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部下に仕事を任せられない課長に、例え話を使って問いかける
今回も、養成講習では学ばない(あるいは否定される)、対決技法を使ったアプローチをご紹介します。
事例:鈴木さん
氏名:鈴木一郎
年齢:55歳
職歴:化粧品メーカーにて15年ほど勤務した後、現在の健康食品メーカーに転職、営業課長として働いている。
相談したいこと
営業課長として働いているが、身体がキツいと感じる。営業成績は良いので続けたいとは思うが、将来的なことも考えると転職も必要に思える。
今後どうしたらよいのか分からないので相談したい。
例え話を使った対決(問いかけ)技法逐語録
前職では、女性化粧品の営業を行っていました。
女性用の化粧品を、鈴木さんが営業するのは、ご苦労もあったかと思うのですが、どんなふうに実績を上げてこられたんですか?
そうですね、周りにも支えて貰って上手くいった感じです。
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中略
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前職で、鈴木さんが実績を上げてこられたのは「周りに支えて貰って」という言葉がありましたが、そのときの上司の方とは、どんな関係だったんですか?
ある程度、任せてくれた感じですね。
今、鈴木さんは身体がキツいと感じられているのに、部下に仕事を任せられないのは、何か理由があるんですか?
以前、部下が仕事でミスをしたので、どうしても任せられないんですよね。
そうなんですね。私、昨日、D・カーネギーの「人を動かす」を読んだんですけど、偉い人の飛行機に、ガソリン入れるのを、整備士が間違えて軽油を入れちゃって、墜落したんですって。パイロットが上手で誰も死ななかったんですけど。
そのあと、偉い人が整備士さんになんて言ったかっていうと、「明日の整備を君に頼もう。君はもう失敗しないから」って言ったんですって。どうですか、整備士さんの気持ちを考えたら。
嬉しいと思います。もう失敗しないって思うでしょうね。
部下の方と、そういう関係性、作れたらどう思われますか?
D・カーネギーの「人を動かす」から「整備士の話」
この話は、下記の引用です。
たまたま前日に読んでいたのと、時間が余りそうだったので使ってみました。
有名なパイロットで航空ショーの花形ボッブ・フーバーはある時、サンジエゴの航空ショーを済ませ、ロサンゼルスの自宅へ向け飛んでいたが、その途中、三百フィートの上空でエンジンが両方ともパッタリと止まってしまった。
巧みな操縦で、そのまま着陸し、負傷者は出なかったが、機体はひどく損傷した。
緊急着陸後、フーバーがまずやったことは、燃料の点検だった。案の定、この第二次世界大戦時代のプロペラ機に、ガソリンではなくて、ジェット機用の燃料が積まれていたのである。
飛行場に戻ったフーバーは整備を担当した男を呼んだ。若い整備士は、自分のミスを悟って自責の念に打ちひしがれていた。頬には涙がとめどなく流れている。高価な飛行機が台無しになったばかりか、危うく三人の命が失われようとしたのだから、ショックは当然だろう。
フーバーの怒りは、想像に余りがある。このような言語道断の過ちを犯した男に、誇り高きベテランのパイロットが痛罵を与えたとしても不思議はない。
ところが、フーバーは、叱らなかった。批判もしなかった。それどころか、整備士の肩に手をかけて、こう言った。
「君は、二度とこんなことを繰り返さない。私は確信している。確信している証拠に、明日、私のF-51の整備を君に頼もう」
(引用:「人を動かす」 D・カーネギー 創元社)
キャリアコンサルティングに「正解」はありません。
ひとつのアプローチの参考として、ご理解頂けましたら幸いです。
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