言葉というやつは、心という海に浮かんだ氷山みたいなものじゃないかな。海面から出ている部分はわずかだけど、それによって海面下に存在する大きなものを知覚したり感じとったりすることができる。言葉をだいじに使いなさい
(引用:銀河英雄伝説 ©田中芳樹 徳間書店)
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既に、何回も紹介してきたこの、ヤン・ウェンリーの言葉。
今後も、繰り返し紹介していくことになると思います。
それだけ、「言葉」に無頓着な人が多いからです。
例えば、Twitterで、語尾に「。」を付けられるのが苦手、という人が多いことが少し話題になっていました。
それは、凄く良く分かります。
私自身、特にチャットカウンセリングの中で、よりベターな文章表現に苦心しています。
「あなたが経験された●●について、お話して頂けますか。」
だと、断言感が少し堅苦しい感じがするし
「あなたが経験された●●について、お話して頂けますか?」
だと、話すのを促している感じが強いように思うし
「あなたが経験された●●について、お話して頂いてよろしいでしょうか」
だと、なんだか丁寧すぎるような気もする。
このように、「文章の終わり方」一つとっても、相手に与える印象を左右します。
(だから、「(文字)チャットによるカウンセリングは、非常に難しい」というのが、私の持論です。)
LINEなど、コミュニケーションがどんどん短くなっていっている中で、絵文字が発達してきたのは、「言葉のシビアさ」に、耐えきれなくなった人が多いからかもしれません。
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カウンセリングなんて、好きにやるのが一番
私の敬愛する、東京大学医学部助教授であり、臨床心理士でもあった、故森俊夫先生は、「カウンセリングなんて、好きにやるのが一番」と述べられています。
森先生によれば、カウンセリング(民間心理療法)は、ヒマな研究者が調べた結果、世界中で10万種類くらいあるそうです。
(一般的には、ある程度大雑把に分けても400種類、多少細かく分類すると1000種類を超えるというのが定説です。)
これは、「あなたがどんな方法でクライエントにアプローチしたところで、10万種類のどれかのモデルには該当しているから、それなりの効果はあるだろう」とし、その上で、「自分が自然になれる方法でアプローチすること」の大切さを述べているんですね。
私自身、公認心理師としては催眠療法(ヒプノセラピー)をメインに扱いますが、この催眠療法だけでも、退行療法、可能性療法や解決志向療法など、20前後にカテゴライズできることは、あなたもご存知かもしれません。
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「カウンセラー」の資質とは
キャリアコンサルタント養成講習は、大抵の場合30~40万円くらいの費用が掛かります。
公認心理師になろうとすれば、今後は6年間の専門課程が基本となります。
決して安くはないお金を支払い、学ぶことによって、専門性が高くなればなるほど、「カウンセリングなんて、好きにやるのが一番」という言葉に、当然反発する人もいるでしょう。
多くの時間とお金というコストを費やし、生涯学び続けることが求められる専門職にもかかわらず、なぜ森先生は「好きにすればよい」と述べられたのでしょうか。
この「心理支援」業界では、「カウンセラーは『心』を扱う職業であり、専門的な教育課程を修了しなければならない」との考え方が根強いことを、あなたもご存じだと思います。
この言葉は、「わずかな期間で資格が取れるような、民間カウンセラー資格はダメ」ということでもあり、明示的にそれを発信している人もいます。
しかし、本当にその考え方は正しいのでしょうか。
木村花さんの死とテレビ番組を「リアル」と捉えてしまう視聴者の無知
テラスハウスというテレビ番組に出演していた、プロレスラーの木村花さんという女性が、先日亡くなりました。自殺だったと報道されています。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
報道によれば、木村さんの番組の中での言動が不快なものであり、TwitterやInstagramで誹謗中傷が多数寄せられたことが、自殺のきっかけとなった可能性が高いと言われています。
大前提として「テレビ番組は、演出・台本ありき」です。
古くは裕木奈江さんが、「ポケベルが鳴らなくて」というドラマに出演したことがきっかけで、好感度が非常に下がってしまい、以後の女優としてのキャリアに大きく影響したことは、あなたもご存知かもしれません。
また、イジメのドラマである「ライフ」に出演していた福田沙紀さんも、イジメ主犯格の印象が強くなってしまい、苦労された話がありました。
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ドラマをはじめ、テレビの中での役割は、ただの「演技」であるにもかかわらず、それを「現実」と混同してしまう視聴者が多すぎるんですね。
SNSは「言葉」をダイレクトに届けるツール
インターネットの流行、そしてSNSの一般化に伴い、世界的に変化したことがあります。
それは、芸能人との距離感です。
昭和の時代、美空ひばりと話すことや、松田聖子が自分の言葉に反応することなど、想像できたでしょうか。
しかし今は、Twitter、Instagramなど、SNSというツールが一般的になったことで、芸能人はかつてのように遠い存在ではなくなりました。
ダルビッシュ有選手や、ダウンタウン松本人志さんといった有名人に、ダイレクトにメッセージを送ることができ、反応して貰えることもあります。
ファンレターのように、読んでもらえるかどうかわからない手紙を書いて、ただ届ける。
そんな時代ではなくなり、直接番組の感想を、出演者本人に伝えることができるようになったわけです。
結果として、
・各種SNS
・「番組が作り物(虚像)であることを理解しない視聴者」
・「『番組が作り物であることを理解しない視聴者の存在と行動』を軽視しているテレビ関係者」
この3つのかけ合わせが、木村花さんが自ら命を絶つという悲劇を生んでしまったと考えられます。
カウンセラーの資質は、「クライエントを思いやる『心』」
私個人の考えで言えば、「カウンセラーは『心』を扱う職業であり、専門的な教育課程を修了しなければならない」とは思いません。
あなたが、キャリアコンサルタント養成講習を受講していれば、カーカフによる「ヘルピング」を学んだはずです。
そして、カーカフは「カウンセリングを専門家の独占物にしない」ことを考えて、様々な技法に共通する技法を抽出し、ヘルピングを体系化したことも。
そう「ヘルピング」とは、「心理の専門家のためのものではない」のです。
カーカフは、この「ヘルピング」の各技法がマスターできれば、「カウンセリングは誰でもできる」と考えた。
そして、その考え方が支持され、極東の島国の国家資格にまで取り入れられているんですね。
では、ヘルピング技法を学べば、誰でもカウンセラーになれるのでしょうか。
もちろん違いますよね。
技法だけでは、ただ「技」のみ。
カウンセリングにも「心」「技」「体」の3つが必要です。
そして、カウンセラーの資質には、「クライエントを思いやる『心』」が不可欠です。
「あなたのために言っているのよ」「お前のためを思って言ってるんだぞ」
本当でしょうか?
ときにそれは「自分自身のため」ではないでしょうか。
ヒトは相互作用の中で生きている
ヒトである以上、「相互作用」という関係性の中で生きています。
そして、全ての言語・非言語コミュニケーションは、「相手の心」に影響しているのです。
これが理解できていれば、「カウンセリングは誰でもできる」し、「誰もがカウンセラーになれる」はずです。
そして、木村花さんが自ら命を絶つような結果にはならなかったでしょう。
幸いにして、私はネットの掲示板を見ませんし、Twitterもチャットワークもメールも、私を誹謗中傷するようなメッセージが届いた記憶はありません。
しかし、今の時代、言葉とSNSが「ポリティカルコレクトネスにそぐわない人を叩く」ことが増えすぎました。
それが広がり、社会的な規範やマナーにまで、ポリティカルコネクトレス的な正義を振りかざし、隙を見せた人を叩く。
そんなツール(これを「ポリコレ棒」と言ったりしますね)になってしまっています。
ポリティカル・コレクトネス(英: political correctness、略称:PC、ポリコレ)とは、性別・人種・民族・宗教などに基づく差別・偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用することを指す
(引用:Wikipedia)
言葉は『心』という海に浮かんだ氷山の一角
このブログでもメルマガでも、そして講座でもずっと、「言葉に注意する」ことの重要性をお伝えしてきました。
改めて、自分自身の「言葉」、そして目の前の人の「言葉」が、「心」という海に浮かんだ氷山の一角だと注意し、相手の心に、自分の言葉がどのように影響するかを考えてみるようにしようと思います。
そして、それができる人を、「分野、領域などの専門性に関わらず」、「カウンセラー」と呼ぶし、カウンセラーであれば、どのような療法・技法を行っても良いのだと思います。