キャリ魂塾オリジナル2級対策事例を「ロープレ前に見立てる」

検討例

年齢:40 歳
➡発達課題

家族構成:夫(41 歳)、長男(10歳)
➡発達課題

学歴:私立四年制大学(商学部)卒業
➡「卒業」をチェック(中退のケースもあり得る)

職歴:大手機械メーカーに入社。結婚を機に退職し、11年間専業主婦。
現在は、近所の食品スーパーにて、パートタイマー2年目。
➡新卒時に、大手機械メーカーを選んだ志望動機
➡結婚を機に退職した際の気持ちの確認

相談したいこと:長男が小学校3年生になったことを機に、また仕事がしたいと思い、パートとして働きはじめた。
しかし最近になって、やりがいがないと思い始め、良い仕事があれば転職したいと思い始めていた。
そんな折、店長から正社員にならないかと言われ、転職するにしても色々と不安もあるし、どうしたらよいか迷っており、相談したい。
➡この「相談したいこと」が事例検討のメイン部分になる。

【事例検討】
①「長男が小学校3年生になった」と「また仕事がしたい」に因果関係はない。
②「また仕事がしたい」と「食品スーパーでのパート」の因果関係も弱い。
③「最近」やりがいがないと思い始めた。では「働き始めた当初からしばらく」はどうだったのか?
④「良い仕事」とは?
⑤「正社員」になると「やりがい」が得られるものなのか?
⑥「転職」するにしても「色々」な不安とは?
⑦「どうしたらよいか迷う」とは、「どのような選択肢」を思い描いているのか?





【見立て構築】
①「長男が小学校3年生になったこと」と、「仕事がしたい」には因果関係はないため、深堀りを行う必要がある。
➡自己理解・仕事理解・状況理解について確認する。

・経済的な問題が生じていないか?
・例えば同窓会などでバリキャリ同級生に刺激された、等の可能性はないか?
・結婚を機に退職しているが、本当は退職せずに働き続けたかった等の「心残り」が影響していないか?

②「また仕事がしたい」と「食品スーパーでのパート」の因果関係も弱い。
➡自己理解・仕事理解・状況理解について確認する。

・なぜ、食品スーパーのパートを選んだのか?「近いから」「勤務時間が短いから」などと答える可能性が高いが、「それだけ」ではない。

③「最近」やりがいがないと思い始めた。では「働き始めた当初からしばらく」はどうだったのか?
➡自己理解・仕事理解・支援理解・状況理解の確認をする。

・なぜ「最近」になってそう考え始めたのか?
・相談者にとって「やりがい」とはそもそも何なのか?

④「良い仕事」とは?
➡自己理解・仕事理解・状況理解の確認をする。

・相談者にとって、「良い仕事」とはどんな仕事なのか?
・その「良い仕事」に就けるだけのリソースを自覚できているか?
・勤務可能圏内における労働市場はどの程度理解できている?

⑤「正社員」になると「やりがい」が変わるのか?
➡自己理解・仕事理解・状況理解の確認をする。

・パートから正社員になれば、「やりがい」が生まれるのか?
・正社員とパートで何が変わるのか、正しく理解できているか?

⑥「転職」するにしても「色々」な不安とは?
➡自己理解・仕事理解・状況理解・支援理解の確認をする。

・そもそも、相談者は「正社員を目指す転職活動」をしたことがあるのか?
・「転職活動」の知識はあるのか?
・大学卒業時と現在の自己概念の違いは把握できているか?
・「色々な」不安は、何が原因で生じているのか?
・家族や地域資源などのリソースは十分理解できているか?

⑦「どうしたらよいか迷う」とは、「どのような選択肢」を思い描いているのか?
➡自己理解・仕事理解・状況理解・支援理解の確認をする。

・家族間での十分な話し合いはできているのか?
・現職場での正社員について、正しい知識は得られているか?
・自分自身のキャリアビジョンはどのように描いているのか?

【口頭試問的見立て】
相談者は現在の食品スーパーで正社員に、という声が掛かっているものの、正社員としてどのような待遇・職務に変わるのか、自らや家族にとって「良い仕事」とはどのような仕事か等、十分な仕事理解ができておらず、また大学時代の就職活動から20年近く経過していることもあり、現在のキャリア自己概念等の自己理解も不十分である。

また、家族の納得や協力といった支援がコミュニケーション不足から得られておらず、転職支援機関やマザーズハローワークといったリソースの知識も不十分であり、くるみん、えるぼし認証企業などの女性活躍・育児支援に注力している企業の求人情報などについての理解も不十分であることから、支援理解が不足している。

さらに、通勤可能圏内の求人について、まだ確認ができておらず、労働市場状況や、退職を選択する場合、有利な時期や適切な退職時期などについても状況理解が不十分である。

以上により、相談者は自らのキャリアビジョンが描けていないことが問題である。

これが「事例情報の検討段階で立てられる『見立て』」となります。

「見立て」は、面談前に立て、インテークでは「見立て」のすり合わせを行う

何のために、事例が事前に届くのか。

それは、見立てを、ある程度「事前に」立てることによって、20分という短い面談時間を、より効果的効率的に活用するため、ではないでしょうか。

見立てが事前に立てられれば、当然「今後の支援」も事前に立てられます。

この「事前に立てた見立てと今後の支援」が、間違っていないか、「話を聴く」ことで確認をしていく。

これが、タイムチャージで面談が行われていると想定した場合、最もコストパフォーマンスが高い(つまりクライエントに寄り添っている)アプローチ、ということになるんですね。

もちろん、この真逆には、全ての事前情報を排して、「ただ話を聴く」という関わり方もあります。

それを否定するものではありません。

あなたが最も自然にいられる「在り方」で、クライエントにアプローチするのが一番です。

このエントリーは、あくまで一例としてお考えいただけましたら幸いです。