このエントリーでは、キャリアコンサルティング協議会を指定試験機関とする、第14回国家資格キャリアコンサルタント面接試験(以下「面接試験」)で出題された、「山田さん」をキャリ魂太郎が15分でキャリアコンサルティングした逐語記録を掲載しています。
※本ブログでは、「キャリアコンサルティング協議会が指定試験機関として実施する面接試験」について対象としており、日本キャリア開発協会(JCDA)の面接試験は一切考慮しておりませんので、ご注意ください。
Contents
第14回出題事例「山田さん」とは
キャリ魂塾では、面接試験対策を全て「過去に出題された事例」で行っており、個人の経験は一切扱いません。
今回ご紹介する「山田さん」とは、第14回に出題された事例ですが、受験された方の情報を総合すると、概ね下記のような感じです。
性別:女性
年齢:41 才
家族構成: 母(同居)
学歴: 私立大学栄養学部卒業
職歴: 新卒で食品メーカーに契約社員として入社し、1年勤務後退職。
その後14 年間、派遣社員として勤務した後、現在の厨房機器会社に契約社員として転職し、4年目。
相談したいこと:最近、会社の業績が悪く、契約社員は次回更新がないという噂を聞いた。 もし更新してもらえないと、仕事を探さないといけないが、事務の仕事しか経験がなく、正社員として働いた経験もなく、仕事が見つかるか心配。仕事の探し方も良く知らないため、相談に来た。
なお、協議会に電話で確認したところ、試験実施期間後の面接事例の公開については特に制限を設けていないそうです。
こういう点は、協議会の良いところですね。
キャリ魂太郎の15分間逐語記録
今回は、第14回面接試験を実際に受験され、山田さんがクライエント役として出題された方にクライエント役をして頂きました。
なので、かなり実際の出題に近いかと思います。
では、その逐語録をPDFでどうぞ。
逐語解説
逐語録のうち、太枠で囲んでいる箇所は、口頭試問で使うポイントです。
つまり、自己理解、仕事理解、状況把握(理解)、支援把握(理解)の確認(点検)として述べることが可能な点や、良かった点、改善点などで使える応答です。
例えば…
「見立て」に使うポイント
1.「履歴書に書きさえすれば、自らの希望する仕事に就けると『思い込んでいる』」という仕事理解不足
2.「誰でもできる仕事」と言いながら「若い子の作った資料の方が仕事が取れる」という「違い」に気づいていない仕事理解不足
3.「業績が悪いので契約更新されない」という「思い込み」(状況確認不足)
4.「新卒以来、就職活動をしっかりと行った経験がない」という「就職活動の知識不足」(あえて言えば「支援把握」の不足)
「良かった点」に使うポイント
1.無期雇用転換という情報提供ができた
2.働きながら就職活動することが「いけないこと」という認知の歪みからの変容が生じた
3.「収入」を「契約」と言い換えることで、「お金の問題」を「仕事の問題」と扱うことを試みた※
4.「無期雇用転換」という情報提供ができた
5.転職活動には、職務経歴書が必要という情報提供ができた
6.「実は」と母親の介護と収入面での不安を話して頂けた
7.当初は暗い感じで話されていたが、徐々に明るい顔になり、最後には笑顔も見せて貰えた
※3.は技法として「言い換え」を使っています。
「改善点」に使うポイント
1.インターネットで転職活動はできるが、紹介状はハローワークで貰う必要がある点について、説明が不足していた
2.15分で目標設定(正社員就職)、方策(職務経歴書)に進んだ点が、少し早いように感じる。改善点としてもっと丁寧に傾聴を心がけたい。
「今後の支援」に使うポイント
1.現在の営業事務でも、資料作成など「誰でもできる仕事」ではないことに気づいて頂き、スキルを高める。
2.履歴書に書きさえすれば、言わなくても希望の職業に就けるという「思い込み」の修正を図る。
3.本当に契約が更新されないのか、無期雇用転換が「正社員転換」の可能性はないのか、情報収集に努める。
4.契約の更新の有無にかかわらず、正社員雇用可能性を探り、山田さんがより自分自身の能力や資格を活かせるような仕事探しやスキルアップを支援する。
今回の面談のポイント
キャリ魂塾の面接試験対策講座を受講された方は、私がほぼタイムマネジメントシートに沿って進めていること、そしてレジメのスライド番号8で解説している、3つのパターンの【1】に当てはめていることが、この逐語録を読めば、ご理解頂けるかと思います(今回は支援確認はカットしました)。
また、今回の面談のポイントとしては、実は私は「契約更新があろうがなかろうが、どちらでも良い」と考えて進めています。
契約更新があろうがなかろうが、「正社員」として山田さんの求める仕事が見つかれば、転職すれば良いし、いつでも転職できるよう、その準備をしておく(能力開発も含めて)ことは、今回の契約更新の有無にかかわらず、山田さんのキャリア形成に役立つはずだからです。
キャリアコンサルタントに求められているのは「契約更新の有無の確認」というような、「今、この場限り」の支援ではなく、この先20年、30年と続く、山田さんのキャリアを「どのように充実させるか」ではないでしょうか。
と言いつつ、応答の中で
1.「現在の仕事が誰でもできる仕事でないこと」に気づけば、能力開発支援
2.「契約更新がないことが思い込みである」と気づけば、その確認支援
3.「契約更新の有無に関わらず、正社員への転職」支援
キャリアコンサルティング開始後、この3つの展開を想定しつつ、『山田さんの応答次第』で、1~3のどれにでも進められるように構成しています。
オウム返しが無い?キャリ魂塾メソッドにオウム返しが少ない理由
キャリ魂塾メソッドでは、意味のないムダなオウム返し、そして「自分が記憶するためのオウム返し」を行いません。
ムダなオウム返しをせず、相槌やピンポイントな「伝え返し」を行うことで、時間が生まれ、結果としてより「話を聴く」ことが可能となります。
だから「来談目的(≒主訴)で2分近く時間が経過していても、焦らずに話を聴ける」し、15分で目標設定、方策に進むことも可能になるんですね。
あなたがクライエントなら、なんでもかんでも、しかも長々とオウム返しばかりされるキャリアコンサルタントと、話をしっかりと聴いて、目標ができたり、最初に取り掛かること(スモールステップ)が分かるキャリアコンサルタント、どちらにお金を払うでしょうか。
普通に考えれば、当たり前のことですよね。
なんでもかんでも「マネ」をされて嬉しい人など、いるわけがないんです(これを「いる」と思っているのは、実務経験のない人だけです)。
面接試験受験の際の注意点
最後に、面接試験の受験に当たっての注意点です。
私自身は出題パターンを熟知しているため、与えられた時間が15分でも20分でも、目標設定及び方策に進むこと自体はそれほど難しくありません。
しかし、受験生の方は決して「15分で目標設定、方策に進もう」と「型に嵌めて」考えず、まずは丁寧にしっかりと寄り添い、クライエントの「話を聴く」ことに時間をかけるように心がけて頂きますようお願いいたします。
一つの目安として、大体、中間まとめを12~13分あたりで行うくらいで十分ではないかと思います。
ご参考になりましたら幸いです。
第14回面接出題事例「白坂さん」の逐語録は↓でどうぞ。