資格で理想のライフスタイルを実現する、キャリ魂塾のキャリ魂太郎です。


今回のエントリーは、サザエさんよりお得な4本立て。

1.ホランド理論
2.試験前なのに勉強する気が起こらない、手につかないといった方へ贈る一節。
3.「あたかも」という言葉。
4.「対象に興味を持つ」ことについてのお話。

以上の4本でお届けいたします。

が、涙もろい女性の方は、お化粧をした後なら読まない方がいいかもしれません。

ホランド理論「同じ職業に就く者は、似たような成育歴を持つ」

私の学科試験対策講座では、村上春樹や有島武郎、田中芳樹といった、小説や漫画、映画などのエピソードをご紹介して解説することが多い(最近は時間の関係上かなり減りましたが…)のですが、ネタ元をご存知ない方も少なくありません。

一番意外だったのは、「『風の谷のナウシカ』を観たことのある方はちょっと手を挙げてみてください」とお話ししたところ、全体の2割程度しか手が上がらなかったことです。(なぜそんな話になったのかは忘れましたが…)

これは、ホランドに言わせれば、「あれ~おっかしいなぁ」ということになります。

なぜなら、「同じ職業(キャリアコンサルタント)を目指すのであれば、似たような成育歴を持つ」はずだからです。

まあ、当然「似たような」ですから、完全に一致するわけでもないし、似たようなといっても幅がありますから、ある程度は許容範囲ですけどね。

別にプロファイリングではなく、ホランド理論に基づけば、このエントリーを読んでいるあなたがアラフォー以上である可能性は高いし、そうであれば、おそらく吉田栄作や山口智子の「もう誰も愛さない」とか仙道敦子の「クリスマス・イヴ」を観ていたはずなんですよ。

ちなみに、この「クリスマス・イヴ」では、仙道敦子のお父さん(村井国男)が個人タクシー開業を目指していたのですが、確かちょっとした事故を起こしてしまって、個人開業の先送りを余儀なくされています(個人タクシー開業には、基本的に申請日以前10年間、無事故無違反などの要件が必要で、結構厳しいのです。)。

私もリアルタイムで「クリスマス・イヴ」を観ていましたが、この村井国男演じる仙道敦子のお父さんの、「個人タクシーできなくなった」としょんぼり(´・ω・`)していたシーンが印象に残っていますね。

そして「もう誰も愛さない」の主題歌が「届かぬ想い」なんですけど、なぜか聴きたくなるんですよ。ごくたまに。

このエントリーを読み終えたら聴いて下さい。めっちゃ懐かしいですから。

風の歌を聴けからの一節

では、そんな物語つながりで。

勉強、進んでいますか?

範囲が広かったり、合格基準がよく分からなかったり、同期や先輩、ときには講師の言うことまでよく分からなかったり…

受験生活でも社会人生活でも、同じようなものかもしれません。

そういうときには、少し長いのですが、村上春樹の「風の歌を聴け」から、この一節を読んでみてください。

病院で寝たきりの女性が、ラジオのDJに送った手紙のエピソードです。

「私は17歳で、この三年間本も読めず、テレビを見ることもできず、散歩もできず、……それどころかベッドに起き上がることも、寝返りを打つことさえできずに過ごしてきました。

この手紙は私にずっと付き添ってくれているお姉さんに書いてもらっています。

彼女は私を看病するために大学を止めました。もちろん私は彼女には本当に感謝しています。

私がこの三年間にベッドの上で学んだことは、どんなに惨めなことからでも人は何かを学べるし、だからこそ少しずつでも生き続けることができるのだということです。

私の病気は脊髄の神経の病気なのだそうです。ひどく厄介な病気なのですが、もちろん回復の可能性はあります。3%ばかりだけど……。

これはお医者様(素敵な人です)が教えてくれた同じような病気の回復例の数字です。彼の説によると、この数字は新人投手がジャイアンツを相手にノーヒット・ノーランをやるよりは簡単だけど、完封するよりは少し難しい程度のものなのだそうです。

時々、もし駄目だったらと思うととても怖い。叫び出したくなるくらい怖いんです。

一生こんな風に石みたいにベッドに横になったまま天井を眺め、本も読まず、風の中を歩くこともできず、誰にも愛されることもなく、何十年もかけてここで年老いて、そしてひっそりと死んでいくのかと思うと我慢できないほど悲しいのです。

夜中の3時頃に目が覚めると、時々自分の背骨が少しずつ溶けていく音が聞こえるような気がします。そして実際そのとおりなのかもしれません。

嫌な話はもうやめます。そしてお姉さんが一日に何百回となく私に言いきかせてくれるように、良いことだけを考えるよう努力してみます。それから夜はきちんと寝るようにします。嫌なことは大抵真夜中に思いつくからです。

病院の窓からは港が見えます。毎朝私はベッドから起き上がって港まで歩き、海の香りを胸いっぱいに吸いこめたら……と想像します。

もし、たった一度でもいいからそうすることができたとしたら、世の中が何故こんな風に成り立っているのかわかるかもしれない。

そんな気がします。そしてほんの少しでもそれが理解できたとしたら、ベッドの上で一生を終えたとしても耐えることができるかもしれない。

さよなら。お元気で。」

名前は書いてない。

僕がこの手紙を受けとったのは昨日の3時過ぎだった。

僕は局の喫茶室でコーヒーを飲みながらこれを読んで、夕方仕事が終ると港まで歩き、山の方を眺めてみたんだ。君の病室から港が見えるんなら、港から君の病室も見える筈だものね。

山の方には実にたくさんの灯りが見えた。もちろんどの灯りが君の病室のものかはわからない。あるものは貧しい家の灯りだし、あるものは大きな屋敷の灯りだ。あるものはホテルのだし、学校のもあれば、会社のもある。実にいろんな人がそれぞれに生きてたんだ、と僕は思った。

そんな風に感じたのは初めてだった。そう思うとね、急に涙が出てきた。泣いたのは本当に久し振りだった。

でもね、いいかい、君に同情して泣いたわけじゃないんだ。僕の言いたいのはこういうことなんだ。一度しか言わないからよく聞いておいてくれよ。

僕は・君たちが・好きだ。

あと10年も経って、この番組や僕のかけたレコードや、そして僕のことをまだ覚えていてくれたら、僕の今言ったことも思い出してくれ。

彼女のリクエストをかける。エルヴィス・プレスリーの「グッド・ラック・チャーム」。この曲が終ったらあと1時間50分、またいつもみたいな犬の漫才師に戻る。

御清聴ありがとう。

引用:「風の歌を聴け」©村上春樹 講談社

「あたかも」は同情ではない。

兵庫県にお住いの方は、山と港という言葉から、神戸の街をイメージしたかもしれません。(村上春樹は兵庫県西宮市出身だそうです。)

そして、この「君に同情して泣いたわけじゃない」という言葉に象徴されるのが「あたかも」なのかもしれません。

あなたが、「あたかも」この少女になったように感じられれば、今日一日の行動がきっと、前向きに変容するのではないでしょうか。

傾聴は「目的」ではなく、「態度」である。

このエントリーを読んだことで、あなたの中にあった受験勉強や日々の生活に嫌気が差している部分がほんの少しでも変わったのなら、「私はあなたの話を(一切)聴かなかったけれど、あなたは前向きに変容した」ということになりますね。

そう、試験がどうであれ、「傾聴」の上手下手のみが、カウンセラー・セラピスト・コンサルタントの値打ちではないのです。

「傾聴」は目的ではなく、また評価の物差しですらなく、相談者が前向きに変容するために求められる「態度」であり「手段」の一つなのですから。

(「傾聴」がほとんど「目的」になってしまっている某協会とか、もはや手段と目的を取り違えていますからね…)

さて、「風の歌を聴け」自体は、150ページ程度と短く、そしておそらく「で、結局何が言いたいの?」となるような一冊です(私の知る限り、村上春樹はそういう感じの作品が多いですけども)。

しかし、メモを取りながらしっかり読めば、いろんな謎解きが楽しめるので、小説というよりは、クロスワードパズルのようなものだと思ったりもします。

「ノルウェイの森」の装丁に込められたとされる想い

「風の歌を聴け」は、村上春樹作品とはいえデビュー作でもあり、マイナーなのでご存じない方も多数いらっしゃると思いますので、有名なところで「ノルウェイの森」も挙げておきます。

「ノルウェイの森」はその内容だけでなく、赤と緑のクリスマスカラーに彩られた装丁のセンスも好評となり、売り上げに貢献したと言われています。

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この装丁も、装丁に使われているフォントも、村上春樹本人が細かく指定したらしいのですが、この赤と緑の関係をみると、色相環上、補色関係になっており、混ぜると灰色(黒)になることから、「葬送」や「鎮魂」を表現しているとされます。

そんな「ノルウェイの森」ですが、私の大学時代の同級生は、「エロ小説」と感想を述べていました。

「エロ小説」と「葬送」「鎮魂」…

うーん、真逆ですね。

対象に興味を持たなければ、理解できない。

さて、ここから無理やりキャリア(というか面談)の話にもっていくのが腕の見せ所なわけですが、表面的な態度や応答だけでは、相手の意図することは分かりません。

ある人が読めば「エロ小説」と感じる小説も、「噛めば噛むほど味が出るスルメイカのようなクロスワードパズル」と感じる人もいるわけです。

その違いは、どれだけ対象に興味を持っているかではないでしょうか。

相手が伝えたいことは何なのか、その相手と本気で意思疎通しようとしているのか。

本を読むにも面談をするにも、そして試験対策をするにも、相手は人間であると考えること、何よりも「自分は相手と意思疎通しようとしているのか。自分の準拠枠で判断していないか」と常に自問自答する姿勢がなければ、相手の伝えたいことは理解できないのだと思います。

そういえば、村上春樹は、河合隼雄と対談していますね。

日本を代表する臨床心理学者との対談は、彼の作風になにがしかの影響を与えたかもしれませんが、私は「ねじ巻き鳥クロニクル」を最後に、村上春樹作品は読んでおりませんので、おススメできるのは1995年までに発表されたものとなります。

では最後に、「グッド・ラック・チャーム」ではなく、「届かぬ想い」。

ご清聴ありがとう。

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