国家資格キャリアコンサルタント面接試験では、面接試験当日にクライエント役の情報が伝えられます。

このエントリーでは、その際、何を中心に考える(仮説を立てる)かを、実際に出題された相談者事例を元に復元したものを使って行っています。

なお、このエントリーはキャリアコンサルティング協議会を指定試験機関として行われるキャリアコンサルタント面接試験について、考察しており、日本キャリア開発協会を指定試験機関とするキャリアコンサルタント試験については対象外となります。ご了承ください。

第14回国家資格キャリコン面接試験出題事例(改題)

面接試験当日、受験生に配布されるクライエント事例には、概ねこの程度のことが記載されています。
※あくまで『概ね』です。この内容のとおり記載されているわけではありません。

クライエント事例情報

氏名:三山由美さん
性別:女性
年齢:30歳  
家族構成:独身 両親は妹と共に別居している。
学歴:私立大学英文科卒業
職歴:卒業後、国内外に展開の和食チェーン店に勤務、2年前から店長
相談内容:店長の次の仕事のビジョンとして、人事部門で人材マネジメントの仕事に関わりたいと考えており、上司に異動希望として伝えていた。
しかしその2週間後、台湾に出店する新店舗のサブマネジャーとして現地に赴任してほしいと言われ、予想していなかったことでもあり、今後どうしたらいいかわからず相談に来た。

クライエント事例情報から見る検討事項

1.性別
➡性別による固定観念・価値観が、クライエントの思考や行動に影響をしていないか検討する。

2.年齢
➡年齢ごとの発達課題が達成されているか検討する。
特に、配偶者の有無はクライエントの思考や行動、価値観に大きく影響していることが多い。
例:「失礼ですが、ご家族の方について(ご結婚について)お伺いしてもよろしいでしょうか?」などの確認を行う。

3.家族
➡年齢と同様、配偶者の有無を確認する。併せて両親や子どもなど、扶養義務のある家族の状況や、今回の問題に対する家族の意向について検討する。
例:「ご家族の方は今回の件について、どのようにお考えでしょうか」等の確認を行う。

4.学歴
➡若年者(ざっくりとでOK。概ね40歳前後まで)の場合、卒業した大学や学部が、キャリア形成に影響しているか(関連しているか)検討する。
例:「なぜ英文科を志望したのか」

5.職歴
➡転職歴がある場合は、転職前も含めた確認を行い、転職歴がない場合は入社後のキャリアを検討する。
例:「なぜ人事部門への異動を希望したのか」

6.相談内容
➡内容に矛盾や整合性を欠く点がないかをチェックする。
相談内容自体はそれほど読み込む必要はない。必ず「話してくれる」ものだし、「知らないフリ」をしなければならないとされているため。

7.その他
➡自分が知らない言葉、または知っているけれど異なる意味・定義である可能性がある言葉を確認する。
例:「サブマネージャーとはどういった職務なのか」

今回、例に挙げただけでも、5つの質問が事前に想定できます。

もうお分かりかと思いますが、受験生によくある「話すことが無くなってしまう」というお悩みは、「事前検討が不足している」ことになります(オウム返しだけなど、論外です。)。

キャリアコンサルティング協議会の面接試験出題事例の特徴

なお、キャリアコンサルティング協議会(以下、協議会)の面接試験出題事例では、「傷ついている」相談者ばかりではない点にはご注意ください。

つまり「情報が不足しているために動けない」というケースも考えられます。

このような場合、感情にばかり囚われると、かえってクライエントが求めている「情報」が提供できなくなってしまったり、本人にとって「ニーズと異なるサービス」になってしまったりすることがあります。

メンタルに問題がある相談者は、あまり出題されませんし、協議会ではおそらく「メンタル不全」はキャリアコンサルタントが面談すべき事例ではないと考えられている可能性が高いですね。(これは「職業能力開発促進法に基づいたキャリアコンサルティング」を念頭に置いているためだと考えられます。)

主訴と見立ては基本的に異なる

主訴(≒相談者が相談したいこと)と、見立て(キャリアコンサルタントとして考える相談者の問題点)は、基本的には異なります。

それは、相談者は「自己理解」「仕事理解」「周囲から得られる支援」「様々な情報」が、不足しているから。

例えば、「自分では出来ない」という言葉がクライエントから出たとします。

まさに、この言葉が表しているように「自分では」出来ないと考えて(よく受験生が使う言葉で言えば「思い込みがあり」)おり、例えば、同僚や部下といった「自らのリソース」に気づいていないことがほとんどです。

この場合「自分でやらなければならない」と考えている点に、「仕事理解不足」や「支援理解不足」があります。

「自分では出来ない」

なのになぜ、周りに相談せず、「キャリアコンサルタント」に相談に来たのか。

それは「周りに相談できない」という、何らかのイラショナルビリーフ(プランドハプンスタンスで言えば『行動阻害要因』が影響していることもあります。

この「何らかのイラショナルビリーフ」を捉えることが、一つのポイントである可能性は極めて高いのではないでしょうか。

では、なぜその「イラショナルビリーフ」が生じているのか?

それが「発達課題の未達成」であったり「年齢による価値観(もうトシだから無理…等)」であったり、「コミュニケーション(意思疎通)の問題」「性別などの固定観念」が影響していることが多いんですね。

協議会面接試験で、クライエント事例情報が配布されたら

相談者情報をよく読み、ざっくりとした「発達課題の未達成」や「性別・年齢」「コミュニケーション不足」などによる、イラショナルビリーフが生じている可能性がないかを考える。

相談内容を読み、相談のきっかけとなった出来事(イベント:転機)が、そのイラショナルビリーフと紐づいている可能性を検討する。

これが「理論に基づいて仮説を立てる」ということです。

クライエント事例情報が配布されてから、面接室に入るまでは結構時間がある(5分弱程度)ので、十分時間はあります。

慌てないで、落ち着いて検討していきましょう!

15分を「話を聴くだけ」にしない

キャリ魂塾では、15分を「とにかくクライエントの話を聴く」とは指導しません。

それは、面接試験は、面談が終わった後、シームレスに口頭試問に移行するからです。

相談者役との面談が終わった後、主訴や見立てを考えていたのでは、時間的な余裕がありません。

つまり「事例情報を読んで考えた仮説を検証する」のが面接の15分であり、検証結果を伝えるのが口頭試問であると考えて下さい。

これは、キャリコン業界では軽視されがちですが、実務的には心理面接は「仮説と検証」が重視されていることにも合致します。

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