資格で理想のライフスタイルを実現する、キャリ魂塾のキャリ魂太郎です。

このエントリーでは、「速読」よりも「一冊をとことん究める」ことについて考察しています。

「年間●●●冊の本を読む」ことについて

よく、「ビジネスマンは年間(月間)●●●冊の本を読め」みたいな話があります。

キャリアコンサルタント受験を経験されているあなたに質問したいのですが、フルタイム勤務している社会人や、家庭もある社会人が「キャリアコンサルティング理論と実際」や「新版キャリアの心理学」を2~3日で読了できるでしょうか。

できませんよね。

できたとしても、普通は無意味です。

それはただ単に、「読んだだけ」だからです。

「読む」ことと「理解すること」は違う

当たり前のことですが、「読む」ことと「理解する」ことは違います。

例えば、多くの方が目にしたことがあるであろう、般若心経の一節

「色即是空 空即是色(しきそくぜくう くうそくぜしき)」

読むのは3秒もかかりません。

しかし、この一節を理解するには、何年もの歳月が必要です。

仏教の言葉で最も大事なものの一つが、「空」という概念です。

その言葉が3秒で理解できるなど、ありえませんよね。

「色」が意味するものは、森羅万象、この世の全てのモノや現象です。

それに対して、

「空」は、万物が流転することを表します。

この世に不変のものはない、盛者必衰の理とも言えます。

「色」すなわちこれ「空」
「空」すなわちこれ「色」

「この世の全て、一切のモノ」は「変わりゆく実体のないモノ」である。

「変わりゆく実体のないモノ」が「この世の全て、一切のモノ」である。

そう考えると、「移りゆくものに、心を囚われている」ことの愚かさが見えてきます。

物理学から『色即是空 空即是色』」を問う

この世に存在する全てのモノは、原子によって構成されている。

これは中学生の頃に学ぶはずです。

私が大学生の頃、エヴァンゲリオンが社会的現象になりましたが、当時ゼミで仏教を研究するよう指導されていた私にとって、エヴァンゲリオンは「色即是空 空即是色」を物理学の観点から研究されていることを知る契機になりました。

現代物理学の最先端の領域である量子力学によれば、全く何もない真空中でも常に極微のエネルギーのゆらぎが存在し、それがゆえに無からでも物質が生じるという。ただし、この場合の「無」とは「物質が無い」という意味で、その元となる「エネルギー」は存在している。

これを、物理学の専門用語で「対生成」という。量子力学によると、真空の中でも絶えずこの対生成により粒子と反粒子が発生している。反粒子とは、粒子と全く同じ性質を持っているが、電荷(電気的性質)が反対なだけの物質である。映画「天使と悪魔」で反粒子爆弾の原料としても登場したことのある有名なモノである。

この反粒子は、別にSFの世界の話ではなく、実際に粒子加速器という装置を使って作ることもできる。ただ、その存在が極めて不安定で、反粒子は生まれ出るとほとんど瞬時に粒子と合体して消滅してしまう運命にある。これを専門用語で「対消滅」という。

アインシュタインは、かの有名な式「E=MC^2」(Eはエネルギー、Mは質量、Cは光速)で、物質がエネルギーに変換できること、またその反対にエネルギーが物質に変換できることを証明した。

これを小学生にも分かる算数で表現すると「0⇔1+(-1)」となる。つまりゼロから+1が生まれる時には必ず-1が同時に生まれる、あるいは反対に+1と-1が合わさるとゼロになる、ということをこの式は表現している。現にあなたという存在が今ここにあるのは、あなたが「+1」だからである。もしゼロしかなかったら、あなたもそしてその他のあらゆる物質も文字通り「無」になる。では「-1」はどこへ消えたのか。それが現代宇宙物理学でも最大の謎の一つとされており(一般的には対称性の破れによって消えたと説明されているが)、反粒子が本当に消えたのかあるいはどこかに切り離されて隠されているのかもよく分かっていない。

仏教と物理学の奇妙な関係

面白いと思いませんか?

仏教というと、文系バリバリの学問のように思われるのが普通です。

しかし、その考察には物理学の知識まで必要となり、まだまだ分からないことがあります。

このように、たった8文字の「色即是空 空即是色」にも、その込められた意味を理解するには膨大な知恵が必要となります。

資格試験受験では、速読多読よりも、一冊をとことん究める

速読に意味がないとは言いません。

たくさんの本を読んで得られる知見も当然あります。

しかし、大切なことは「たくさんの本を読んで得られた知見が浅いこと、不十分であること」を理解し、多くの書籍を読んで得られた知識を統合することや、何度も繰り返し読むこと、つまり『読書百篇』の意識ではないでしょうか。

例えば、私が「ノルウェイの森」の帯の「100パーセントの恋愛小説」の言葉を、自分なりに考察できたのは、発達課題を理解してからでした。

こんな風に、読めば読むほど、味がでる。

そんなスルメを噛むように、精読することをおススメします。