「キャリアコンサルタント」を説明できますか?

「キャリアコンサルタントという職業について説明して下さい」、と言われたとき、一般の方にも分かりやすく説明できる、と自信をもって言える人は、合格者や登録者でも意外と少ないものです。

また、法律上の「定義」を説明したところで、それは一般の方にとって「分かりやすい」とはなりません。

特に、キャリアコンサルタントは、専業者が少なく、社会保険労務士や行政書士、中小企業診断士といった士業はもちろん、公認心理師や精神保健福祉士、社会福祉士や看護師といった、心理・福祉・医療分野の国家資格者、そしてコーチやファシリテーター、産業カウンセラー等の民間資格をお持ちの方も多数いらっしゃるため、単純に「キャリアコンサルタント」として行っているのか、それとも例えば「コーチ」として行っているのか、はたまた「カウンセラー」として行っているのか、「法律的な助言」を行っているのか、傍目にも、そしてキャリアコンサルタント自身も区別できません。

また、「社内キャリアコンサルタント」と「社外キャリアコンサルタント」という「所属」も、実務的には大きな違いになります。

「在り方」は「相談者ニーズ」で変わる。

私自身、社会保険労務士・行政書士といった法律系資格と、公認心理師という心理専門資格をベースに、多少のコーチング知識なども加えた面談をご提供するわけですが、それが他の「キャリアコンサルタント」の方とは大きく違うのは当然です。

なぜなら「支援者の在り方」は、「相談者のニーズ」によって決まるからです。

法律的な助言が必要な相談者に対して、心理カウンセリングを行うとクレームになるかもしれません。

例えば「離婚をするかしないか」という悩みに対して、年金分割等「有利・不利」という情報を提供するのか、それとも離婚という「転機」に寄り添い、傾聴に終始するのか、これも「相談者のニーズ」によるものです。





このように、私自身が「キャリアコンサルタント」という「在り方」で、その相談者と面談を行うかどうかは、ひとえに「相談者次第」となります。

そして、こういった「マルチライセンサー(複数資格者)」が、このキャリアコンサルタント業界にも多数いるため、ただでさえ分かりづらいキャリアコンサルタント制度が、更に複雑になっています。

そのため、今回、

・キャリアコンサルタント資格取得を考えられている方
・キャリアコンサルタント試験に合格したが、この先のキャリアに迷われている方

こういった方を念頭に、「キャリアコンサルタント」そのものをキャリ魂塾として改めて定義し、今後のキャリアコンサルタントにとって必要となる「能力」=「関わり方(在り方)」の観点から、その位置づけについても、キャリ魂塾として明確にしてみたいと思います。

キャリアコンサルタントに必要となる能力概念図


なお、この能力概念図及び用語の定義については、参考資料等を用いず、オリジナルとして作成しておりますので、引用・転載の際は「©2020キャリ魂塾,合同会社インクルーシブ」の著作権表記をお願い致します。

キャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントは、キャリアガイダンス理論及び傾聴をベースとした自発的行動を促進する各種コミュニケーション技法、また研修やワークショップ等によって、個人のキャリア形成(進路・就転職・現職etc.)の悩みや相談に応じる職業です。

また、個人から得た情報を、守秘義務違反にならないよう加工し、経営者層にフィードバックすることなどで、職場環境そのものを変容するような役割を担うこともあります。

キャリアガイダンス

キャリアガイダンス理論及び傾聴をベースとした自発的行動を促進する各種コミュニケーション技法、また研修やワークショップ等によって、個人のキャリア形成(進路・就転職・現職etc.)の悩みや相談に応じ、その解決に資する活動を言います。

キャリアコンサルティング

キャリアガイダンスのうち、傾聴をベースとした、自発的行動を促進する各種コミュニケーション技法による支援や情報提供を行うものを指し、主として1:1の個人支援を意味します。

自発的行動を促進する各種コミュニケーション技法

全般的なカウンセリングから、いわゆる「精神疾患」や「メンタル不調」に対する心理カウンセリングを除いた、「開発的カウンセリング」や、コンサルティング、コーチングなど、「傾聴」をベースとしたコミュニケーションを行い、キャリア形成上の悩みや相談に対応し、自律・自立的な意思決定を支援します。

また、1:1で行われるものに限らず、研修やワークショップを実施し、ファシリテーションやティーチングといったコミュニケーション技法を行うことも含まれます。

環境介入

個人から得た情報を、守秘義務違反にならないよう加工し、経営者層等にフィードバックすることなどで、職場や教育機関などの「環境」の変容を支援することを言います。

どのような能力を伸ばすかを考える

本能力概念図は、あなたがキャリアコンサルタント試験に合格した後、どういった分野のキャリアを伸ばしたいかを考えるときにも役立ちます。

例えば、心理カウンセリング分野のキャリアを伸ばしたいのであれば、それはキャリアコンサルタント的な支援からは離れていき、公認心理師や臨床心理士といった心理領域のキャリアを伸ばすことになります。

逆に、開発的カウンセリング分野のキャリアを伸ばしたいのであれば、アサーション・トレーニングや、リハビリテーション・カウンセリングを学ぶことも視野に入りますよね。





コーチングを学びたいということであれば、ほとんど(エグゼクティブ・コーチングといった特殊な階層に特化しない限り)の場合、キャリアコンサルタントとしても、その学びがダイレクトに役立つことが多いと考えられます。

コンサルティングを学ぶ場合、中小企業診断士や社会保険労務士といった「情報提供」としての資格を取得することが多いかと思いますが、それでも傾聴がベースになることは変わりません。

また、各種のフレームワークなど「コンサルティング理論・技法」などは、キャリアコンサルタント養成講習(及び更新講習)では、全くと言ってよいほど触れないため、コンサルティング理論・技法に関しては、完全に自主学習が必要となります。

ただ、法律的なアドバイスを行うのであれば、キャリアコンサルタント的な支援の枠外になることも多々あるかと思います。

ファシリテーションスキルを学びたいという方は、研修やセミナー、ワークショップに活躍の場を求めるということでしょうから、個人面談からは少し離れることが増えるでしょう。

新型コロナウィルス感染症拡大に伴い、キャリアコンサルタント試験に合格した方、登録されている方も、今後のキャリアを再考する必要性に迫られている方も少なくないのではないでしょうか。

ぜひ、本能力概念図をご活用いただけましたら幸いです。

※セミナー、勉強会等で本能力概念図及び各用語定義の使用を希望される場合は、著作権表記と共に行って頂く限り、特にご連絡等は必要ありません。