺に書ける(登録が早い)」ということでもあります。

結果、これまで1号業務メインだった社労士も、多くがキャリアコンサルタント資格を取得することが想定されます。

税理士事務所もキャリアコンサルタント業界に参入する

税理士事務所にもこの流れは大きく影響します。

元々、税理士業務は「前提条件が同じなら、誰がやっても納税額は同じ」でなければおかしいわけですから、社労士業務よりもAI化・機械化に相性が良いわけです。

(むしろ、税理士によって納税額が変わるほうがおかしいですよね)

そして、本職ではないにしろ、毎月の訪問をサービスとして提供している税理士事務所がほとんどです。

更に言えば、税理士事務所には税理士科目合格者やFP技能士も多く、キャリアコンサルティングに当たって有効なファイナンシャルプランニングの提供も期待できます。

年金に特化している社労士事務所があるように、相続対策に特化している税理士事務所があるなど、業務スタイルが似ている社労士と税理士ですから、社労士事務所のキャリアコンサルタント業務参入は、ほとんど同じ流れで「税理士事務所(職員)によるキャリアコンサルタント業務参入」になる可能性が高いでしょう。

相談者(クライエント)はお金を払わない。

この流れが強くなれば、従来キャリアコンサルタントに多かった、「傾聴」スキルを打ち出しての集客は難しくなります。

傾聴スキルは目に見えないし、何よりもセルフキャリアドックを中心とした企業向けキャリアコンサルティングは、「直接サービスを受ける人と費用を負担する人が違う」という構造があります。

そう、企業向けキャリアコンサルティングの場合、お金を払うのはクライエントである従業員ではありません。

経営者です。

この「サービスの受益者と、実際の費用負担者」が異なることは、絶対に忘れてはいけない観点です。

にもかかわらず、キャリアコンサルタント制度(技能士を含む)は、目の前の相談者満足となる「傾聴」スキルを高めることに重点を置きすぎてきたことは否めません。

今後のキャリアコンサルタントのキャリア開発

キャリアコンサルタント(2級技能士を含む)は、本来「職業能力開発にかかる助言と指導」の専門家でありながら、その養成を担う講習団体で重視されてきたキャリアコンサルタント像は「メンタル不全を生じそうな個人への対応」の専門家だったのではないでしょうか。

結果、臨床心理士や産業カウンセラーとの違いについて打ち出しにくく、国家資格化後も後者の役割がメインと考えているキャリアコンサルタントは少なくありません。

しかし、公認心理師(合格者)が既に36000人誕生し、今後も毎年数千人輩出されていくことを考えると、キャリアコンサルタントが「個人のメンタル不全対応」という領域で戦うのは非常に困難になってきます。

また、産業カウンセラー協会は「産業心理師」という商標を既に取得しており、この分野の公認心理師を育成し、担わせるような動きを見せ始めました。

「心理師」という言葉を使えるのは、公認心理師に名称独占されており、「産業心理師」という言葉は公認心理師にしか使えないからです。

このような業界動向を見据えながら、今後、キャリアコンサルタント自身のキャリアビジョン構築を考えるとすれば

・個人心理支援
・個人キャリア開発
・法人支援(環境介入)

をどのように組み合わせるか、検討する必要がでてきます。

キャリアコンサルタント法制定の議論を。

これまでのキャリアコンサルタントは、職業能力開発促進法上に基づく「個人支援」に特化した国家資格者でした。

この個人支援だけでなく、環境介入知識を持つことの必要性は、木村周先生をはじめ、多くのキャリアコンサルタントが訴えており、私もその考えに賛同していることを発信し続けてきたことはご存じの方も多いと思います。

しかし残念ながら、この10年、そして国家資格化されてからの3年、更にこれからのキャリアコンサルタント能力開発体系の議論を見ても、この考えは重視されているようには思えません。

キャリ魂塾は、キャリアコンサルタントを職業能力開発促進法上に規定するのではなく、キャリアコンサルタント法によるものとすること、そして個人及び法人支援を明確化し、キャリア開発にかかる法人支援を法律上も謳うことを提唱していきます。

新世代キャリアコンサルタントとは

最後に、このエントリーを読まれた方にはご理解頂けると思いますが、このエントリーを書くために必要となるリソースは何でしょうか。

・士(サムライ)業界経験(キャリア)
・各資格(業界)横断知識と情報収集スキル
・マーケティングスキル

ですよね。

この3つを掛け合わせたものが、私の「キャリアコンサルタントとしての専門性」です。

傾聴だけではなく、傾聴をベースに、それぞれの有する専門性による支援(法律・心理等多面的支援)ができる「新世代キャリアコンサルタント」をキャリ魂塾は当初からお伝えしてきました。

アドバイスはしないけれど、専門家として得られた情報、そしてそれを分析した結果を提供をすることによって、相談者に今後のキャリアを考えて頂く。

コーチングでも、カウンセリングでもない、相談者のキャリア形成に必要となる情報を提供し、相談に応じるのが「コンサルティング」です。

蛇足ですが、カウンセリング・コンサルティング・コーチングは、それぞれ必要なシーンが違うだけで、流れとしてはもちろん全て必要になります。

例えば、傾聴が必要なスタートアップ、コンサルティングが必要なターム、コーチングが必要なゴールへのステップ、という感じです。

新世代キャリアコンサルタントは、これらを全て担う「在り方」です。