このエントリーでは、国家資格キャリアコンサルタント試験合格者の方に、今後のスキルアップの考え方とキャリ魂塾の「解決志向キャリアコンサルティング勉強会」についてお伝えしています。
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あなた(クライエント・支援者)の真の能力を見つける。
真に重要なのは、変わりたいという動機と、誰も自分の持っている真の能力を知らないという理解なのです。(ミルトン・H・エリクソン)
あなたにとって「エリクソン」とは、多くの場合、発達課題のエリクソン、つまり「エリク・エリクソン」だと思います。
このエントリーでお話しする「エリクソン」は、「ミルトン」・エリクソン。
彼は、キャリコン(養成)業界では完全に、と言っていいほど無名ですが、精神医療・心理療法的には、非常に人気のある、そして最高レベルの実績を残した治療者(精神科医)です。
なぜ、ミルトン・エリクソンはキャリコン業界ではマイナー(エリクソンを源流とする、解決志向ブリーフセラピーが出題される程度)なのか。
簡単です。
彼は、理論を作らず、自らのスキルの体系化や理論化、マニュアル化を行わなかったからです。
洋の東西を問わず、何かを学ぶとき、体系化されたマニュアル(指導書)がなければ、その知見を学ぶことは非常に難しくなります。
なので、エリクソンを戴く「エリクソニアン」は、みんなエリクソンの論文や遺された書簡を読んで彼の考えを推測したり、実際に見て学ぶしかなかったんですね。
エリクソンはこう言いました。
「人は皆、一人一人ユニークな存在です。したがって、心理療法はそのユニークさに合わせて、一人一人に仕立てられるべきであって、人間行動に関する仮説理論という『プロクルステスのベッド』に寝かせて、人を切ったり伸ばしたりしてはいけません」
「もし私が理論をつくるとしたら、患者一人一人に対して作ります」
「私のやり方を決して真似しないでください。皆さんは皆さんなりのやり方を追究してください」
ーミルトン・エリクソンー
この眠たくなるようなスクリプトを繰り出すおじいちゃんが、「魔術師」と呼ばれたミルトン・エリクソンです。
エリクソン財団の副理事でありセラピストでもある、ダン・ショートはこう言います。
この患者の父親は厳格で、命令ばかりしている人だったという。患者は幼いころから、外側からの支配に応答するようプログラミングされていたのである。セラピーでも同様のやり方を好んだ。座って話を聴くだけのセラピストには苛立った。彼には現状について何をしたらいいかをいってくれるようなセラピストが必要だった。
出典:「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」 春秋社
ダン・ショートをご存しない方がほとんどだと思いますので、少々追記すると、ノース・テキサス大学でカウンセリング修士号、そしてマサチューセッツ大学アーモスト校でカウンセリング心理学の博士号を取った心理学者です。
非指示的カウンセリングが絶対と、まさに「思い込まされている」方には、にわかに受け入れがたいかもしれません。
しかし、キャリアコンサルティングという狭い世界から一歩踏み出せば、これが実際の「カウンセリング(セラピー)の世界」です。
現在、大きく分けて400、細かくみれば1600以上の心理療法があると言われます。
来談者中心療法や傾聴「だけ」でいいなら、これほど多くの心理療法が生まれるはずがありません。
そして何より、「クライエント満足」こそが、心理療法の価値であるはずです。
にもかかわらず、「カウンセラー満足」が、心理療法の価値になっているように思います。
「キャリ魂太郎先生ならどうしますか」は、本来意味がない
私は、現在厚生労働省の自殺防止事業等でスーパーバイザーを担当しています。
つまり、カウンセラーから相談されることはもちろん、ときには話が行き詰まったり、クレームになってから交替することも多いわけですが、そこで多くのカウンセラーが口にする言葉、それが
「先生ならどうしますか」
です。
気持ちはとてもよく分かります。
自分のやり方に自信が持てなかったり、自分のやり方でクライエントを怒らせてしまったり…
本当にクライエントとのコミュニケーションは難しいですよね。
しかし、「私のやり方」を知っても、あまり意味がありません。
たとえば、下記のようなアプローチはどうでしょう。

今の仕事をやめたいんです

今の仕事をやめたいのですね。そうすると今日はどういったところからお話をされたいでしょうか…どのようなことでも大丈夫ですので、田村さんが今日気になることをお話して頂けますか。

そうですね…今の仕事は業務委託でやっていて、辞められないと聞いたんです。

業務委託で働かれているのですね。そうすると業務委託契約書などは今日お持ちでしょうか。

あります。持って来ました

拝見させて頂きますね。ふむふむ。ところでどうして辞めたいって思うんでしょうか。

実は、子どもができまして…不妊治療でやっと授かったので、万一のことも考えて仕事を休んで出産に万全を期したいんです。

そういったご事情だったのですね。確かに、無事に出産することを第一に考えたいですよね…この業務委託契約書には、『期間満了前に契約を終了する場合は、3か月前に相手方の了承を得る』こととなっていますね…ただこの場合であっても(以下略)」。
いかがでしょうか。
雇用(労働)契約ではないケースでも、業務委託の知識や契約書の読み方の知識から話を進めることもできます。
その他にも、例えば看護師や保健師の方であれば、医療的な知見で寄り添うことができるでしょうし、不妊治療の経験がある方は、クライエントのこれまでの努力を心から労うこともできると思います。
ファイナンシャル・プランナーの方なら、仕事をやめた場合の金銭的な問題をサポートすることもできるでしょう。
そう、人それぞれ「やれることは違うし、違っていい」のです。
どんなアプローチを提供すればよいのか、それはクライエントが決めることだから。
私のやり方を知っても、それはあなたにとってせいぜい「参考」にしかなりません。
大切なのは「あなたがあなたのリソース(資源)を活かして、クライエントを支援する」ことです。
キャリ魂塾は、解決志向キャリアコンサルティング勉強会を主宰しています。
キャリ魂塾では、ミルトン・エリクソンを源流とする「解決志向ブリーフセラピー」を更に実務的にアレンジした、「解決志向キャリアコンサルティング勉強会」を年に概ね3回開講しています。
1回あたりの講座数は4回ですが、1年間参加自由にしていますので、実質16回の参加が可能です。
私のアプローチは、あくまで参考です。
1人1人が、自分のリソースを活用し、「楽しくラクに」、そして「問題を問題として見ない」という「非問題志向」のアプローチを身につけていただくことで、もっと多くのクライエントの方を支援して頂ければと思っています。
