このエントリーでは第17回以降の国家資格キャリアコンサルタント試験及び令和3年度以降のキャリアコンサルティング技能検定試験で重要となる、労働法関連の改正について、ピックアップしています。

2020年4月2日以降に施行された重要法令

第16回国家資格キャリアコンサルタント試験及び令和2年度キャリアコンサルティング技能検定試験において出題される法令の基準日は、2020年4月1日ですので、ここでは2020年4月2日以降に施行された重要法令を見ていきます。

なお、キャリコン試験の合格だけを考えるのであれば、基本的に全ての論点について、深入りする必要はありません。

但し、合格してからは当然、試験に出題されるような浅い知識では何も役に立ちませんので、時間のある方は今からしっかりと学んでおく方が良いかと思います。

2020年6月施行「パワハラ防止法」(改正労働施策総合推進法)

2020年6月には、改正労働施策総合推進法が施行(中小企業は2022年4月)されました。

通称「パワハラ防止法」とも呼ばれていますが、この労働施策総合推進法は、今後の日本の労働の在り方を考えるうえで、非常に重要な法律ですので、「パワハラ防止のためだけの法律ではない」点にはくれぐれもご注意ください。

職場のパワーハラスメントとは

最低限押さえておきたいのは下記の3つです。

1.パワハラの定義
2.対象者
3.企業の対応と義務

パワハラの定義

職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為

対象者

対象は「全労働者」です。なお派遣労働者の場合は、当該労働者派遣を受け入れる企業においても、雇用する労働者と同様の措置が必要とされます。

企業に求められる対応

企業側の義務は「雇用管理上必要な措置を講じること」(同法第30条)となっています。

2019年11月に示された「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針」によれば、主に以下の1~4が講ずべき義務とされています。

1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

3.職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

4.1~3までの措置と合わせて、相談者・行為者等のプライバシーを保護すること、その旨を労働者に対して周知すること、パワハラの相談を理由とする不利益取扱いの禁止

違反した際の罰則規定はありませんが、行政機関による「勧告」「指導」の対象となります。

2020年9月施行「複数事業労働者に係る労災保険給付」

2020年9月より、新たに「複数業務要因災害に関する保険給付」が設けられました。

「複数業務要因災害に関する保険給付」のポイント

今回の改正で必ず押さえておきたいのは、下記の2点です。

1.全ての就業先の賃金額を合算した額を基礎として保険給付額を決定する

2.1つの事業場で労災認定できない場合であっても、事業主が同一でない複数の事業場の業務上の負荷(労働時間やストレス等)を総合的に評価して労災認定できる

2021年1月施行「子の看護休暇・介護休暇の時間単位の取得」

育児や介護を行う労働者が、子の看護休暇や介護休暇(以下、子の看護休暇等)を柔軟に取得することができるよう、育児・介護休業法が改正され、時間単位で取得できるようになりました。

これまで、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者の場合は半日単位での取得は出来ませんでしたが、この改正により、全ての労働者が時間単位で取得することが可能となりました。

※取得単位の最小単位が「半日」から「時間」に変わるため、就業規則の変更が必要。

2021年3月施行「障害者の法定雇用率引上げ」

障害者雇用促進法の法定雇用率が、2.2%から2.3%に引き上げられました。

これにより、障害者を雇用しなければならない民間企業の範囲が、従業員数45.5人以上から43.5人以上の企業に拡大されることとなります。

2021年4月施行「同一労働・同一賃金の中小企業適用」

中小企業においても、2021年4月1日から同法に基づく同一労働・同一賃金の考え方が適用されることに伴い、対応を行う必要があります。

2021年4月施行「70歳までの就業機会の確保」

70歳までの就業確保が努力義務としてルール化されました。

これは、少子高齢化に伴い、急速に働き手が減少していること、また、健康なうちは働き続けたいと思う高齢者が増えていることなどから、高年齢者雇用安定法が改正されたものです。

その他の改正

その他、中途採用者比率の公表義務、65歳以上の副業者への雇用保険適用など

国家資格者、実務家として、試験合格レベルではない学習を!

第17回以降の国家資格キャリアコンサルタント試験及び令和3年度以降のキャリアコンサルティング技能検定試験はもちろん、合格された方も、これらの論点をしっかりと押さえておかなければ、クレームになることもありますし、損害賠償を請求される可能性もあります。

国家資格者として、日々情報をアップデートしていきましょう!