本エントリーでは、面談(キャリアコンサルティング、カウンセリング)における「要約」技法の注意点をお伝えしています。

「要約」の注意点を知っておこう!

最近は、キャリアコンサルタント資格を持った人事の方も多いですし、傾聴を学んでいる方も非常に増えていると感じます。

ただ、勉強しているからこそ、陥ってしまうミスというものもあります。

今回は、傾聴(カウンセリング)における重要な技法のひとつである「要約」について、注意点をお伝えしたいと思います。

要約の本質について知る

あなたは、「要約」をなぜ行うのでしょうか。

「要約」とは、読んで字のごとく、会話や文章における、必「要」な部分を集「約」する行為です。

言い換えると「不必要な部分は省く」行為と言えますよね。

しかし、不必要な部分を省く、これは本当に「相手の気持ちに寄り添った」行為でしょうか。

正しい要約も多用すれば、不快感の元

田村さん田村さん

今度の会議なのですが、ちょっとまだ資料が十分ではなくて…できればきちんとしたものをお出ししたいので、日程の変更をお願いしたいと思うのですが…ただ、もう1週間前だし、他の方の都合も考えるとなかなか言い出しにくくて、ただ、不十分な資料でお出ししても、却って皆様にご迷惑をおかけすることにもなるので、どうすればよいのか悩んでいるのですが…資料はおそらくあと2週間もあれば揃うと思うので、きちんとした資料に基づいて、プレゼンをさせて欲しいのですが…自分としては、不十分でも『完璧を目指すよりもまず終わらせろ』の方が良いのなとか思ったり…

土本さん土本さん

なるほど、あなたの言いたいのは要するに『1週間後の会議でプレゼンするには、資料が不十分だが、不十分でも予定通り行うか、それとも資料を完璧にして、きちんとした形で行うか、どっちがいいか悩んでいる」ということですね。

田村さん田村さん

はい。そうなんです。自分としては与えられたスケジュールの中で、できる限りのものはできていると思うのですが、どうしても年度末などの関係で他部署からの資料の集まりが悪い部分もあるんです。他部署も年度末で忙しいのに、何度もせかすのも心苦しくて…まだ、この企画自体の必要性が他部署の方にご理解頂けていない部分も影響しているとは思うのですが、やはり資料の集まりが悪くて、自分自身、来年度の企画としては、データに少し信ぴょう性が足りないかなとも思ったり…

土本さん土本さん

うーん、結局「年度末とか、重要性の周知不足で、他部署からの資料の集まりが悪くて現段階でデータの信ぴょう性が足りない」って思っているんですよね。

田村さん田村さん

はい…言い訳にはならないって言われると、それはそうだと思うんですが、私自身、他部署の担当の方に企画について説明するのに時間を取られてしまって、データの締め切りを厳守してほしいことをもっと強く言えばよかったのですが…そういう部分では説明不足があったなって思います。とはいえ、「完璧より終わらせる」方が大事かなって思ったこともあって…ただどうしても自分の中では、これだと他の参加者の方に納得して頂けないなって思うんです

土本さん土本さん

色々お話ししてくれたけど、つまりあなたは「参加者の納得が得られないから、延期の方がいいかも」って気持ちなんですよね。

面談は振り返られるが、普段のコミュニケーションは振り返れない

いかがでしょうか。

キャリアコンサルタントや傾聴の学習をされる中で、普段の職場や家庭でのコミュニケーションも、「傾聴」を意識している方も多いのではないでしょうか。

しかし、【面談時】における「傾聴」は、勉強会でのロールプレイで振り返ることができますが、【普段のコミュニケーション】における「傾聴」は振り返ることができません。

なので上記の土本さんのように、頻繁に要約を行ってしまうと、「あなたの言うことはよく分からないから、整理したよ」という『マウント会話』として受け止められる可能性に気づかないんですね。

要約は「マウント」になりがちと理解する

要約がマウント感を与えるのは、ビジネスでもプライベートでも同じです。

あなたの部下が、会議でこう言ったらどう思いますか?

鈴木さん鈴木さん

うーん、課長のお話しは結局【○○が、○○だから、○○するな】このように理解しましたが、よろしいでしょうか?

ヒトによっては、「メンツを潰された」と憤ることもあるのではないでしょうか。そこまで行かなくても、地味に反感を買っているかもしれません。

「要するに今の話は、「○○について、○○と思うけれど、それが正しいのかわからない」ってこと?」

「端的に言えば、今の質問は「○○は、自分としては○○だけど、本来は○○と考えているが、それで良いのかどうか」ということですね」

プライベートでも同じです。自宅に帰って、毎度毎度こんな風に配偶者が話してきたら、話す気も失せてしまいます。

生兵法はケガの元。技法だけでは、相手の気持ちは理解できないどころか、不信感や嫌悪感を抱かれることもあります。

下線を引いた、「要するに」「結局」「つまり」なんて言葉は、相手への気持ちが表れていると思いませんか?

既にお伝えしたように、そもそも「要約」とは「必要なところを集約」するものです。

それは、言外(無意識的)に「あなたの話には無駄なところが多い」とか「分かりにくい」というメッセージを与えてしまう可能性があります。

なので、要約は多用せず、本当に必要な時だけ行う。これがポイントです。