キャリコンに独占業務!?

昨日、厚労省キャリア形成支援室から「特定支出に関する証明手続き」業務についての連絡が入りました。

共進会・Twitterではどこよりも早く(たまたまPCの前にいたので笑)この情報提供を行いましたが、見て頂けたでしょうか。

税務申告に関係する証明書を作成する業務ですが、税理士であってもこの証明はできません。

この新業務は、いわば国家資格者であるキャリアコンサルタント(未登録技能士を除く)の独占業務なんですね。

(技能士が対象ではないのは、「キャリアコンサルティング技能」の証明(水準証明)と「国家資格者として登録されているキャリアコンサルタント」であること(職業)の違いだと思います)

特定支出控除の特例とは?

では早速、特定支出控除の特例について簡単に解説します。

ChatGPTをはじめとするAIの影響により、産業構造の大変革が始まったことは既にご承知のとおりです。様々な職業がAIに代替されていき、ヒトはこれまでの職を追われることになります。

そのため、岸田内閣はリスキリングに対して5年で1兆円という大規模な予算を組むことを宣言しました(ちなみにこれは、ざっくり言えば「セルフ・キャリアドック」予算(単年度)の15倍になります)。

さらに、国民(給与所得者)のリスキリングに資すると考えられる支出ついても、税の優遇措置を創設しました。これが「学び・学び直し促進のための『特定支出控除』」です。

給与所得者の特定支出控除

給与所得者がある特定の目的で支出(特定支出と言います)をした場合、その年の特定支出の額の合計額が、「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」を超えるときは、確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる制度があります。これを給与所得者の特定支出控除といいます。

この特定支出とは、給与所得者が支出する次に掲げる支出のうち一定のものを指しますが、今回改正されたキャリアコンサルタントの証明業務に関係するのは下記の支出のうち、教育訓練に掛かる部分に限られます。

職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)

職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
(注)平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象となります。

詳細は国税庁のタックスアンサーをご確認ください。

これらの支出、つまり「給与所得者が職務の遂行に直接必要な技術又は知識の習得のための研修の受講費用等の「特定の支出」をした場合、その合計額が「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額(※1)」を超える時は、その超える部分を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる」というものです。
※1 平成28年から、その年の給与所得控除額×1/2。

簡単に言えば、「リスキリングに掛かった費用の一部については、税金の負担を軽くしますよ」ということです。

キャリアコンサルタントが何を証明するの?

現行の特定支出控除の手続においては、特定支出が職務に関連するものであることについて、「給与等の支払者の証明」を受ける必要がありました。

しかし、今回の改正により給与所得者が、厚生労働大臣が指定する教育訓練給付指定講座を受講した場合(※3)には、給与等の支払者に代わり、国家資格であるキャリアコンサルタントが証明を行うことが認められたのです。
※3 受講する講座自体が教育訓練給付指定講座として指定されていればよく、教育訓練給付を受給していない場合でも特例の利用が可能。

注意!令和5年1月1日以降の特定支出が対象!

本特例は令和5年1月1日以降に特定支出を行った場合に適用されるものであり、同日前に特定支出を行った場合には、本特例の対象とはなりません。

リスキリング本格化!知識のアップデートはできていますか?

このように、税制面でもリスキリング支援が拡充されることに伴い、キャリアコンサルタントもその一翼を担うことが明確にされました。これまでのように「傾聴」だけに注力していればよい、という「傾聴能力証明資格」ではなくなったとも言えます。

証明手続きについて、例えば「職務の遂行に必要な講座の受講なのかどうか」といった「判断」、そして証明書発行に対して依頼者から手数料を徴収するのであれば、その金額の設定なども必要になってきます。

今後、この内容については養成講習・更新講習でも説明されることにはなっていますが、実際の依頼者とのやり取りはキャリアコンサルタント自身が行う必要があります。

依頼者とのラポールは、面談時だけではなく、書類の適切な作成(内容・期限等)でも上下します。せっかく面談で構築したラポールが証明業務で壊れないよう、知識をアップデートしていきましょう!