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雨上がり決死隊の宮迫さんの引退が話題です。

吉本芸人の中でもトップクラスの人気を誇る、宮迫さんがなぜ引退しなければならないのか。

このエントリーでは、キャリアコンサルタント業務との関連も含めて、解説したいと思います。

なぜ、暴力団(反社会的勢力)と関係を持ってはいけないのか。

私が、行政書士として開業して、今年で20年目になります。

この間、様々な社会の流れの変化と、それに伴う法改正がありました。

例えば、マネーロンダリング(資金洗浄)ですね。

暴力団等の反社会勢力(以下、単に「反社」とします)が、犯罪行為等の手段で不当不正に入手した金銭を、表に出す(マネーロンダリング)のために、会社を設立するなどのケースがあります。

こういった行為を防止するため、犯罪収益移転防止法が施行されました。

この法律により、会社を設立する際の本人確認が、行政書士や司法書士に求められるようになったのが、私が反社という存在について実際に考えるようになった契機です。

そして、大阪府の場合、平成23年に暴力団排除条例が施行され(個別に確認したわけではありませんが、おそらく全都道府県等自治体で施工されていると思います。)ています。

その条文の一部をご紹介しますね。

(目的)
第一条 この条例は、暴力団による不当な行為その他暴力団を利する行為を防止し、及びこれらにより府の事務若しくは事業、府の区域における事業活動又は府民の生活に生ずる不当な影響を排除することその他の暴力団の排除に関し、基本理念を定め、府、府民及び事業者の責務を明らかにするとともに、暴力団の排除のために必要な事項等を定めることにより、社会全体で暴力団の排除を推進し、もって府民生活の安全と平穏を確保するとともに、社会経済活動の健全な発展に寄与することを目的とする。

(基本理念)
第三条 暴力団の排除は、暴力団が府の区域における事業活動及び府民の生活に不当な影響を与える存在であることに鑑み、暴力団を恐れないこと、暴力団に対して資金を提供しないこと及び暴力団を利用しないことを基本にするとともに、暴力団事務所の存在を許さないこととして、府、市町村、府民及び事業者が相互に連携を図りながら協力して、社会全体として推進されなければならない。

(府民及び事業者の責務)
第五条 府民は、基本理念にのっとり、相互に連携を図りつつ主体的に暴力団の排除に取り組むとともに、府が実施する暴力団の排除に関する施策に協力する
よう努めるものとする。
事業者は、基本理念にのっとり、その事業に関し、暴力団との一切の関係を持たないよう努めるとともに、府が実施する暴力団の排除に関する施策に協力するものとする。
3 府民及び事業者は、基本理念にのっとり、暴力団の排除に資すると認められる情報を府に対し積極的に提供するよう努めるものとする。

出典:大阪府警

黄色でマーカーを引いたところを読んでみて下さい。

「一切の」という言葉があります。

これにより、努力義務とはいえ、「事業者」である私たちは、「一切の」関係を持たないように努力することが定められたわけですね。

これは、当時話題になったので、記憶にある方もいらっしゃるかもしれません。

反社とは言え、基本的人権があります。

この条例に従えば、食品を売らない、住居を貸さないことも可能となるため、基本的人権を侵害するものではないか、という話になったわけですね。

こういった問題に関しては、裁判所の判断も示され、今のところ合憲であると考えられています。

前置きが長くなりましたが、見出しの「なぜ、暴力団(反社会的勢力)と関係を持ってはいけないのか。」ですね。

カンタンに言えば、「暴力団排除条例違反」ということになります。

芸人は「事業者」です。

事業者は「反社と一切の関係を持ってはいけない」のですから、たとえ努力義務であっても、コンプライアンスに反することになります。

通常、反社も「私は反社です」と自己紹介しているわけではありませんから、「知らない」で関係を持つことはありえます。

反社がコンビニでお弁当を買う。

反社と知っていれば、拒否することが求められますが、知らなければ販売しても問題にはなりません。

また、基本的人権として、水やガス、電気を止めるなどの生存権を侵害するような行為も難しいでしょう。

しかし、一般事業者は「反社と知って」付き合ってはいけないんですね。

この点で、宮迫さんの落ち度は「知らなければ、まだ弁明の余地があった」にもかかわらず、「知ることができた状況なのに、知らなかった」と言ってしまったことにあります。

通常の注意力を持っていれば、「知ることができる状況にあった」、つまり「知っていた」のであれば、ダメなんです。

この時点で、コンプライアンス違反であり、期間はともかく謹慎はやむを得ません。

しかし「知っているべき状況において、知らないと言った(ことが大きな疑問である)」。

これではおそらく吉本としても擁護のしようがないですし、今後スポンサーがつくことも難しいでしょう。

なので、「引退」を選んだということになるのだと思います。

失敗を許さないのではなく、一発アウトルールを破ってしまった。

こういった知識がない方は、「失敗を許さない社会は変だ」、「他人を叩く風潮が怖い」という発言をされるかもしれません。

しかし、今やほぼすべての事業者間取引において、暴力団排除項目が記載されています。

↓こういうやつですね。

(暴力団等反社会的勢力の排除)
第●条 乙は、甲に対し、本件契約時において、乙(乙が法人の場合は、代表者、役員又は実質的に経営を支配する者。)が暴力団、暴力団員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治運動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団、その他反社会的勢力(以下「暴力団等反社会的勢力」という。)に該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
2 乙は、甲が前項の該当性の判断のために調査を要すると判断した場合、その調査に協力し、これに必要と判断する資料を提出しなければならない。

(契約の解除等)
第●条 甲は、乙が暴力団等反社会的勢力に属すると判明した場合、催告をすることなく、本件契約を解除することができる。
2 甲が、前項の規定により、個別契約を解除した場合には、甲はこれによる乙の損害を賠償する責を負わない。
3 第1項の規定により甲が本契約を解除した場合には、乙は甲に対し違約金として金●●円を払う。

出典:大阪府警察

当然、吉本とスポンサーの間でもこういった契約は交わされているはずです。

つまり、「反社との関係を持った場合、一発アウト」。

これが現在の「ルール」なんです。

このルールを宮迫さんは「知らなかった」とは言えないんです。

それは、あなたが一時停止の場所で一時停止をしなかった、そして警察に罰金を言い渡された、これと同じです。

法令、そして契約したことは「知らなかった」は通用しないんですね。

もちろん、吉本にもある程度の責任はあるでしょう。

私も、芸能事務所と所属タレントとの間の契約書作成を依頼されたことがありますが、吉本はこの「契約書」もないという話も出ていますね。

所属芸人とは、雇用契約ではないにしても、事務所として仕事を差配するにあたり、そういった研修などを怠っていたということになります。

話がそれますが、芸能人の労働者性もちょこちょこと問題になりますね。

これが、宮迫さんの引退について、法的な観点から見た場合のお話ということになります。

決して、「社会が叩いた」から引退しなければならなかったのではありません。

「破れば一発アウト」のルールを破り、そして破ったことを隠蔽しようとしたというイメージがついてしまった。

これが、宮迫さんが引退をせざるを得なかった理由になります。

キャリアコンサルタント倫理綱領と反社との関わり方

さて、キャリアコンサルタント倫理綱領では

(品位の保持)
第2条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルタントとしての品位と誇りを保持し、法律や公序良俗に反する行為をしてはならない。

とあります。

暴力団排除条例違反は当然、品位保持義務に違反することになります。

言い換えれば、信用失墜行為となりますね。

そして、

(信頼の保持・醸成)
第3条  略
2 キャリアコンサルタントは、相談者を国籍・性別・年齢・宗教・信条・心身の障害・社会的身分等により差別してはならない。

さて、こちらはどうでしょうか。

反社を「社会的身分」と捉えるならば、差別をしてはならないということになりますが、「倫理綱領」は単なる「一民間団体の職業倫理」を定めたものにすぎません。

法律や条例の上位に来るものではないため、当然に暴力団排除条例が優先されます。

なので、もしあなたのところに

「すんません、わし、今はカタギではないんやけども、もう最近ではシノギもキツくてね…なんかわしでもできる仕事、紹介してもらえんやろか」

という相談者が現れたら…

「大変申し訳ありませんが、弊社ではカタギではない方のご相談は、暴力団排除条例に則り、お受けできないことになっております。
まずは警視庁暴力ホットライン(警視庁組織犯罪対策部組織犯罪対策第三課)というものがありますので、そちらにご連絡下さい。

暴力団から脅されている、暴力団をやめたい、暴力団に入るように勧められているなどの暴力団に関する事で困っている方のための相談窓口ですので、お電話番号をお伝えしますね。03-3580-2222です。

こちらでご相談の上、カタギになられた後、ご連絡頂けましたら、そのときは全力でご支援させて頂きます。」

といった対応が必要になります。

くれぐれも、「なるほど、今はカタギではないけれども、最近はシノギもキツくて、自分でもできる仕事はないか、紹介してもらえないかと思われているんですね」などと相談スタートしないようにして下さいね。

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