このエントリーは、キャリアコンサルタント試験及びキャリアコンサルティング技能検定試験の学科試験(以下単に「学科試験」と言います)で出題される可能性のある、「リーダーシップ」の理論について解説しています。

リーダーシップ像は間違いだらけ?

「リーダーシップについて説明してください」そう言われると、多くの人が「ドラえもん」のジャイアンのような「強力な権力でチームメイトを引っ張っていく存在」を、まずイメージするのではないでしょうか。

例えば占いなどでも、「○月生まれはリーダーシップを発揮するタイプ」や「顔に○○がある人はリーダーに向いている」など、「特定の資質を持った人」をリーダーにふさわしい人として紹介していることが多いですよね。

その他、キャリアコンサルタント面接試験でも「私にはリーダーなんて向いていません」「私にはリーダーシップがありません」なんて言葉を口にするクライエントが時折出題されます。

これらは全て、リーダーシップ理論的には「間違いではないが正解でもない」と認識する必要があります。

確かに、1940年代頃までリーダーシップには、「生まれながらの資質」の要素が大きいとされていました(特性論)。しかしその後、コンティンジェンシー理論が提唱されるとともに「状況に応じて役割を変化させるべきだ」という考え方に変わっていきます。

リーダーシップとは?

そもそも「リーダーシップ」とは何でしょうか。

リーダーシップとは…

リーダーシップとは、特定の個人の能力や資質によるのではなく、対人的な関係の中で発揮され、場合によっては集団の機能そのものである。

(出典:「組織論」 補訂版 (有斐閣アルマ))

また、「ヒトとヒトとの相互作用であって『影響を与えること』」を意味します。

その逆が「フォロワーシップ」であり、こちらは「影響を受けること」となります。

リーダーシップを単純に「統率力」など紹介しているケースもありますが、それは「キャリア理論的に言えば不十分」ということになります。

キャリアコンサルタントが押さえておきたいリーダーシップ理論

キャリアコンサルタントが押さえておきたいリーダーシップ理論は下記の3つの区分です。

行動理論
二次元論
状況理論

このほかに、上述した「特性論」などもありますが、出題可能性は低いでしょう。

行動理論

まず、行動理論から見ていきます。

行動理論の代表的な理論に、リッカートの提唱した「システムⅣ理論」があります。

システムⅣ理論

システムⅣ理論では、リーダーシップを下記のように区分します。

・権威主義・専制型(システムⅠ)
・温情・専制型(システムⅡ)
・参加協調型・相談型(システムⅢ)
・民主主義型・参加型(システムⅣ)

このうち、民主主義型・参加型(システムⅣ)が最も望ましいとされます。
一般的にイメージされるリーダーシップは、まだまだ権威主義・専制型(システムⅠ)であることが多いのではないでしょうか。

二次元論

二次元論では、下記の理論が代表的です。

・マネジアル・グリッド論
・PM理論

マネジアル・グリッド論

マネジアル・グリッド論は、ブレイクとムートンが提唱した理論です。

彼らは、リーダーへの関心を「業績への関心」と「ヒトへの関心」という2軸を用いて「1-9型(人間中心型)」「9-9型(チームマネジメント型)」「1-1型(無関心型)」「9-1型(仕事中心型)」「5-5型(常識型)」の5つに分類しました。

この5つの中では、9-9型(チームマネジメント型)が望ましいとされます。

PM理論

PM理論は、三隅二不二が唱えた理論です。

彼は「P(パフォーマンス)」「M(メンテナンス)」の2軸を用いて、PM型、Pm型、pM型、pm型の4つの型を提唱しました。

パフォーマンスは「目標達成能力」、メンテナンスは「集団維持能力」を意味しています。

目標達成ばっかり言われても嫌になるし、ご機嫌(メンテナンス)だけ取るリーダーでも、集団は機能しづらいですよね。

なので、PとMをバランスよく発揮するPM型が良いとされています。

状況理論

最後に状況理論です。

状況理論では、下記の3つの理論が有名です。

・パス・ゴール理論
・コンティンジェンシー理論
・SL理論

パス・ゴール理論

パス・ゴール理論とは、「目標(ゴール)を達成するためには、どのような道筋(パス)を通れば良いのか」という観点から名付けられた理論です。
この理論は、ハウスという研究者が提唱しました。

ハウスは、リーダーシップを下記の4つに分類しています。

指示型リーダーシップ
課題志向が高く、メンバーに何を期待しているかをはっきり指示し、仕事のスケジュールを設定、仕事の達成方法を具体的に指示する

支援型リーダーシップ
相互信頼をベースに、メンバーのアイディアを尊重、感情に配慮してニーズに気遣いを示す

参加型リーダーシップ
決定を下す前にメンバーに相談し、彼らの提案を活用する

達成志向型リーダーシップ
困難な目標を設定し、メンバーに全力を尽くすよう求める

コンティンジェンシー理論

コンティンジェンシー理論は、フィードラーが提唱した理論です。

この理論は、冒頭でお伝えしたように「状況に応じてリーダーシップのスタイルを変化させる」考え方です。

「リーダーとメンバーの人間関係」と「仕事内容の明確化の程度」、「権限の強さ」この3つの要素によって、成果を発揮できるリーダーシップは異なると考えます。

いわゆる「本人の資質(性格)的なリーダーシップ」と「組織として高業績を上げるリーダーシップ」の違いを明確にした理論です。

SL理論

SL理論は、ハーシーとブランチャードによるリーダーシップ論です。

Sは「Situational」、Lは「Leadership」の頭文字です。

この理論では「部下の成熟度によって、有効なリーダーシップスタイルが異なる」という考え方です。
部下の成熟度が低い場合→教示的リーダーシップ
具体的に指示し、事細かに監督する

部下が成熟度を高めてきた場合→説得的リーダーシップ
こちらの考えを説明し、疑問に応える

更に部下の成熟度が高まった場合→参加的リーダーシップ
考えを合わせて決められるように仕向ける

部下が完全に自立性を高めてきた場合→委任的リーダーシップ
仕事遂行の責任をゆだねる

このように「部下の仕事への習熟度」でリーダーは「自らの接し方」を変えていく。こういった「関わり方」をカスタマイズすることで部下の能力を引き出すというスタイルですね。

リーダーシップは多種多様。深入りせずに合格後に勉強を!

リーダーシップ論やモチベーション理論は多種多様であり、またビジネスの現場でも非常に活用しがいのある理論が多くあります。

しかし、「キャリアコンサルタント試験合格」という目標に限って言えば、このエントリーで紹介したレベルの知識があれば十分解答可能です。

手を広げ過ぎずに、まずは抑えるべき知識をしっかりと抑え、合格をゲットしてくださいね