資格で理想のライフスタイルを実現する、キャリ魂塾のキャリ魂太郎です。


このエントリーでは、2019 年度後期(第9回)12 月に実施された、キャリアコンサルティング技能検定1級 学科試験に対して頂いたご質問について、回答しています。

※本エントリーでは、著作権法上認められると考えられる範囲の引用を行っております。

2019 年度後期(第9回)キャリアコンサルティング技能検定1級 学科試験:問39

問39 キャリアコンサルティングにおける「相談過程の総括」に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1.相談過程の評価は、クライエント自身のためというよりは、むしろキャリアコンサルタント自身の成長のために実施する。

2.クライエントの成長を評価するにあたっては、具体的な行動や目標が達成されたかに着目するのではなく、あくまでもクライエント自身の成長したという実感や感情面によるべきである。

3.キャリアコンサルティングは、学校、職業紹介機関、企業などの組織の中で行われる場合が多いため、関係者、機関、組織などの第三者に成果を説明するためにも、相談過程の評価は重要である。

4.クライエントの同意を得てキャリアコンサルティングの終了を正式に宣言することは、クライエントによっては見放されたという思いを抱くことがあるため、避けることが望ましい。

5.クライエントとの相談の過程をキャリアコンサルタント自身の今後の学習と成長のために利用することは、倫理的に問題があり、推奨されない。

(引用:2019 年度後期(第9回)キャリアコンサルティング技能検定1級 学科試験 キャリアコンサルティング協議会)

解答:3

お問い合わせと解説

お問い合わせに関しましては、選択肢5の方が適切と考えられるのではないか、という内容です。

基本的には、いわゆる「システマティック・アプローチ」分野の出題については、「キャリアコンサルティング理論と実際5訂版」(木村本)を読めば解答できる出題がほとんどであり、これは国家資格試験であろうと、技能検定試験であろうと、それほど違いはありません。

ここでは、木村本のP302以降を確認して頂ければ良いかなと思います。

先に、3と5以外の選択肢を解説しておきます。

1.木村本P302にあるように、クライエントとカウンセラー、そして第三者をも含めた当事者(この表現は私の表現であり、木村本に掲載されているものではありません)のために評価するものであるので、誤り。

2.これは、木村本P303に記述があります。

評価は、クライエントが成長したと思うと言う感情によるのではなく、実際に行動が変わったかという事実に焦点を置く

(引用:「キャリアコンサルティング理論と実際5訂版」木村周 雇用問題研究会)

4.こちらは、木村本P304ですね。

カウンセリングの終了を正式に宣言し、クライエントとカウンセラーがその後も延々とカウンセリング関係を続けることを避ける

(引用:「キャリアコンサルティング理論と実際5訂版」木村周 雇用問題研究会)

3.さて、正解の選択肢である3.ですが、2.の選択肢と同様に、木村本P302に解説があるため、こちらが正解肢としては間違いありません。

選択肢2と併せて確認しておくと、最終段階の評価には、下記の3つの意味合いがあります。

①クライエント自身のため
②カウンセラー自身のため
③関係者、機関、組織など第三者のため

特に③の観点については、企業内や外部EAPは、誰が費用を負担しているのかを考えれば、当然に必要となることがご理解頂けるかと思います。

5.こちらについては、1級という「指導者」を念頭に置いた出題と言える部分です。

まず、システマティック・アプローチの最終段階は、

「カウンセラーがこのケースにおける自分自身の成果をできるだけ客観的に評価すること」

(引用:「キャリアコンサルティング理論と実際5訂版」木村周 雇用問題研究会)

です。

また、

「自分のカウンセリングの評価を行わないのでは、カウンセラーの専門性の進歩はおぼつかない」

(引用:「キャリアコンサルティング理論と実際5訂版」木村周 雇用問題研究会)

とも述べられています。

だからこそ、キャリ魂塾では口を酸っぱくして毎回、「面接ロールプレイ試験の後は、すぐ逐語録を起こす」ように指導しているんですね。

これをやる人、やらない人では、伸びが違います。

面倒でも逐語録を起こすことで、自らの15分なり20分を、客観的に振り返ることができるからです。

そして、この「逐語録を起こすこと」そのものが、事例記録としての意味合いと同時に、「相談の過程をキャリアコンサルタント自身の今後の学習と成長のために利用する」という意味を含んでいます。

これが倫理的に推奨されないのであれば、逐語録は起こせないことになってしまいます。

また、木村本でも

「カウンセラーがこのケースにおける(中略)それがカウンセラーとしての専門性を高める重要な機会である」

(引用:「キャリアコンサルティング理論と実際5訂版」木村周 雇用問題研究会 下線はキャリ魂太郎による。)

と述べられており、明らかに選択肢5は誤りとなります。

なお、実際のケース記録(事例)を、SVや事例検討会に使用する前に、「クライエントの同意を書面で得る」、さらに「個人が特定できないよう適切な改変を行う」この2つが必要となることは言うまでもありません。

が、そもそも、養成講習が「事例提供同意書」のひな型(書式)を受講生に提供していない時点で、養成講習がこういった事例検討に関する倫理的な手続きをどう考えているか…決して高いレベルとは言えませんね。

キャリ魂塾では、共進会や本ブログの下記エントリーにて、事例提供同意書を無償提供しているので、ぜひご活用ください。