このエントリーでは、クライエントの希望とカウンセラーの責任について、架空の事例を用いて検討しています。

事例:リファーを拒むクライエントへの対応

【クライエント主訴】
会社を退職した後、雇用保険で生活して半年になるが、次の仕事が決まらないため今後の生活や将来が非常に不安である。履歴書や職務経歴書も何度も書き直したが採用に至らず、どうしたらよいのか自分では分からないので、カウンセリングを受けたい。

【カウンセラーの見立て】
インテーク面談において、睡眠異常、抑うつ気分、無価値感や罪悪感などがみられた。
うつ病の可能性を考え、就職活動の継続よりも医療機関の受診が必要であると判断し、クライエントにうつ病の可能性があることを伝えるとともに、医療機関を受診することを提案した。

【クライエントの応答】
うつ病と診断されると、余計に就職活動に支障をきたすだろうし、医療機関の受診は考えたくない。また、薬の副作用などもあると聞く。今のままカウンセリングを続けて欲しい。

【結果】
クライエントの希望に可能な限り沿うように、「カウンセリングを続ける中で、改善又はリファーを受け入れるように関われれば」と考え、カウンセリングを継続することにした。

初回面談日から約1か月が経過(カウンセリングは合計3回実施)したが、クライエントの状態は改善どころか予想以上に悪化し、クライエントの家族から「カウンセラーとして適切な対応を怠った」としてクレームがあった。

検討事項

本事例において、検討すべき事項は下記のとおりです。

カウンセラーの責任の有無とその理由

1.本事例において、カウンセラーはクライエントのうつ状態が悪化したことに責任が有る、責任は無い、どちらか。

2.責任の有無どちらの立場であっても、その理由(根拠)を述べること。

どのように改善するか

今後、このようなことが起きないように、どのような点について検討するべきか。

例:クライエントがリファー提案に応じなかった時点で、自らの能力の範囲を超えると考え、カウンセリング契約を終了する。

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